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人生楽しく異世界転生  作者: 初雪
第二章三年前へ
14/15

親父の告白

毎度更新が遅れて誠に申し訳ありませんで候。

今回からはあとがきに没ネタを入れていくで候。

それではゆっくり楽しく読んでいただければ幸いで候。


がたがたと馬車の揺れる音がする。

俺たちは今、クストレ国王城を目指して、森の中を歩いていた。

「あの、一つ聞いてもいいですか?」

遠慮がちにエルダーさんに質問する。

「はい、なんでしょう?」

「えっとですね、なんで俺が姫様を背負ってるんでしょうか。」

そう、俺は今、姫さんを背負っている。

朝起きていざ出発って時に、エルダーさんによろしくされた。

「えっと、やはり駄目でしょうか。」

「いや、ものすごく軽いんで何の問題もないんですが・・・その。」

つい口ごもってしまう。

だって、言えるわけないじゃないか。

『背中に幸せメロンが当たってます』だなんて。

たとえ口が裂けようともいえぬ。

「問題がないのなら、そのまま、お願いしたいのですが。」

「はい。」

いつもよりも強気なエルダーさんに、ついうなずいてしまった俺、二人の騎士の、思惑も知らずに。

(もしこれで、姫が目を覚ませば!・・・)

(惚れてルシウス様にゾッコン間違いなしっすね、エルダーさん!)

(ああ、そうなれば二人は結ばれぬ運命に抗う悲劇のヒロインに!

 でもその運命に抗い、やがて結ばれて・・・最高のシチュエーション!)

(これぞまさに青春っすね!)

とまあ、ガウストはともかく色々と残念なエルダーさんなのであった。




姫さんSIDE~



私はどうなってしまったのだろう。

あの時、ゴブリンの群れに襲われてからの記憶がない。

思い出そうとしても、ぽっかりと大きな穴でも開いているような気分になる。

どこからか声が聞こえる。

そのうち二人は誰かわかる。

エルダーとガウストだ、でも、あと一人は誰なんだろう。わからない。

ああ、それにしてもさっきからずっといい匂いがする。

果物とか、お花とかを混ぜたような匂い。

いつも匂ってる香水みたいに、嫌みを感じる匂いとは大違いの、優しい匂い。

そこでふと、私は自分がどういう状況にあるのか、理解した。

私は、だれかにおぶわれている。

そのことに気付いた瞬間に、一気に顔が赤くなるのが自分でもわかった。

今年で10歳になるのに、誰かにおんぶされるなんて、恥ずかしすぎる。

急いで声をかけておろしてもらおう、そう思った時に、私の目に、彼の髪が映った。

さらさらとたなびくその髪は、まるで夜空のように真っ黒で、つい見とれてしまった。

私をおぶっている彼は、見れば私と同じくらいの年だろうに、腰には立派な曲刀を下げている。

聞こえてくる優しげな声。

時折漂ってくる香り。

風にたなびく黒髪。

彼とは友達になりたいなと思った。

彼が首をかしげた拍子に見えた顔。

髪と同じ、真っ黒な瞳。

目が離せなくなってしまう。

でも、それは全然いやなものじゃなくて、むしろ、どこか心地よさを覚える、そんなもので。

まるで自分が自分で無くなったような感覚になる。

さっきまでは、恥ずかしさから、おろしてほしかったのに。

降りたくない、恥ずかしいけど、降りたくなかった。





草木がうっそうと生い茂る山道を抜け、ようやく道と呼べるものになってきたころ。

「もうすぐクストレ国の王都ですよ。」

言った意味はないが一応説明しておいた。

「ほお、うちの国より立派っすね。」

「確かにそうだな。」

「うわー、前のご主人の町よりおっきい。」

皆が口々に感想を述べる。

「あの、エルダーさん。」

「なんでしょうか?ルシウス様。」

ついさっきからずっと気になって居たことだ。

「なんか、姫様の呼吸が荒かったり、心臓がすっごいドキドキしてるんですが、大丈夫ですか?」

「ほ、本当ですか!?」

そういって慌てて姫さんの顔を覗き込むエルダーさん。

「どうですか?」

「プっ、だ、大丈夫です、クッ、姫はまだ寝ている様ですから、そ、そのまま、おんぶしてあげてください。」

なんかすっごいうれしそうだったな、どうしたんだろ。

それに気のせいか、姫さんがギュウギュウ締め付けてくる。

あっ、腕だからね?変な勘違いしちゃだめだYO。

でもそんなことするから、背中の幸せメロンが、むっちりと・・・御馳走様です!

にしても、この子何歳だ?あんまり俺と年変わらないように思えるけど・・・。

いや、それはないか、だってこれたぶんEくらいあるからな。多分年上だな。

そうじゃないと、あまりにもエリナが可哀想だしな。

そんなことを考えつつ、隣を歩くエリナに目をやる。

ああ!神よ、貴方は何と無慈悲なお方か!

「何?ルーシィ。」

「なんでもないです。」

俺の周りには読心術を使える人が多いです。




クストレ国国内~ギルド『アルデバラン』~




「ミリスさ~ん、薬草の採取と、ゴブリンの討伐クエストが終わったんで精算お願いしまーす。」

エルダス王国の一行とともに、ギルドにより、クエストの精算を済ませる。

「おや、随分と早かったですね。それにその方たちは?」

そういってミリスさんはエリナ達の方を見る。

「ああこの人たちは・・・」

簡単にここまでの経緯を説明すると。

「ルシウス様、私最近とても疲れてきたんですが。」

「はい?」

大きくため息をついたエリスさんが、あきれたような声色で呟く。

「どう考えてもおかしいですよね?なんで一回のクエストこなしに行っただけで、そんなに人数が増えるんですか!おかしいでしょう!」

いきなりものすごい剣幕でまくし立てるミリスさんに、俺は・・・

「はい、すいません、なんかすいません」

と、平謝りし続けるのだった。



「それで?どんなものを持ってきたのかは知りませんが、精算品を出してください。」

とげとげしく言うミリスさんに、若干気圧されながらも、それを取り出す。

「はい、まずは薬草です。」

「なっ!あの短時間で、この量。」

実際は一日かかったわけだが、エリナのスキルがそれを無かったことにし、≪アイテムボックス≫で鮮度抜群の薬草があれば、完全犯罪成立なのだ。

「あ、あとゴブリンの素材なんですけど、ちょっと量が多いんで、ほかの部屋解かないですか?」

「そんなにあるんですか?依頼書には五体でいいと書いてあったでしょうに。」

そういいつつも、部屋へ案内してくれるミリスの顔が、この後盛大にひきつることになる。

「ここに出していってください。」

「わかりました。」

その言葉と共に、次々と亜空間から取り出されるゴブリンの屍。

「なっ、なっ!」

戸惑うミリスを横に、次々とそれを積み上げていくルシウス。

「よし、これで全部ですってあれ?どうかしましたか?」

いつの間にか静まり返ったみんなを見て、今度はルシウスが戸惑う。

「うむ、改めて見たがこの量を一人で・・・末恐ろしい。」

と、エルダーさん。

「まったくもってその通りっす。」

と、ガウスト。

「すごいね、ルーシィ!」

とエリナ。

あとなんか後ろ、姫さんのいる方から、息をのむような声が聞こえた。

ふとミリスさんの方を見ると。

「・・・・・・」

放心状態で、何もないところを見つめていた。

「す、すいません、こんなに大量だと、鑑定に時間がかかるので・・・」

そういわれ、俺たちは、ギルドを後にした。






今、俺たちは王城の前で立ち往生している。

一つ、問題があるからだ。

何が問題なのかというと。

「ヤベェ、黙って家出てたのばれる。」

この頃から飛行魔法を使ってギルドと、王城を行き来していたため、兄さん以外にはばれてはいなかったのだ。

が、しかし。

「父さんだったら、大丈夫だろうけど、母さんがなぁ・・・」

何故ルシウスがここまで母を恐れているかというと、母は元Sクラス冒険者だからだ。

勝手に外出していたことがばれれば、命の保証はない。

「どうしたの、ルシウス。さっきからずっと独り言言って。」

「いやあ、それがさ・・・」

まあ別にばれても大丈夫と言えば、大丈夫なんだけど。

「やはり、私たちは町のどこかに宿でもとります。」

そういって立ち去ろうとするエルダーさん。

「ああちょっと待ってくださいよ、エルダーさん。」

「いやしかしこれ以上迷惑をかけるわけにも・・・」

「まあたぶん大丈夫ですよ。多分。」

「そうですか?」

「ええ、大丈夫です。」

「では、お言葉にあまえて。」

エルダーさんがようやく首を縦に振ったので、門番さんに話しかける。

「こんにちは、すいませんが、お城に入れてください。」

「へ?いや、そんな突然に城に入れろって言われても・・・。」

困ったように対応する門番さん。

「ああそれはそうですよね、すいません、これ・・・」

そういって俺は懐から、身分を証明できるものを取り出す。

『ててててっててー、王家の家紋入り懐中時計~!』的な効果音と共に。

それを見た門番さんが、「こ、これはっ!」とか滅茶苦茶びっくりしたりして。

「も、申し訳ありません、王家の方だとは気付かず…」

冷や汗流しながらそんなこと言うもんだから、見てるこっちがなんか申し訳なくなってきた。

「いやいや気にしないで、それより門を開けてください。」

「はいっ!只今。」

そういって鍵を取り出し、門を開ける。

俺はエルダーさん達の方へ振り向き、少し仰々しく、行ってみたかったことを言う。

「ようこそ、クストレ国王城へ。」




姫さんSIDE~



さっきから、驚きの連続です。

何と、私は今、敵国クストレ王国のギルドにいるんです。

この人から離れたくなくてずっと寝たふりをしていたら、いつの間にかギルドに居ました。

話を聞いていたら、どうやら私をおんぶしてくれている方のお名前は、ルシウス様と言うらしいです。

その方がクエストの精算と言ってゴブリンを取り出したことにはとてもびっくりしましたが、その後もっと驚きました。

何とどこからともなく、次々にゴブリンが出てくるんです。

しかもその中には数匹、上位種のジェネラルゴブリンとか、キングゴブリンとかも混じっていました。

ここまできてようやく私は気付きました。

私はルシウス様に助けられたのだと。

そのことに気付いた後、私はついつい、ルシウス様に見惚れてしまっていました。

その時、不意に、ルシウス様が私の方を見ました。

私は心臓が止まるかと思いました。

そんな私に、ルシウス様は、少し驚いた顔をされてから、こういってくださったのです。

「起きたんですか?でもまだ疲れているだろうから、少しでも休んでいた方がいいよ。」と。

そういって何もなかったかのように精算の続きを始められました。

私はというと・・・

「~~~~!!」

悶絶していました。

いままで横顔しか見えていなかったルシウス様のお顔は、すごくカッコ良かったんですから。

しかもその優しい笑みを浮かべた顔で、あんなこと言われてしまっては・・・

一目惚れしてしまっても、仕方ないですよね?

ですがまだまだ驚くことはありました。

何と!ルシウス様はクストレ国の王族の方だったのです。

何故ギルドに所属しているのかなど、疑問は尽きませんが、大変です。

私の心臓が大変です。

危険にさらされたお姫様を、王子様が助ける。

女の子なら、だれでも憧れることじゃないですか。

出会ってまだ数時間なのに、この時の私はもうすでに、ルシウス様の虜になってしまいました。







「はい、すいません、本当に、ごめんなさい。」

俺は今、土下座をしている。

え?突然何やってんだって?

説明しよう!

あの後何があったかを。


お城の中に入る。

兵士たちがざわめき、一部の兵士が、父さん、母さんたちにチクる。

父さん、母さんがやってきて、目の笑ってない顔で、母さんが手招き。

いまに至る。


「一応悪いことをしたという認識はあるんですね。」

「はい、本当に申し訳ありません、母上。」

ひたすらに、平謝り。

「まあまあ、本人もこう言ってることだしね?アリア、許してあげても・・・」

と、父さんがフォローしてくれるものの。

「いいえ、許しません。」

「そうだぞ、ルーシィ、ちゃんと反省しろ。」

母さんの一声で、味方はいなくなる。

「あの・・・」

「なんですか、というか、あなた達誰なんです。」

申し訳なさそうに口を開くエルダーさん。

そしてそれに警戒心むき出しで食って掛かる母さん。

「その、私たちはルシウス様に命を助けられたものでして。私たちが口を挟んでいい事ではないとわかっているんですが、その・・・」

「え?なんて?」

何かに驚いた母さんは、思わず素で聞き返している。

「いや、ですから、ルシウス様は私たちの命をですね。」

どうやら母さんは、俺が城を抜け出して悪さをしたと思っていたらしい。

エルダーさんの話を聞きながらも、母さんは謝ってくれた。

「ホントにごめんね、ルーシィ。」

「いいんです母上。何も言わずに出て行った僕にも非はあります。」

いまさらだが、俺は基本公衆の面前ではこんな丁寧な口調で話すことにしている。

周りの人たちは気にしなくてもいいといっているが、これは一種のけじめみたいなものだと思っている。

「な~?いっただろ、だからルーシィは悪くないって。」

なんてことをほざくくそ親父には・・・

「月に変わってオシオキよ♪」

と、某少女マンガ調の口調で肩パンを食らわす。

「え?なんでそれ知って―、いぎぃ!」

気持ちの悪い声と共に悶絶する国王(父親)

本気のスピードでやったので、それは一部のニンゲンにしか、見えていない。

「なっ・・・、ルシウス、ちょっとスキルカードみせて。」

母さんにも見えていたようだ、流石は元S級冒険者。

言われた通りにカードを渡す、≪隠蔽≫のスキルを使っておいて。

なぜかはわからないが、ギルドカードには表示されるスキルとされないスキルがある。今使った≪隠蔽≫がまさにそれだ。

「ふーん、にしてもあんたよくこんなステータスでゴブリンの巣に突っ込んでいったわね。」

「あ、あはは、それは、ちょっと運が良くて・・・」

「まあ生きてるんだからいいんだけど。それより、ルーシィが助けた人たちのことだけど、どうするの?」

母さん怖さにすっかり本題を忘れてたよ。

「ああ、そのことなんだけど、この人たちね、実は赫赫云々で。」

「そうなの、それは良いことしたわねえ。」

エルダーさん達の身分を母さんに明かすと、笑いながら「じゃあ王城で休んで行ってもらいましょ。」といった。

するとエルダーさんが信じられないといった顔で話しかけてくる。

「あの、私達、敵対国の要人ですよ?捕虜にしようとか、そんな話無いんでしょうか?」

まあそりゃそんなふうに疑うのが常識だよな、普通そんなの信じられれない。

「え?あなたの国ではそうする決まりなの?」

「い、家そういうわけでは…」

「ならいいじゃない。」

「へ?」

あまりにも()()()()()()な母さんに、エルダーさんは呆けた顔をしている。

「そんな細かいことは気にしなくていいのよ。」

「そうですよ、それがこの国のいいとこなんですからね、エルダーさん。」

少し間があき、復活してきた父さんも付け加える。

「あなた達も相当疲れてるんでしょう?まあ、ゆっくりしていきな。」

などと宿屋の主人みたいなことを言っている。


「改めて、ようこそ゛仁徳の国クストレ王国゛へ。」






あの後、突然気を失って倒れたエルダーさんを部屋に連れて行った後、父さんに呼び出され、王室にいた。

「で、どうしたの、父さん。」

「ああ~、そのことなんだけどね。」

「?」

なにかを言いにくそうに話し出す父さん。

「今から言うことをよく聞いてくれな。実はお前はな・・・」

そういって、父さんは言葉を紡ぎだす。

「私たちの子供じゃあないんだ。」

「うん、知ってる。」

なんだそんなことか。

「だろうなあ、そんなこと到底信じられ―」

「いや、だから知ってるって。」

「ゑ?」

「だって俺子供の時の記憶あるし。」

まあ今まではどっちかっていうと半信半疑な感じだったけど、これで確信に変わった。

「まあそれは置いといて。」

「・・・置いといていいのか?」

『父さんこの言葉わかるでしょ。』

そういって、俺は日本語で話しかける。

すると父さんの顔はみるみると驚きの色に染まっていく。

『え、ルシウスも!?』

「うん。」

人に聞かれるとめんどくさいので、すぐさまこちらの言語に戻す。

「まあ俺の前世の自己紹介するとしたら、天地海人、高校生だ。」

手短に済ませ、目配せで催促する。

「ああ、失礼俺、というか私の前世の名前は野村河内(のむらごうち) 春子(はるこ)だ、よろしく。」

へー、名前からして前世は女性だったんだろうな・・・ん?野村河内?

「も、もしかして、貴方はすばらしい作曲家でありつつも、科学者としてSITAPPA細胞を発見し、さらには政治家として汚職問題解決に尽力したというあの野村河内さんですか!?」

あまりの興奮にものすごい剣幕でまくし立ててしまう。

「うん、その通りだけど・・・ちょっと落ち着こうか。」

「ああ失礼。」

つい自分を抑えきれなくなってしまっていた。

「なるほど、なら納得ですね、この国のことが。」

「そうかい?」

何が、と聞いてこないあたり、何のことかはわかっているようだ。

「だって想像してたのと全然違いましたからね、この国は。」

そういって自分のイメージしていた国のことを伝える。

「ああ、でもそんな感じだったよ、私がこの世界に来た時も。」

「そうなんですか?」

「うん、でも結構楽しかったよ、神様には感謝だね。あ、あと敬語はいいよ。」

そうなのか、やっぱりこの人もあいつに会ってたんだな。

その後俺は、春子さんこと、父さんの武勇伝を聞かされた。

何でもこの世界に転生して10年で、腐ったこの国をどうにかすべく、色んな事をやったらしい。

「・・・でさあ、その時、あいつなんて言ったと思う?『そんなの関係ない、私は貴方が欲しいだけなんだ』って、堂々と言うんだよ、あれにはまいったねえ。」

今は、母さんとの馴れ初めを聞いていた。

出会いのきっかけはと言うと、父さんを暗殺しようと目論んでいた貴族を、母さんがノリで壊滅させたことから始まったようだ。

そっから色々あって今に至るとか。

てか母さん、ノリで貴族を滅ぼすとか。

「まあ、そんな感じだね、まあ。」

そういった父さんの表情はやけに満足げだった。

「なんかえらく楽しそうだね、父さん。」

「うん?そりゃあそうさ。」

いかにも当たり前だよと言う表情で楽しげにする。

「だってさ、息子に同郷がいた上に、立派な息子に育ってるんだ、嬉しくない訳はないさ。それに、前世は子供居なかったしね。」

「・・・そっか。」

余計なことを聞いてしまった気がする。

「おっと、湿っぽいのも、昔話もここまで!疲れてるだろうから、部屋に戻ってゆっくりと休みな。」

「うん。」

一言、短く返して、俺は王室を出た。

この後、とんでもないたくらみに。巻き込まれるとは知らず。



「あれ?そういや、エルダスの皇女様の部屋って確か・・・あ!?う~ん、まあいいか、あの皇女様も満更でもない感じだったし。」

そう呟いて、この国の王は、執務室の質素な机に向き直り、仕事を再開した。





「本当に、申し訳ない。」

俺は只今、絶賛土下座中。

え?なんでかって?

それはね・・・



「う~ん、思ったより疲れてない。」

独り言を言いながら、俺は王城の廊下を一人、あるいていた。

「腹は減ってるんだけどなあ、晩御飯まではまだ時間あるし。」

ゴブリンの巣を壊滅させておいてこんなことをほざけるのは、この国の騎士団長か、魔術師団長くらいだろう。

「ああ、そういえば、ゴブリンの返り血とかいろいろスゲエことになってるの忘れてた。」

結構衝撃的なことの連続ですっかり頭の中から消え去っていたことをいまさらながらに思い出してしまった。

ゴブリンの血の匂いで。

「ホント、これ厄介だよな。水分があるうちは臭わないのに乾燥したらすごい匂いになるもんな。」

そう、この世界のゴブリンは、少し面倒な特性をもっている。

それは今しがたルシウスがつぶやいた通り、血の匂いだ。

ゴブリンの血は、水分を含んでいるうちは無臭で、特に害をなさないが、乾燥してからがひどい。

その匂いはコボルとと言う犬型のモンスターを死に至らしめるほどのものだ。

「くさいな、早く風呂に入ろう。」

クストレ国の王城には、国王が元日本人だからだろう、たくさんの浴室があり、ルシウスの部屋も、例外ではない。

無駄に広い城の中の、自室にようやくたどり着き、ため息を漏らす。

この城の無駄な大きさは、前国王のもので、改築するにも金がかかるため、しぶしぶそのまま使っているというものだ。

「はあ、ようやく風呂に・・・」

自室の浴室のドアに手をかけ、ここでようやく、違和感を覚える。

何故に、俺の部屋に()()の服があるのかと!

『ドドドドドドド』

などと、某人気漫画のような効果音が鳴り始める。

「ま、まさか・・・」

あり得ないとは思いつつも、一気にドアを開け放つ。

はたして、吉と出るか、凶と出るか・・・

『バンッ』

「へっ?」

「あっ」

美少女(ミネルバ)(勿論全裸+湯気補正無し)が出ましたとさ。

とまあこんなことがあって、土下座してるわけさ。

ええわかっていますとも。

あの時、いやな予感したんだったらノック位しとけって話でしょ?

だってさ、こんなことなるなんて思わないじゃん?

だって自室の風呂に、助けた美少女だぜ?

どこのトラブルですかって話だ。

どこのエロゲの主人公ですかって話だよ全く。

でもそんな言い訳はしない。

なんたっておれ紳士だからね。

「本当に、なんと申し上げていいやら。」

と土下座し続ける俺に対して、姫さんは。

「あ、あの、そのっ。」

戸惑いを隠せず、ワタワタと慌てている。

そこがなんか、可愛かったりする。

「くすくす。」

突然に笑い出す姫さん。

「え?」

驚いたような顔で姫さんの顔を見ると、また慌てたようにしゃべりだす。

「あ、その別にこれはあなたのことを笑ったわけではなくてでしゅね。」

あ、かんだ。

そのことに、耐え切れず、俺も笑ってしまう。

「クッ、あっはっは!」

「も、もう、笑わないで下さいよ。」

テレからか、朱くなった頬を隠すように、手を添え、少し怒ったような顔をする姫さん。

「ごめんごめん、ついね。」

「ぶう。」

すねている姫さんもまたかわいい。

ここでようやく、今目の前の少女がどんな格好で居るかに気付く。

「!ちょ、君、服…。」

俺にそう言われ、ようやく自覚したのか、さっきよりも、もっと赤くなっていく顔。

「キ、キャアあアアぁーーーーー!!!」

ちょっと待て、これはまずい。

ただでさえこの子の親の国とは、今敵対関係にあるのに、こんなとこ誰かに見られたら・・・

「「ご無事ですかッ!姫様!」」

うおおおおおお。終わったああああ!

もうこっからどう転んでも破滅の道しか見えねええエエェ!

ああ、さようなら、俺の二度目の人生。

すまん、エリナ、先立つ俺を、許してくれ。

「ん?なんだルシウス様ではないですか。」

「あれ、ほんとだ。」

え、何?俺がどうしたと思ってんの?ユー達。

「もお、ルシウス様ったら、結構ゴーイン?」

「女の子には優しくしないといけないっすよ、特にミネルバ様はしょじ―ゲべバッ。」

なんか余計なことを言いかけたガウストを黙らせる。

「えっと、説明が欲しいんですが、ここは姫に狼藉を働く無礼者って切り捨てるのが普通なんじゃ・・・」

「まさかぁ、未来のエルダス、クストレを繋ぐ王子様にそんなことするわけないじゃないですかぁ。」

なんかいつも以上に残念オーラの出ているエルダーさんに、恐る恐る聞く。

俺は、この人たちの目を知っている。

人様を面白がってるやつらの目だ。

「まさかとは思いますが、姫さんをこの部屋にしたのは、母さんと、エルダーさん達じゃないでしょうね?」

軽く、ホントにかるーく、闘気を開放して問い詰める。

「あ、あの?ルシウス様、ちょっとその右手が何か気になりますね。」

そういうエルダーさんの視線の先にはかるーく闘気を纏った俺の右手が。

「これですか?これはですね、クストレのちょっと公では言えない人たちから『真実の右手』って呼ばれてるんですよねえ。これでちょっと頭を掴むとですね、あら不思議誰でもホントのことを話したくなってしまうというものです、ハイ。」

にっこりとほほ笑んでそういったんだが、エルダーさんの顔色が優れない。

これはいけない、ゆゆしき事態だ。

「ああエルダーさん、まだきっと疲れてるんです、無理をしてはいけません、お部屋にお連れしま、あっ。」

しまったなんという失態。

ついつまずいてエルダーさんの頭を、つい右手が掴んでシマッター。

「イ、イヤアアアアああぁぁーーーー!」

夜の場内に、女性の悲鳴がさびしく響き渡る。

ついでにこの後なんか体育会系な叫び声も響きましたとさ。





没ネタ~


「実は、お前は母さんの子供じゃないんだ。」

「ええ、それは知ってま、え?なんて?」

「だから、お前は母さんの子じゃ・・・あれルシウス?どこにってヒイッ。」

「貴方ぁ~?今のはいったいどういうことかしらぁ~?」

「ヒ、ヒイイ」

「ふふ、覚悟はいいわね?」

「え、ちょ、あ、ああああああああ、しょこは、らめええええええ。」


一方ルシウス

「いやーびっくりした、まさか母さんも桜とおんなじようにス〇ンド使いだったとは。」


すんません、なんかあ、すんません




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