いきなり入園!?
いやはや、久しぶりの投稿すいません。
作者が厨二魂燃え上がらせてました、
出羽、久しぶりの人生楽しく異世界転生お楽しみください。
三年前の出来事でめんどくさいと思っていたことも、今思い出してみれば、なんかけっこういい思い出に感じる。
俺は今、柄にもなく昔のこと―と言ってもほんの三年前の事なんだが―を思い出して、感傷に浸っていた。
『確かに、私がこの刀に宿ってから一番濃い時間だった。』
蒼黒がそういうのも無理はない。
あの日、エルダーさんがあっさり事の顛末をゲロッたので真犯人にはアイアンクロ―を喰らわせたり。みんなで楽しく晩御飯食べたりして結構楽しかった。
なんかこうやって昔のことを思い出すのも、案外悪くはなく思えてくる。
『そういえば主よ、今日はお父上が早めに帰ってくるように、と言っていたがいいのか?』
『ああ~そういや言ってたな、そんなことも。』
父さんの話では、俺に関係することで何かあるらしい。
「エリナ、悪いな、今日は用事があるから、クエストは今日は休みにしとこう。」
「わかった。」
今日はクエストに同行できないことをエリナに伝えると、俺はギルドの中に入っていく。
すると、あちこちから攻撃がしかけられる。
『おい、あれ『蒼の夜』じゃんか。』
『うおぉ、本物だぜえ。』
『なんちゅーか、流石と言いたくなるな』
あたりから一斉に飛びかかる攻撃、もとい口撃に、俺のライフはゼロよッ!
ちなみに『蒼の夜』とはここ三年で新しくなった二つ名で、蒼い闘気を纏った俺は、モンスターたちに永遠の夜を与えるとかなんとか。
その話を聞いて、俺が死ぬほど悶絶したのは言うまでもない。
「相変わらずの人気ですね、ルシウス様?」
そういって皮肉たっぷりなことを言ってくるのはミリスさんだ。
「ええ、おかげさまで。精算終わりましたか?」
そういって、俺は番号の書かれた札をミリスさんに手渡す。
「はい、しっかりと確認しました。にしても本当によくやりますね。ルシウス様あの日からずっとゴブリンのコロニーを壊滅させてるじゃないですか。」
と、呆れ半分、あきらめ半分でため息をつくミリスさん。
「そうですか?こっちはいい感じの小遣い稼ぎになっていいんですけど。」
「皇子なのに小遣い稼ぎでゴブリンのコロニーを壊滅させる人はきっとこの世界が滅んでも二度と現われませんね。」
そこまで頻繁にやってるわけじゃないんだが、とルシウスは落ち込むが、月一でゴブリンのコロニーを壊滅させるやつがこの世界にいるだろうか。
あの日の精算結果はこの世界の金貨十枚、一般家庭の約二年分の稼ぎだった。
それに味を占め、ゴブリン狩りを始めたのだが、もうすでにクストレ国内にゴブリンはほとんどゼロに等しく、国外に行かなくてはゴブリンに出会うことは難しいというわけのわからない状況になっている。
正直なところ、そんな大金を手にしてもまず使い道がなく、今では白金貨(=金貨百枚分)が十二枚(=120年分の一般家庭の稼ぎ)もある。
「まあ今日は用事があるんでもう帰りますけどね。」
「そうですか、ではごきげんよう。」
なーんかそのごきげんようって似合ってないな。
「さてと、じゃあ城まで一っ飛びしますか。」
三年前、ギルドに通っているのがばれた日から、普通に城門から出入りできるようになった俺は、城門前で飛行魔法を解く。
「ただいま帰りました。」
少し業務的な口調で門番さんにはなしかけると。
「おお、ルシウス様。お帰りなさいませ。」
と、同じように業務的に返してくる。
そんなことよりも今は父さんだ。
急に話があるなんて言い出すときは決まってよくないことがある。
そんな一抹の不安を抱え、俺は父さんのいる部屋へと向かった。
その途中、廊下の真ん中でワタワタとしている女中さんが目についた。
「あれ?あの人って確か・・・」
その人物には見覚えがあった。
この城で働き始めて早二か月、その間に彼女が起こした問題数約10件。
国宝級のツボをかち割ったり。
前国王の肖像画に絵具をぶちまたり。
同じく前国王のお気に入りだった庭に、肥料と間違えて除草剤をまいたり・・・などなど。
本来ならば、もうすでに10回は死んでいるその女性の名は゛トオコ・カミヤマ゛俺と同じ黒髪黒眼。
まさかまさかの転移者である。
「とおこちゃん、またやっちゃったの?」
「ヒイイ、すいません~。」
べそをかきながら謝罪してくる。
ちなみにとおこちゃんには俺が転生者だということを教えている。
とおこちゃん曰く、気が付いたらこの世界の森にいたんだとか。
で、森をさまよっているところを俺が確保したって感じだ。
この世界では黒髪は珍しい。
基本は金髪だったり茶髪だったり。王道ファンタジーな設定だ。
まあそれは置いといて。
転移は主に二種類に分かれる。
人為的にこの世界に呼び出されたか、この世界の意志によって呼び出されるか、だ。
世界の意志、とはいってもぶっちゃけ何の役目もないらしいが。
これは父さんに聞いた話だが、後者の場合は大抵が奴隷になって悲惨な人生を送るらしい。
「で?なに壊しちゃったの?」
「は、はい、それが~。」
そういって彼女が申し訳なさそうに差し出したのは、母さん愛用のマグカップだった。
これは父さんが作ったもので、マグカップ自体この世界にないため、二重の意味で世界に一つだけのものだ。
「・・・これは、まずいね。」
「やっぱり、私・・・」
母さんはなんだかんだ言って父さんにゾッコンなわけでして。
その人からもらった大切なものを壊されたとなると・・・
「とおこちゃん、来世でまた会おう。」
「イヤアアアアーーー!」
最近エリナのイジりがいが無くなってきたため、もっぱらとおこちゃんをいじっている。
「ははっ、冗談だよ、ほら、それ貸して。」
「はいですう。」
そろそろ見ていて可哀想になってきたのでいじりをやめる。
これくらいだったら直すというより≪創成魔法≫を使って作り直す方が簡単なんだよね。
「ホイ、もう壊しちゃだめだよ。」
「はいですう。」
しょぼんとしてしまったとおこちゃんの頭を撫でてから、俺は王室に向かった。
「父さん?俺です、入りますよ。」
部屋を軽くノックしてから、部屋へと入る。
「ああ、結構速かったんだね。」
そう言いながらこちらを向いた男は俺の父さんであり現国王、゛べテル・アンタレウス゛だ。
「で?用と言うのはなんですか?」
「うん、ルシウス、明後日から゛独立学園国家・テスラ゛に行ってほしいんだ。」
「いやです。」
無論即答でお断りだ。
「だろうなあ。」
「てかなんでいきなりそんなとこ行かなくちゃなんないんですか、せっかく手に入れた平穏をわざわざ捨てるようなことはしたくないんです。」
父さんの言った゛独立学園国家・テスラ゛は、クストレから馬車で四日、俺の飛行魔法で五時間のところにある。
ここまで拒否するのには勿論理由がある。
今、あの学園には、アルルと姉さん、妹が通っているからだ。
え?なんでいやなのかって?
姉さんも妹も、絡み方がアルルと同じだからだよ!
今まで何回ベッドに潜り込まれたことか。
因みに、この世界では家族婚OKらしい。まあダレトクな情報だが。
体のつくりは変わらないらしいが、遺伝子とかそこら辺のつくりが少し違うらしい。(父談)
まあそれ以上にめんどくさいってのもあったんだけどもね。
「いや、それがさ、最近エルダスからのちょっかいが酷いから、うちにはこんな優秀なのがいるんだってとこを見せたいんだよ。」
「そういう時にこそ父さんの手腕の見せどころじゃないですか。」
「だってアイツら、会談しようとしても全然応じてくれないし。」
子供が言い訳するかのように駄々をこねる。
「別に行くのは構わないんだけど、条件がある。」
「えっ!マジ!?」
そうだ、要はあいつらにばれなければいい、俺が誰なのかを・・・
「俺が誰かわからなければいい、ってなわけで名前、地位、その他諸々の俺の肩書は適当にでっち上げてね。」
「え~、めんどくさいなあ。」
わざとらしく顔をしかめて見せる父さん。
「国籍は勿論クストレだよね?」
「当り前じゃないですか、それまででっち上げちゃったら何しに行くのかわからないでしょ。」
肩書きさえでっちあ上げてしまえば、あとは光魔法で光を屈折させて人相を変えることができるからのーぷろぐれむ。
「わかった、じゃあそれでいいから準備しといて、出発明後日だから。」
あまりにも性急すぎる父さんに内心舌打ちする。
「あ、そうと決まればエリナにこの事伝えといたほうがいいよな・・・」
思い立ったが吉日。俺は早速エリナを探すことにした。
「今日はクエストに行けないって言ったから、たぶんミリスさんの家にいるよな?」
エリナは三年前からミリスさんの家に居候している。
俺は別に王城で生活すればいいんじゃ?と言っておきはしたがなんかどうしてもとミリスさんがごねたらしい。
これは今思い出したことだが最近、ミリスさんの家の近くで少女の『アーーーーー♀!!』っていう声がたびたび耳にされているだとか・・・くわばらくわばら。
まあそんな噂はほっておいて、さっさとミリスさんの家に行こう。
一度紹介してもらったが、ミリスさんの家は王城にとても近く、前世風に言うと徒歩三分くらいのところにある。
王城の近くと言うだけあって、結構な活気があり、それに比例するかのように土地代も高くなっている。
さすがはギルドマスター秘書。中々の高給なようだ。
活気にあふれる商店などを眺めながら歩いていくと、一軒の一際目立つ建物が俺の視界に映った。
血のような赤色の屋根に、魔物の血を彷彿とさせる青色に染められた壁の家。
そんな目立って仕方のない家が、ミリス邸だ。
この家の存在自体は少し前から知っていて、どんな人が住んでいるのか非常に気になりはしていたが・・・まさかミリスさんだとは思わなかった。
「エリナ~?ちょっと来てくれー。」
「あれぇ~、ルーシィ今日用事あるんじゃなかったの?」
「ああ、そのことなんだけどな。俺今度から学園に通うことになったから。」
「え?知ってるよ。私も行くし。」
「え?そうなの?」
何それぇ。初耳にもほどがあるぞ。
「誰から聞いたの?」
「ルーシィのお父さんだけど?」
よし。ギルティ。
この前いろっぺ―ネーちゃんに色目使ってたって母さんに報告決定。
母さんのスープレックスでもデンプシーロールでも食らいやがれ。
「そうか、いつ出るか決まってるのか?」
「決まってないよ、だってルーシィと一緒に行こうと思ってたから。」
オウオウ、ドキッとすること言ってくれるじゃあないの。
「そ、そうか。ならいつがいい?」
「う~ん、色々と用意とかしたいから・・・明後日くらいからがいいな。」
「そうか、わかった。」
明後日なら用意は余裕だし、っていうかいつでも帰ってこられるからね。
ぶっちゃけ今日出てもよかったのだ。
「なら明後日ここに迎えに来るから、準備しといてくれよ。」
「うん!」
そう言って、俺はミリスさんの家を出た。
ここから今まで以上の面倒な生活の始まりを、心のどこかで憂いながら。