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ついた先は、大きなお屋敷でした。


 リリアーナは歩いた。ひたすら歩いた。

 1時間ほど歩き到着したのは大きな屋敷であった。

 

「流石、公爵家だわ。お城のようだわ」


 リリアーナはサーベリアン公爵家の家の前で立ち尽くす。

 サーベリアン公爵家と言えばなく子も黙る武闘派の家だ。この国で唯一私兵を持つ事を許され、有事の際は国の為に国の騎士団と共に国の為に働くのだ。

 屋敷の門番に声を掛けられる。屋敷の門番もまた屈強な男だ。まるで仁王像のようにリリアーナの前に立ちはだかる。


「何用だ?」

 


「ほ……本日より、使用人としてきました。キャストンです」

「ん?話に聞いていた女と違う。もっと派手な女と聞いている」


「私は義姉の代わりに来た妹のリリアーナ・キャストンです。この手紙を公爵様に届けてもらいませんか?ここで待ちます」

 

 門番はもう一人の門番と話し合う。


「義妹か……わかった。だが……大人しくしているなら……そうだな……ここに隠れていろ」


「ん?隠れるのですか?」

「ささっとしないとアイツらが来る」

「アイツら?」


 そこにゾロゾロと騎士団の制服姿の男達がやってくる。

「遅かったか……すまないが我慢してくれ」


 門番の1人は走り公爵家へと向かった。リリアーナは後ろから怒鳴られる。


「おい、女。キャロライン・キャストンだな。うちのお嬢の男を寝取りやがって。ここではお前の居場所はないからな」


 数人の騎士はリリアーナに向かい文句を言うのだった。

 門番の1人が止めるように言うも騎士達は口々にリリアーナを罵る。

 

 リリアーナは我慢した。義理とは言え姉の方に非がある。そして、お嬢様は大切にされている証拠だ。


 リリアーナは振り返り頭を下げる。そして華麗に土下座する。


「この度はお義姉様が大切なお嬢様にご迷惑をかけ、すいませんでした」


 あっけに取られる騎士達、騎士達の知る噂の義姉キャロラインは高飛車な女だ。


 門番はリリアーナに土下座を止めるように言う。そして騎士達に説明する。

 キャロラインの代わりに義妹がここに来た事を伝える。そして無理やりリリアーナを立たせる。

 

「嬢ちゃん、安易に土下座するな。お前のせいではないだろ」

「しかし、一応家族の失態ですから」

 


 俯くリリアーナは門番の旋毛を眺め言う。

「すいません」

 そして立ちはだかる屈強な騎士達を見上げる。


 リリアーナは身長155センチ位だ、目の前にいる騎士達は身長と体が大きい男達だ。リリアーナは一瞬恐怖を感じたが耐えた、少しだけ身体が震え、目には涙が溢れてくる。


 心の中で叫ぶ、義姉のせいで私は……。私は今にもお漏らしをしてしまいそうだ。

 

 そんな震える涙目のリリアーナを見て1人の騎士は言う。


「い……義妹なのか……お、おい。泣くな。すまなかった。お……お前、か……可愛いな」

 

 少し安心したせいかリリアーナ目から思わず涙がポロリと溢れる。

「うっ……義姉が……。義姉が……ずびまぜんでじだ」

 

 リリアーナの見た目は栗色の髪を三つ編みにし、大きな瞳は陽だまりの色。色白の肌にそばかすを散らしぷっくりとした唇、小柄な身体は男達の庇護欲をそそるのであった。

 

 思わず泣いてしまったリリアーナを前にたじろぐ騎士達であった。


 その頃、公爵は門番から受け取った手紙を読む。

 

「くそっ、キャストンめ」

 

「あなたどうしたの?あの世間知らずを教育する日が来たのよ。あの子を社交界に出すと娘の様な被害者が後を絶たないわ。私達の手で食い止めるのよ」


 公爵は妻に手紙を見せる。そこに書かれていたのは。


『キャロラインを家から出す訳にはいかない。我が家の恥となり、雇ったサーベリアン家の恥となる事は目に見えている。代わりに可愛い娘のリリアーナを向かわせた。兄との子だ、賢く育った。私が本当の父親ではない事も気付いているだろう。申し訳ないが後は頼んだ。キャロラインの事は心配するな順調に育っている。時々でいいから晩餐に私を招待しろ、お前の家のメイド服は可愛いと有名だ。うちの自慢の可愛いリリアーナなら似合う事間違いない。リリアーナには家に戻るなと言っている。煮るなり焼くなり、そして着飾るなり好きにしろ。約束を忘れるな、必ず私を晩餐に呼べ』


「あなた?」

「あぁ、キャロラインの義妹の方が来たようだ。社交会には顔を出した事がない。あの2人の子だ。想像しただけで可愛いに決まっている」



 サーベリアン公爵夫婦は門番を見る。


「とても……とても可愛らしいお嬢さんです。騎士達に囲まれています。色々な意味で危険です」


「妻よ、急ぎ向かうぞ」


 門番と公爵夫婦は門へと向かう。そこには騎士達の集まりが見える。キャロラインの代わりに来たリリアーナの姿はない。いや見えない。

 

「あ……あなた、大変よ」


 

 リリアーナの元に残った門番は公爵夫婦を見つけると駆け寄る。

「公爵様……今日はお嬢様を傷つけた不届者の姿を見る為に非番の騎士達も来てしまい……」



 公爵は大きな声を出す。

「お前達、離れるんだ」


 公爵の声で騎士達はリリアーナから離れ整列するのであった。


 ひょっこりと姿を現すリリアーナに公爵夫人は驚く。


「な……なんて可愛い子なの?あなた……見て可愛い子よ」

「あ……あぁ。なぜ……泣いているのだ?」


 夫婦はヨロヨロとリリアーナに近く。

 

 リリアーナは夫婦に気付き土下座をするのであった。

 

「この度は、大切なお嬢様を傷つけてしまい、本当にすいませんでした」


「………………」


 公爵はリリアーナに近く。

「君のせいではない、ほら立って顔を見せておくれ」


 リリアーナは立ち上がり公爵夫婦を見る。

「グズっ、グズっ……すいません……私が来てしまいました」


「リリアーナと言ったね。私がサーベリアン公爵家の主人のマイクだ」

「私は妻のスーザンよ」


「リリアーナだね。手紙は読んだよ。泣かないでおくれ。お母さんにそっくりだ。しかし瞳の色は父親だね」

 

「…………あの」

「君は気付いているのだろ?」

 

「……はい、でも私の父は……ただ1人、育ての父だけです。大好きな父と同じ色です」

「そうだ、間違いなく君の父はあの男だよ」


「あなた……困った事になったわね。うちの子達にどう説明すればいいの?」


 サーベリアン家には2人子供がいる。ブレンダとフレデリックだ。なかなか癖のある兄妹であることは社交界では有名だ。


「リリアーナ、とりあえず中に入る。洋服が汚れたね」

「リリちゃん、お風呂に入って、それから私の選んだドレスを着て頂戴ね。さぁ、行くわよリリちゃん。あなた?」


「リリアーナを泣かせのは誰かな?まぁいい。皆、仲良く外周を50……いや100周してこい」


「団長?」

「さっさと行け」

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