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家を追い出された令嬢は何処へ行く


「リリアーナ、明日よりお前はサーベリアン公爵家の使用人だ」


「は?」

 

「お父様?」


「キャロラインが婚約者のいる男性と関係を持った。その男の婚約者は公爵家の令嬢でな。家族からキャロラインを使用人として寄越せと言ってきた」



「そうですか。なぜ私が行くのですか? 望まれているのはお義姉ですよね」


「キャロラインに使用人の仕事なんて出来ない。恥晒しとなる。お前が行け」


「お義姉様がした事でしょ。私には関係ない」


「父親の言うことを聞けないのか。明日には出て行け」

 書斎を出るとニヤニヤとお義姉様はリリアーナを見る。


 

「あら、使用人のリリアーナ。もうこの家には戻ってこなくていいわよ」

 

 そこに義母も参戦する。

「あんたの母親のせいで私は彼と結婚できなかったのよ。バチが当たったわね」

 何も言い返すことなく、その場を去るリリアーナだった。


 この家から出られる事を嬉しく思うも顔に出す訳にはいかないと我慢していたのだ。


 自室に戻る。狭い使用人の部屋だ。母が亡くなり、あの2人が屋敷に来てから私の部屋はここになった。荷物は少ない、母のドレスは義母が着ている……いや着られないから売りに出したようだ、母は華奢な体型だったから。この屋敷に来てからあの2人は大きくなった、本人たちは気付いていないのが不思議である。

 

 そして私は知っている。父には新しい恋人がいる事をメイドのマリアンヌだ。今の父は2人が出かけている間に愛を育んでいる。私は知っているが誰にも話さない。

 

 父はいい男だ、母も美人だ。つまり私も可愛らしい顔をしている方だと思っている。父のことは嫌ってはいない。しかし嫉妬深い2人を欺くために毎日せっせとソバカスを描く。ポケットには常にソバカスを描くための鉛筆が入っている。顔もワントーン暗くしている。


 公爵家の使用人か……きっとそこでも今と同じ扱いだろうなと期待はしていない。ただ、あの2人から離れられる事に感謝しているのだった。


 翌朝、早朝に身支度を済ませ、一応、父に挨拶をしに行く。


 父は早起きだ、義母が寝ている間にマリアンヌと愛を育むために朝の散歩に出かける。


「お父様」


「リリアーナか……」

「お世話になりました 」


 何も言わない父親はじっとリリアーナの顔を見る。

 

「母親に似たのだな。まぁ頑張れ」


「お父様もお元気で、嫉妬深い2人にはお気をつけて」


「知っていたのか……勘が鋭いのは母親似だ。前から思っていたが策士な所は兄に似ている。この家から解放するのが遅くなりすまない」


「いいえ、策士な所はお父様似ですわ」

「ふふっ、どちらでも同じだ。双子だ」

 

 私の本当の父親は、父の双子の兄だ。母は父の兄の子を授かるも結婚前に落馬事故で命を落とした。そして双子の弟である父が母と結婚したのだ。きっと父は母を愛していたのだろう。しかし母は亡くなった兄の方をいつまでも愛していた。母も、もっと父に寄り添っていれば幸せな夫婦となっていたのかもしれない。


「今まで娘として育ててくれて感謝しています」


「さっさと出て行け、時間が惜しい」


 父は庭の奥へと向かう。そこにはマリアンヌがいる。マリアンヌはリリアーナに頭を下げ、そして父と共に庭の奥へと消えた。


 手荷物はカバン1つだ。最後に一言、父に言いたい。



 公爵家へ行く馬車くらい用意して欲しかった。

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