その血は蒼き刀に
投稿遅くなって申し訳ありません!
あと今回テンションが高すぎて、内容が「最高にハイってやつだー)になっております。あしからず。
暗く閉ざされた牢獄の中で俺は呟いた。
「しまったな、完璧に油断してた。」
さっき言った通り、俺は今、牢屋の中にいる。
なぜそんなことになって居るかというと・・・
シンと静まり返った森の中を、俺とエリナは歩いていた。
「ルーシィ、どこに行こうとしてるの?」
道を進むにつれ生き物の気配が薄くなっていっていることを感じてか、エリナは心細そうに呟いた。
「これからゴブリンの巣に乗り込む。」
俺は当たり前のように返したがエリナは違った。
「は?」
顎を180度くらい開け、ぴたりと一歩も歩かなくなってしまうエリナ。
「おいおい、どうしたんだよ?そんなに驚くことか?」
「あ、あ、あ、・・・」
「あ?」
「当り前よ――――!!」
エリナの咆哮が、森に響き渡った。
「なんだよ急に、そんなに驚くことかよ。」
いかにもやれやれといった感じに言う俺。
「ルーシィ知らないの?ゴブリンの巣は基本ゴブリンジェネラルか、それ以上の上位ゴブリンがいるのよ!
もしゴブリンキング以上のゴブリンがいたらそれはA級冒険者の仕事よ、わかってる?」
急にとてつもないマシンガン口調でしゃべりだすエリナ。
「わかってるよ、いいからいいから、お前は大船に乗ったつもりでいろって、な?」
そういって宥めようとするも、エリナは一向に落ち着く気配がない。
「そんなことで落ち着けるわけ―」
言いかけたエリナの口を手で覆う。
「エリナ、静かに。」
「ムグウ~」
ジタバタと暴れるエリナを押さえつけながら、目の前に現れた奴に目をやる。
「これがゴブリンか。」
緑色の肌に、小さく尖った角を生やした頭、まさに子鬼のような容姿のモンスター、ゴブリンが今目の前にいた。
だがそいつは俺らには気が付いていないのだろう、ひとしきりあたりを見回したあと、どこかへ立ち去ろうと歩き出す。
「エリナ、こいつの後をつけるぞ。」
そういってエリナの方を見ると・・・
「キュウ~~。」
・・・気絶していた。
やっちまったな、こりゃ。
そう思いつつ俺はエリナを背負い、ゴブリンの後をつける。
にしてもこいつは一匹で何をしていやがったんだ?
そんな疑問を胸に抱きつつ。
しばらくすると、今はもう誰にも使われていないであろう古城についた。
そこにゴブリンが入っていく。
「ここか・・・よし。」
そういって俺はエリナをそっと地面に寝かせ、魔法をかける。
『防御魔法』
俺の呟きに応えるかのように、エリナの周囲を六角形の淡い青色の防御壁が覆う。
≪防御魔法≫と呼ばれる魔法はこの世界に存在はするものの、今使われたものは存在しない、無論、ルシウスのオリジナルだからだ。
まあそれは置いておくとして。
「さて、ゴブリンの巣に殴り込みに行くとしましょうか。」
そういうルシウスの顔は、まるでピクニックに向かう子供のそれだった。
「ああ、でも殴り込みの前に相手の戦力を確認しておかないといけないよな。」
そういってルシウスはさらに魔法を発動させる。
『探索』
この魔法は一定の範囲内に存在する生命を感知する魔法で、一般的にはあまり広範囲の索敵ができないため、あまり使用されないが最近、人外ロードまっしぐらのルシウスには、まさにそんなの関係ねえ、である。
「ふんふん、全部で大体、60~80ってとこだな。まあこんくらいなら余裕か。」
相手の戦力が十分に相手できると悟ったルシウスは開始する。
一方的な、蹂躙を。
城に入った途端に、数匹のゴブリンが俺に気付き、攻撃を仕掛けてくる。
しかし、ルシウスは気にも留めない、否、気にする必要すらない。
腰に装備したサーベルに手をかけ、近づいてくるゴブリンに向け一閃。
ただそれだけの単純な動作、作業。
つい先ほどまで繋がっていた仲間の首が宙を舞うの見たゴブリンが、小うるさい鳴き声を上げ、錆び付いたナイフを手に襲いかかってくる。
「うるさいよ。」
そういってさらに一閃、今度は一気に三つの首が飛び、毒々しい緑色の花を咲かせる。
「こういうのを汚ねえ花火っつうのかな。」
淡々とゴブリンを狩りながらも、どこかの戦闘種族の王子のセリフをつぶやきながらも、次々に首をはねていく。
そして、約30の首をはねたころに、一匹のゴブリンが、階段を下ってきた。
先ほどまで数匹まとまってきていたゴブリンがたったの一匹。
周りのゴブリンよりも一回り大きく、肌の色も緑ではなく、黒色のゴブリン。
「へえ、これがゴブリンジェネラルか。」
やってきたゴブリンを見て、そうつぶやいたルシウスの表情は、先ほどよりも、より一層喜色が浮かんでいる。
「そこら辺の雑魚よりかは・・・まあ楽しめそうだな。」
言うや否や、常人には視認できないほどの速度でゴブリンのもとに詰め寄り、いつの間にか納刀していたサーベルを、居合切りの要領で抜刀し、その首をはねる。
「よし、あとは雑魚だけだからちゃちゃっと終わらせて―」
その先を言い終わる前にルシウスの後頭部に、衝撃が走る。
「がッ!」
ドサッという音と共に、ルシウスの視界には、紫色の肌をしたゴブリンがいた。
(クソッ、こいつ、ゴブリン、キング・・・・)
そして冒頭に至る。
「ん~、にしてもまいった、サーベルは勿論取り上げられたし、この牢獄、古城の奴だから魔封じの紋が刻んであって魔法つかえねえ。困ったなあ~。」
傍から見ればこいつホントに困ってんのかというような姿勢を取りつつ、牢獄の中で独り呟くルシウス。
「しゃあねえか、これ王国の国庫からパクったやつだから、あんまり無駄遣いしたくなかったんだけど、うん、しょうがないしょうがない。」
そういって自分に言い聞かせるように呟きながら、手袋を取り、五本の指についている指輪を一つとる。
その指輪の名は『プロミス・リング』
装備するときに、一つだけ自分に何らかの付与魔法を付与できる。
本来ならば、筋力を上げたり、魔力量を増やしたりとするが、ルシウスは違う。
己の力を抑え込むために使う。
「いや~、にしてもあんときはマジでビビったな、なんせ握っただけで粉砕骨折だもんな。」
ルシウスの言う「あんとき」とは10才の誕生日の時のことである。
王子であるルシウスの誕生日を祝わないはずもなく、盛大なパーティが開かれ、その主賓であるルシウスにとある貴族が握手を求め、それに応じたところ。
『バギボギッ、ボキバキッ。』っと生々しい音が鳴り、その貴族はその場で悶絶、あたりは静まり返ってとんでもないことになったのだ。
「まあ、でもあの貴族もなんか汚職ばっかやってた三流だから気にすんなって父さんも言ってたし、いいよな。」
と満面の笑みで実に恐ろしいことを口走る。
「思い出話は紺くらいにして、さて、檻をぶっ壊して外に・・・ん?なんじゃこりゃ。」
そういったルシウスの目線の先には立派な鞘に収まった二本の刀、所謂、日本刀が落ちていた。
鞘は真冬の夜空を思い起こさせる漆黒。
見た目はとても簡素な造りだが、見ているだけで鳥肌が立ちそうなほどの、強烈な力を感じる。
その刀を手に取り、抜刀する。
刀身は光の具合で蒼く見えるほどに磨かれており、一片の不純物も含まれていないということを、刀自身が物語っているようだった。
「こいつは・・・何とも。」
さすがのルシウスもその見事さに息をのむ。
しかし、心のおく底のどこかで確信していた。
これは、俺のものだと。
俺が使ってこそ、意味をなすものだと。
その確信に気が付いてからのルシウスの表情は、新しいおもちゃを見つけた子供を10倍ほど気味悪くしたような表情だった。
「てことはこれで・・・」
そういって抜刀していた刀を目にもとまらぬ速度で二度、振るう。
ガランガランと派手な音を立て、鉄製の檻が地面に落ちる。
「これは・・・」
ルシウスは内心、驚いていた。
無論、鉄を切れたことについてではない。
驚いているのは、それを切った時、何の抵抗も感じなかったことにである。
「ふ、ふふふ、クククク・あハハハハハハハアッ!」
ルシウスはただひたすらに興奮していた。
興奮をそのままに、ゴブリン達の気配が集まっているところへ向かう。
そこでルシウスはふと疑問を抱く。
(なんでさっきまで散らばってたあいつらの気配が一点に集まってんだ?)
だがその疑問は、ゴブリン達の集まっている小部屋に着くと同時に理解できた。
そろえる気もないピースが、独りでに揃い、一つの絵が完成する。
何故、あんな森の中に、たった一匹でゴブリンがうろついていたのか。
何故、この小部屋にゴブリンが集まっているのか。
何故、先ほどから、まとわりつくような生臭さが、あたりに立ち込めているのか。
何故、こんなところで、人の悲鳴が、それも女の悲鳴が聞こえるのか。
それらは全て、目の前の光景を目の当たりにし、完成した。
「ははっ、テメエら、この世界に存在したことそのものを後悔させてやるよ。」
先ほどまでの興奮の色はなく、ひたすらにどす黒いナニカを孕んだ声で、そうつぶやく。
《終わらない世界》
ルシウスの作り上げた闇魔法に分類される魔法が当たりに広がっていく。
この魔法の有効範囲内では、たとえどんな魔法を使おうと、どんな致命傷を負おうと、どんな生物であろうと、死ぬことはない。
裏を返せば、使用者であるルシウスの許可なく、死ぬことはできない。
今から始まるのは蹂躙?
温い!
地獄か?
温い!
狂うことすら許されないこの空間では、どんな言葉でも、形容できない。
妥協して表現するならば、ただひたすらの苦痛、絶望。
蒼の一閃が走るたびに、それはやってくる。
≪死神の双剣≫が。
それはルシウスに与えられた裏側の二つ名。
終わりの見えない苦痛に、絶望に、ようやく、終わりが見えかける。
その瞬間、ゴブリン達が最後に見たものは、神々しいまでの蒼いオーラに包まれた、≪死神≫の姿だった。
あたりに立ち込める、ゴブリンの血の匂いが鼻を衝く。
小部屋はゴブリンの緑色の血で染まり、否が応でも、ここで何があったのかが理解できる。
そこにいるのは一人の少年と二人の騎士、それに一人の少女だった。
少女はきっと少年と同い年だろう。
整った端正な顔立ちと、年の割には発達した胸、白磁のように透き通った肌。
それらが今、露わになり、黄みがかった白濁の液体で汚く汚されている。
「き、君・・・」
騎士の一人が、何かを言いかけて、口を噤む。
「すまないッ!」
そういって少年が五体投地、所謂土下座の体勢で、謝罪の言葉を口にする。
「俺の、所為で、彼女はッ!」
彼は唇を噛み締め、肩を震わせながら言葉を紡ぐ。
「俺が、もっと早く、ここの存在に気が付いていれば―」
言いかけた少年の言葉に、かぶせるように騎士が叫ぶ。
「やめてくれッ!そこから先を言わせてしまえば、私たちは、首をつらなくてはならなくなる。」
その言葉に、少年の表情には困惑の色が浮かぶ。
「なんで・・・なんだよ。」
たったそれだけの言葉を口にするだけで辛かった。
「君は、私たちの姫を・・・姫の命を救ってくれた、それだけで十分だ。それに奴らは、はじめは私たちの反応を愉しんで、あとから私たちも犯していただろう、そういう意味でも、私たちは君に救われたんだよ。」
力なく笑って見せる騎士の顔を見て、言葉にならない苦痛に貫かれる。
「違うッ!俺が、俺が言いたいのは,そんなことじゃない!」
苦しさから、まともに言葉を紡ぐこともままならない。
「いいんだよ。」
なぜかはわからない、でも、その一言に、救われた気がした。
「君は、優しいんだね。」
「え・・・」
「そうだろう、だってさ、結果だけを見れば十分に私たちは助けられたんだよ?その上でさらに姫を救えなかったことに、君は心を痛めている、それは君の優しさだろう?」
騎士の、彼女の言葉に、俺は言葉を失った。
それと同時に、彼女に対する尊敬とも言える感情を感じた。
自分は無事でも、自分の守るべき存在が汚された。
それはきっと、自分がそうなるよりも苦しいものだと思う。
しかし、彼女はそんな状況にあっても強くある。
その姿に、羨ましさを覚えた。
「さてと、私たちは国へ帰るよ、姫様も相当疲れているはずだ、一刻も早く国に帰らなくちゃいけない。」
彼女のその言葉で、俺は現実に引き戻される。
「待ってくれ。」
彼女の守りたかったものを守れなかったのは仕方がない、そう吹っ切る。
でも、俺にはまだやれることがある筈だ。
「なんだい?」
彼女はそう尋ねてくる。
「俺の名前はルシウス・アンタレス。あなた達を俺の国で保護したい。」
どうでしたでしょうか、きっちりと睡眠とってから文を考えてやってたんですが・・・
なんかこういうシリアスな感じの内容のを書いてるとテンションがヤヴァイです。
ハイ。
誤字脱字、感想、リクエストなどがあればよろしくです。
あと最近気が付いたんですが・・・作者のネーミングセンスがカス以下。
なのでこんな名前のキャラを出してくれ!なんてのがありましたら、特長その他etcの希望とともに感想欄とかでよろしくです。
主に学園編で使用させていただきます。