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(3) 淡々とした人
初恋なんてものは。
女はいつの時代も美しかった。
外見?いや違う。心が。
綺麗事だと笑ってもいい。
誰がなんと言おうが女はいつの時代も心が美しかった。
───
「はじめまして。」
女と初めて会ったのは、女が営む菓子屋に入った時だった。その時は柔らかい雰囲気を醸し出していた。
「えぇ、はじめまして。ご注文は。」
ただ、柔らかいのは雰囲気だけ。
言葉の全てに正気が宿っていない。
けだるげ?怠惰?違う。そんな気がした。
何かを隠そうとして淡々としているようにも見えた。
そう、第一印象は淡々とした人。
私は探偵の端くれ。
彼女の些細な表情の変化や言葉の発し方で何かが掴めるはず。
─
「こんにちは。ご注文は。」
「羊羹を一つ。」
いつの間にか私は常連になっていた。
それは、美味しい菓子目当てではなく、紛れもなくこの女だった。
これ以外の会話はないはずなのに。
何故か目を惹かれる。目で追ってしまう。
なるほど、これが恋というのか。
─
探偵事務所を開いて間もない時。
ある男が尋ねてきた。
「石妖、ですか。」
「噂によれば美しい女の姿をしていて男を誑かす妖怪だとか。」
その時、あの女の姿が浮かんだのは何故だろう?
誰よりも先に浮かんだ。




