表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

初めてまして。身代わりで来ましたリリアーナです。


「さぁ、リリちゃん、ほら洋服が汚れてしまったわ」

「奥様? この方が?」


「違うのよ。キャロラインの代わりに可愛い子が来てくれたのリリアーナちゃん。リリちゃんよ。使用人の服は……用意していたけどサイズが合わないわね……1番小さいのはある?」


「今すぐに用意します。リリアーナ様こちらへ」


「あの……私は使用人ですから様は不要です。先輩」


「リリアーナ、一緒に行くわよ」


 使用人達はキャロラインがブレンダにこき使われるかと楽しみにしていた。しかし、現れたのは可愛いらしい少女であった。


「リリアーナです。義姉の代わりにきました。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げる。


 使用人一同は可愛いらしいリリアーナを見てブレンダに虐められない事を祈るのであった。


「あら? あなた……そばかすは不要よ」

「バレました? 流石一流ですね」


「そばかすも可愛いらしいけど、幾つ?15歳かな?」

「……先月、20歳となりました」


 使用人室から大きな悲鳴が聞こえたのだった。


「ちょっと……何?私も、私にも参加させて」

 急ぎ使用人室に入る夫人であった。



 夫人と使用人達はリリアーナから実家での生活を聞いた。実家では母の死後、突然義母と義姉が出来た事、そして使用人として暮らす日々、後妻が前妻の子に対する態度は想像できる。いずれは使用人ではなく貴族として嫁に行くこととなるだろうがマナーは殆ど教わっていない。高等学校すら行っていない。夫人はできれば少しの間、マナー見習いの客人として過ごさせてあげたいと言い、それに同意する使用人一同であった。


 変な方向へと向かっている事にリリアーナは困惑したのだった。

「み、皆様?私は使用人として来たのですよ。働かせてください」


 

「リリちゃんは、ここでマナーの練習よ。使用人として働きたいのならマナーを習得することね」


 ドヤ顔で言い放つ夫人であった。


 コンコンコン。


「入って」


「失礼します。ブレンダお嬢様」

「あら、可愛い子ね。ママ、新しく雇ったの?残念ね、私の専属にしたいくらい可愛いわ。残念な事にもう専属は決めているのよ。名前は?年齢は……そうね15歳位かしら」


「あの……リリアーナ・キャストンです」


「キャストン?」

「義姉のキャロラインの代わりに来ました」



「は?あの女の代わり?」


 ブレンダは手に持つ扇子をへし折るのであった。

 夫人はリリアーナの家族での扱いを大袈裟に話す。


「あの……奥様?そこまで酷くは……父もこっそり会いに来てくれてましたので」



 

「リリアーナ……いや、リリ。今日からレッスンよ。私の事は……お、お姉様と」

「へ?」

「お姉様とお呼びなさい」


「………………」


 そして夕食。


「リリ、背筋は伸ばして」

「はい、お姉様」


 私は一体何を?使用人のはずなのに。公爵家と一緒に夕食だなんて……。



「あの……」

 テーブルの上には沢山のフォークにナイフがあるわ。好きな物を使えってことかしら。


「リリ、カトラリーは外側から使うのよ」

「はい、お姉様」


 使う順番があるのね。



「おい……俺の話を」


「リリちゃん、今日は歓迎会だから、いつもより豪華なのよ。いつもじゃないわ、楽しく食事を楽しみましょうか。ブレンダもいいわね」


 その言葉に安心するリリアーナであった。



「確かにね。ごめんね。リリ」


 その場にいた者全てが驚いた。あの我儘娘が謝った……。


「スーザン、私は夢を見ているのだろうか」

「私も同じ夢を見ているようね」


 

「パパ、ママ。私だって謝るわよ。だってリリの……お姉さんだから」

 公爵夫婦はリリアーナのおかげでブレンダも変われるのではないかと思いホロホロと涙を流すのだった。



「あのだな……」


 

「お姉様……お腹がいっぱいで」

「もう?あなた……実家で何を食べていたの?」

「…………草」


 食卓に公爵家4人のカトラリーが落ちる。


「は?草とはその辺の?」

「はい、こっそり使用人や父様が持って来てくれる事もあるのですが……その……食べられない日もあって……父様から食べられる野草を教わりました」


 項垂れる公爵と目を見開き驚く夫人とブレンダ。


「……あの男は娘を可愛いと言っておきながら……草なんぞ食わせやがって」


 公爵は怒るのであった。


「リリ、少しずつ食べれる量を増やしましょう」


「ママ、今からでも成長するかしら」

「そうね……ギリ間に合うかもしれないわ。もう少し胃に優しい食事を用意させましょう」


「おい、いい加減……俺の話しを聞いてくれ」

 1人の男が声をあげる。



「あら、お兄ちゃん。いたの?」



「……ずっといた。最初から……その女は何だ?どこから拾って来た?父上の隠し子なのか?」


「おい、フレデリック。私は妻一筋だ。隠し子なんぞいない」

「フレデリック……バカな事を言わないで」

 キッとフレデリックを睨む夫人。


「それじゃあ、その女は?」


 リリアーナは席を立ちフレデリックの前に行く。

「ご挨拶が遅れました。この度は、大切な妹様を私の義姉が傷付けてしまい、すいませんでした。この度、義姉に代わり私がお勤めを果たしに来ました」


 深々と頭を下げるリリアーナ。


「義妹?何故、関係ないお前が来るのだ?」


 確かに騎士団の連中が可愛い可愛いと騒いでいた女が彼女か、確かに先程から見ていたが、悪くない。



「はい、一応家族ですから連帯責任です」


「だって……お前は」


 フレデリックは頭の先から爪の先まで見る。150センチ中程の身長にガリガリの身体、先程、草を食べていたと言うのもあながち間違いではなさそうだ。歳はそうだな……15才位だろうか学校は大丈夫なのか。


「まだ15才位か?」


「……違います。先月20歳となりました」

「は?」



「お兄ちゃん、そう言う事よ。さぁリリ、デザートよ。少しなら食べられるでしょ」

「はい、お姉様。とても美味しそうです」



 デザートを頬張るリリアーナをジッと見るフレデリックであった。




 夕食を終え、リリを部屋に案内する。


「あの、私は使用人です……このような大きな素敵な部屋……落ち着かないです」


「リリ、慣れて。これでも狭い部屋にしたのよ」

「う……」


 広い部屋に1人ポツンと立つリリアーナ。

 リリアーナは布団を剥ぎ取り、部屋の隅で眠るのだった。




 騎士の朝は早い、それ以上にリリアーナの朝は早い。


 薄暗い中、玄関の掃き掃除を終える。そして階段横の雑草をむしるのだった。


「早いな……」


 木刀を持ちリリアーナの前に立つ男はフレデリックだ。


「おはようございます……。坊ちゃん?」


 顔を引き攣らせるフレデリック。


「…………誰も俺を坊ちゃんなどと呼ばん」

「すいません」


 リリアーナは何と呼ぶのが正解かと考える。

「おはようございます。お兄様?」


 引き攣った顔のフレデリックは名を伝える。


「…………フレデリックだ」



「フレデリック様、おはようございます」


「あぁ……おはよう。なぁ、それを食べるのか?」

 リリアーナの横にしゃがむフレデリック。


「あ……いえ。違います」


「それなら何故、種類別に分けている?そっちは食える野草だ」

「あっ……無意識です。捨てます……家ではないので……フレデリック様も野草を?」


「……好んでは食わないが、そのだな一応訓練の一貫で野外訓練の際に学ぶ。茹でると悪くない」


「そうなのです。少し苦味が癖になりますよね」

 

 ふっと笑いフレデリックはリリアーナの頭を撫でる。

「へ?」


 リリアーナ以上に驚くのはフレデリックだ。急ぎ立ち上がり、コホンと咳払いしリリアーナに伝える。

「ほ、程々にな」


 裏庭に向かうフレデリックであった。リリアーナは気付かない。フレデリックの耳が赤くなっている事を。



 

「おい……見た?」

「あぁ、新しく来たリリアーナは可愛い……しかし今の副団長」

「笑ってたな」


 こっそりリリアーナを眺めていた2人は、そこに副団長のフレデリックが現れる。そして2人のやり取りをこっそりと眺める2人であった。


感想や評価(下の☆☆☆☆☆)をいただけると嬉しいです。また、リアクション、ブックマークも大大大歓迎です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ