9出待ち
みんなはフェリオ様が出てくるのを待った。
だが、フェリオ様はすぐには出てこなかった。
かなり待ってやっとフェリオ様が出て来た。彼の顔は不機嫌そうで何やらぶつぶつ言っている。
みんなは遠くに見えたフェリオ様に「きゃ~」と声を上げた。
その後ろからクララ様が出て来た。彼女の表情も硬い。
ナージャ様がクララ様に走り寄った。
他の会員は離れた場所でそれを見守る。シルベスタも待つ側にいた。
その間にシルベスタの友人、クリスタとリオナが声をかけて来た。
「シルベスタちょっといい?」
「ああ、クリスタ。アルナンド様は残念だったわね」
「うん、いいのよそんなの。それよりあなた大丈夫?」
「えっ?何が…」
「もう、あんなに騒いでかなり顰蹙買ってたわよ。いくら応援だからってやり過ぎじゃない?フェリオも少しはやめるように言わないの?」
「ああ、そうかも…でも、フェリオ様喜んでたし…」
「シルベスタ少し肩入れし過ぎよ。少し頭冷やした方がいいんじゃない」そう言ったのはリオナだ。
「もうリオナまで?私、こんな楽しい事今までなかったの。フェリオ様の事を思うと…それにファンクラブのみんなも優しくしてくれるし…あっ、これからフェリオ様のバースディパーティーなの、ごめん。もう行かなくちゃ」
「もう、あんまりはめ外さないのよ。パーティーはどこでやるの?」
「うちのレストランで、じゃあ、また明日ね」
シルベスタはミーナたちに呼ばれ嬉しそうに走って行った。
クリスタとリオナはほんとに大丈夫かと心配だったが無理やり連れ帰るわけにもいかずそんなシルベスタを見送クリながら大きなため息をついた。
ナージャとクララは話をしていたがみんなには会話は聞こえなかった。
「何かあったの。かなり遅かったみたいだけど」ナージャ。
「ええ、それが校長から注意があったのよ」クララ様が話を始めた。
「アルナンド様が校長に苦情を言ったらしいの。今日の試合で私達ファンクラブの態度が悪いって言われたの。それに来賓からも品がなさすぎるって顰蹙を買ったみたい。フェリオ様は悪くないんだけど…彼みんなからちやほやされるの嫌いじゃないし度が過ぎたところも多めに見ているじゃない」
「そうね。彼、優しいから…私達も少し気をつければよかったわね。あんな応援グッズがあるとつい盛り上がっちゃって‥シルベスタも張り切ってくれたから余計に羽目を外したわね」
「まあ、そんな気にすることはないと思うけど、これからは人目に着くような行動は慎んだ方がいいわ」
「そうね。それよりこれからパーティーよ。気分を変えて楽しみましょうよ」
「ええ、そうね」
そうは言ってもとナージャはキャロリーナとパメラだけクララから聞いた事を話した。
不機嫌なフェリオ様にクララ、ナージャが話をして謝った。
その間も他の会員はずっと様子を見ているだけだった。
フェリオがクララたちと話が終わると機嫌が直ったようで「みんな応援ありがとう。おかげで1位を取れた。これから俺のバースディ祝ってくれるんだろう?」
「「「はい、フェリオ様おめでとうございます。バースディパーティー一緒にお祝いしたいです!」」」
全員の思いは一緒なのか?声が揃っていた。
移動は特別な馬車を用意した。
もちろんその馬車にはフェリオ様が乗る。
馬車を引くのはもちろん白馬。二頭立ての豪華な装飾をほど越された馬車は借りたものだがそれでもかなりの金額だろう。
会員はレストランまで徒歩だと言うのに…
「いやぁ、俺だけ乗るなんて何だかもうしわないけど」
「いいんです。フェリオ様は今日の主役なんですから、この馬車ですこし王都の街中を走ってもらいます。私達は先にレストランで待ってますので・‥ではしばらくの散策をお楽しみください」
ナージャとシルベスタが代表でそう挨拶をして馬車は出発した。
「「「フェリオ様素敵です~」」」
お見送りはもちろんファンクラブ全員で手を振って見送る。
フェリオ様は窓から手を振ってそれに応えた。
クリスタとリオナはその光景を見てほんとに心配になって来た。
「シルベスタったらやり過ぎよ」
「あの子相当おかしくなってるわよ」
「ほんとに!これ以上何かやらかしたら停学もありえるわ」
「後で様子を見に行った方がいいかも…」
レストランに様子を見に行った方がいいかも知れないと思い始めていた。