表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第零話「異邦人」

どうもです。以前に一度掲載した「Hero's Reality」が、どうも書きたい物と合わないと言う事で、再構築してみました。

この第0話はどちらかと言うと前日伝の様な形となっておりますので、飛ばして第一話から読んでも構わない仕様となっております。

ご自由にご選択ください。

『英雄とは、決して楽な物ではない。

 ‥‥一般に知られるのは表向きの華麗さ。その裏には、数々の苦難と、闇が渦巻いている――』

本をばたりと閉じ、青年は深く、ため息をつく。

「その様な事は、この世の常で‥‥当たり前だと言うのに、な」


目にするのは、いつもの通学路。もう道に迷う事もない。当たり前だ。

最早この道を歩くのも、もう五年目(・・・ )となる。


「おはよう!」

「ああ、おはよう」

となりを早足で通り過ぎた同級生に挨拶を返す。だが、それ以上の会話を行う事は無く、彼は早足で青年から離れていった。

(「やはり、俺は馴染めないのかも知れんな」)

金髪をかき上げ、頭を軽くぽりぽりと引っかきながら、青年は、校門を潜る。


「おい、てめぇ、校則では髪を染めんのは禁止――なんだ、お前か」

「地毛だ、と言う弁明は‥‥もうしなくてよさそうですね? 小暮先生?」

教師は一言も発さず、ちょいちょいっと手だけで『さっさと行け』のサインを出す。

それに軽く頭を下げて、青年は校舎内へと進む。



『They is not going to be there――』

(「最悪だ。一時間目は英語だったとはな」)


窓の外を見上げ、青年は本日二度目の、深いため息をつく。

何も英語が苦手だから、この授業が苦手なのではない。

寧ろ、この先生の提示する余りにも間違いだらけ(・・・・・・ )の英語を聞くのが苦痛なのである。


「おい、そこの金髪!何をよそ見してるんだ?」

どうやら、まともに話を聞いていないのがばれたようだ。

幾ら興味が無いとは言え、それを全面的に表してしまった自身の迂闊さを反省しながら、大人しく青年は立ち上がる。


「いえ、キチンと聞いておりましたが」

「ならば、これを答えてみろ」

「They are the ones who were not in their position when the day has ended」

「‥‥正解、だ」


がたん、と椅子に座り込む。

問題自体に於けるミス(isとareの違い、whoとthatの違い等)を指摘しても良かったのだが、それが良い結果にはほぼ確実に繋がらない事は、この三年間ほどの経験から痛い程に知っている。


自分は所詮、ここに於いては『異邦人』である――

青年、リチャード・ウォルスはそれを実感していた。



昼休み。


「本を返そう。中々に為になった」

「お、そうか。お前に合うかどうか分からんかったけど、そりゃ良かったぜ」


差し出した本を受け取った目の前の青年は、リチャードにとっては数少ない『友人』であった。

この学校の大多数の人間が、自分と距離を置いている事実は変わらない。

だが、このショートカットの快活そうな青年の様な者が居ると言う事自体が、何とかリチャードが学校に来るための意欲を支えているのだった。


「なぁ、いつも本の虫になってちゃ、体も悪くなるぜ。‥‥ちょっとバスケしていかねぇか?」

「‥‥いいのか?」

「心配すんなって。俺が居る限り、文句を言う様なヤツはいねぇよ」

青年には不思議なカリスマがあった。

クラスに必ず一人は居る、『特に何もしなくとも人に好かれる』。そんな性質を持っていたのだ。

自分もまた、そんな魔力の様なカリスマに惹かれたのだろうか――そう考えながら、静かに頷き、校庭へと向かう。


「なぁリチャード、前のあのトリック、また見せてくれよ」

「あれは練習すればお前の方が多分使いこなせるぞ?」

他愛の無い話。校庭に向かう途上。

足が、グラウンドの砂に触れた瞬間。紫の光が周囲に広がる。

「っ!?」

最初は、噂に聞く地雷でも踏みつけたか、と想像した。

だが、それに伴うはずの爆風も、破片に付けられた傷の痛みも、何も無い。

あるのは、単にどこかに、精神が引っ張られて行くような――そんな感覚だけ。


そして、閃光と共に――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ