(2) 泣けない少女
真実を知らない無知な君は。
ここは失くした感情を専門に扱う遺失物取扱所。
「初恋の緊張感」
「あの時流れなかった涙」
「失った苦しみ」
などが分けて箱詰めされている。
ある日、フランス人形のように美しい少女がやって来た。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん。
ここは駄菓子屋ではないよ。」
子供相手だからだろうか、少し声が柔らかかった。
「あのね、ちぃね、なけないの。」
少し悲しそうな顔をした。
少女は、悲しいという感情を失っているわけではないようだ。
「泣けない?」
物珍しそうに女は少女と目を合わせた。
「そうなの。なけないの。
あのねあのね、ままがしんじゃったけど、かなしくないの。ぎゃくにえがおになっちゃうの!」
ニッ、と口角を上げて話す少女を普通の人間なら不気味だと追い返すだろう。だが、この女は違う。
「それはね、ちぃちゃん。
ままが死んで嬉しいんだよ。」
「うれしいの?でもぱぱはなんでわらってるんだっていってたよ!」
「ちぃちゃん。
ぱぱはきっとね、ちぃちゃんとは違う気持ちを持ってるんだよ。
ちぃちゃんの思ったことを大切にしなきゃね。」
優しく、そして真実を。
子供相手だからと容赦はしない。
真実を知らないと後悔することは女が一番分かっていた。
「ちぃちゃん、帰れる?」
「ちぃはすごいんだよ!ぱぱのところ帰れるの!」
きっと、パパ…父親のところへ戻ったらこの子は苦しむんだろう。
それは女もわかっていた。
けれど、いや、そうしたら、女はその『苦しい』『悲しい』『辛い』その感情を、攫いに行ってやるに違いない。
女は正義のために感情を奪うそうだ。
自分の居場所と信じて。




