序章:まだ平和だった一日
序章:まだ平和だった一日
『ハァッ、ハァッ、ハァッ、』
ほんのりと月の光が照らす、その道を、
『ハァッ、ハァッ、ハァッ、』
全力を出して人影が、
『ハァッ、ハァッ、ハァッ、』
滝のような汗をかく中学生ぐらいの少年が、
『ハァッ、ハァッ、ハァッ、』
ものすごい勢いで自分の家に戻っていた。
今、彼はけして逃げるために走っているわけではない。しかし逆に何処かに逃げたい、そして逃げ切れたその時、安堵のため息を吐き出したいと思っている。
しかし彼は逝く、門限を大幅に過ぎた事に対して怒っているだろう親の元へ。
そしてついに彼は自分の家にたどり着き、息を整え、覚悟を持って、
『ただいま帰りました!』と玄関の扉を開けると、
「「おかえりなさい。」」
そこに居たのは人では無く、笑顔で己の得物を構えた鬼と般若がご降臨していた。
(あぁ、みなさん。私はこれから地獄を見てきます。さようなら。)
逃げる事は叶わず、
気分はドナドナ、
汗は冷や汗と変わり、
背中の後ろで玄関の扉が閉まるのを感じた。
ある意味幸せな時間はもうすぐ終わりがやってくる。
さあて、運命のFull moonまであと一日の事でした。