表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

底辺の冒険者

「はい、今日の報酬は......50Gね」


「ありがとうございます」

俺は通貨の入った小袋を受け取った。


「あのさ、カイン君。もっと上を目指す気はないの?」


冒険者ランクのことを言っているのだろうとすぐ分かった。

俺はギルドで冒険者登録をしてからもう2年が経つ。それなのにランクは最低のEのまま。


俺には向上心がないのだ。


「お姉さん心配だよ。この金額じゃろくに生活も送れないでしょう?」


「いやあ、切り詰めればなんとか暮らせますよ、ははは」


「じゃあ、またよろしくお願いしますね!」

俺は小袋を抱え逃げるようにその場を去った。


家に帰り、俺はベッドで仰向けになりギルドのお姉さんの言葉を反芻していた。


冒険者ランク、ねえ......

昔からどうにも序列というものに全く関心がもてない。

冒険者になったのだって、生きていくために必要最低限の金を稼ぎたかっただけだ。

上を目指すということはクエストの難易度も当然上がってくる。

莫大な報酬のために危険な魔物と戦って命を落としたら元も子もない。


うん、俺はこれでいいはずだ......




翌日。今日もランクEゴブリン退治のクエストで森に来ていた。


「ファイアー・ボール!」


小さな炎の球がゴブリンに向かって飛んでいき、持っている木の棒とともにゴブリンの体を焼き尽くした。


「これで15体、か」

昨日ギルドのお姉さんに言われたことがまだ頭に残っていた。


「ーーーもうちょっと狩るか」




「これだけやれば十分だろ」

計30体を倒し、俺は森の奥地から引き返そうとした、その時だった。


「ギィェェェエエエエ!!」


「なんだ?」

耳につんざくような甲高い魔物の咆哮。なんとなく嫌な予感のした俺は森の出口へと走り出した。


が、遅かった。

その巨大な怪鳥は走る俺の頭上を飛び越し出口を背に俺と向かい合う形で着地した。


「なんだよ、お前」

ここにはスライムやゴブリンなど低級の魔物しか生息しないのではなかったのか。

俺は焦っていた。

クエストの範囲を超えてゴブリンを狩っていた間に、すっかり夜になってしまっていたのだ。

これでは、ほかの冒険者が助けに来てくれる可能性はかなり薄い。


俺の人生、ここまでなのか?


大した実績も達成せず最低限だけを求め続けていた浅い人生。

そんな弱者が、突然目の前の強者に殺される。


「それ、めっちゃムカつくな」

俺は腰に下げていた剣を抜き、構えた。


「いいよ、最大限やってやろうじゃねえか」


「ギィィイイイイイッ!!」

怪鳥が羽を広げ低空飛行で俺に向かって突進してくる。


「ぐっ……おおおおおらぁぁッ!」

剣で食い止めようと試みるが、衝撃を上手く吸収しきれない。


受け止めきれず吹っ飛ばされた俺は、背中を地面に打ち付けた。

「くっ、あぁぁぁあッ!!」


今まで味わったことのない、体が裂けるような鋭い痛み。

だからEランク以外を相手にするのは嫌なんだ。


ーーーそれでも、こいつに俺の人生を終わらせられるのはもっと嫌だ。


「ファイアー・ボール!ファイア・ボール!」

俺は必死に魔法を放ち続けた。効いている様子はない。


「ギィィィィヒヒィアアアッ!!」

さらに不気味な声色でその魔物は先ほどより速度を上げて向かってくる。


クソ、最終手段だ。

「ファイアー・ボール」

俺は剣に向かって放ち、刀身に炎を纏わせた。


「――貫けぇぇぇッ!!!」


俺は突進してくる怪鳥に合わせて剣を口の中に突き刺した。


「ギ……ィ……ッ…………」

静かな断末魔と共に怪鳥は倒れた。


俺は疲労と達成感でいっぱいだった。




「はい、報酬の150Gね。30体も倒すなんてやるじゃない」

いつものように小袋を受け取る。だがこれはゴブリンの分だ。


「あの、変な鳥みたいなやつも倒したんですけど、、、」


「変な鳥?」


これです、と言って俺は怪鳥の嘴をお姉さんに差し出した。


「え、これって、、、。ちょっと待って」

カウンターの奥の部屋に行ってしまったかと思うと、ギルマスのおっさんを連れて戻ってきた。


「カイン、お前こりゃヴォルガ・グリフォンじゃねえか。ランクA相当だぞ」


「え、まじすか」

どうやら本来ランクAやSの冒険者が討伐できるくらいのレベルらしい。


「なんで俺なんかが倒せたんでしょう」


「なあカイン、Sランク冒険者を目指してみねえか。お前には才能がある」


「そうよ!私も上を目指すべきだと思うわ」


ただファイアーボールを纏わせた剣を刺しただけなんだが。


まあ、でも、、、あの魔物をぶっ倒したときの達成感は凄まじいものだった。


あの快感、あの刺激を味わえるのなら。

上を目指すのも悪くないのかも。


それに、実は貯金も底をつき始めていた。


「まあ、やるだけやってみます」

俺はギルドでそう宣言した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ