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(1) 感情を失った青年



失ったものはありますか?



ここは失くした感情を専門に扱う遺失物取扱所。

「初恋の緊張感」

「あの時流れなかった涙」

「失った苦しみ」

などが分けて箱詰めされている。

ある日、無表情の青年が現れた。

「どうしたんだい。坊や。残念だけれど、ここ150年は従業員は雇ってないんだ。」

「……。ここが感情遺失物取扱所であってますか。」

店主の言葉には答えずに青年は心なく言った。

それを見た店主は下を向いたまま目を細め、

「合っているよ。最も君の感情は入らないがね。」

少し皮肉に言った店主に怯えず間髪入れず青年は答えた。

「僕はおそらく感情がありません。

でも、何が失いのかわからないんです。」

それを聞いた店主は初めて青年に顔を向けた。

綺麗な黒髪ロングヘア。

期待を裏切らないほどの美貌。

誰もが振り向くような顔面を見てもなお、彼は顔を変えず真顔でい続けた。

「……君は特殊だね。

一つ感情を失ってそれから派生していって感情が消えている。

何か大きなきっかけがない限り、君の感情が戻ることはないよ。

けれど、その一つの感情を刺激すれば君の感情は戻る。安心しな。

何が失くなったかぐらいは教えてあげるからね。」

「一体何が…消えているんですか。」

「君は自分自身への怒りの感情が消えている。

よく言うじゃないか、泣きながら怒るだとか笑いながら怒るだとか。

君は怒りの感情から泣くこと、笑うことから何まで全てを関連づけて消している、ってこと。

何が原因かは私も理解ができない。

それを見つけることができるのは本人だけだよ。」

「……。」

青年は何も言わず、女の話に聞き入った。

「何かを守れなかったなら、次に守りたいものを見つけることだよ。」

そう、店主が言うと足早に青年は店を出ようとした。


「ここは、感情を回収された人間、そして感情を奪ってもらおうとするバカが来る場所だよ。」


少し声を上げて言った。

「君は勝手に自分の感情を消しただけ。

 そこを、履き違えるなよ。」

威圧感。彼女の目によく合った言葉。

「……もちろんです。」

青年はまた、真顔で答えてボロく弱々しいドアを開けた。その後ろ姿は、少しスッキリとしていた。



失ったものを取り戻しに。

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