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4フェリオ様に嫌われた?


 シルベスタはフェリオの後をついて行く。

 彼は学園の建物の陰に入るとくるりと向きを変えた。

 (少し怒っているような顔も素敵だ…)などと見惚れていると。

 「昨日の贈り物はなんだ?」

 彼の眉が上がる。

 「へっ?」おかしな声が出たがすぐに短剣の事だと察しはついた。

 「差出人は君の名前だったはず。知らないはずがないだろう?」

 「はい、短剣は私が送りました。ご迷惑でしたか?」

 「どういうつもりだ?あんなもの。驚いて思わず父に見せた」

 「でも…どうして?」

 「どうして?」それはこっちが聞きたい。あんな高価なもの学生が遅れる品物ではないだろう。あの鞘に入っていたのはエメラルド。剣は最高級の鋼だと父も言っていた。そんなものをいきなり送り付けるなんてどうかしてる」

 フェリオ様は眉間にしわを寄せている。

 (完全に嫌われたみたい。どうしよう…)


 「申し訳ありません。剣術大会がもうすぐですし長剣を送りたかったんですがさすがにそれはと思って短剣にしてみたのですが…お気に召さなかったのなら捨てて下さって結構ですので…いえ、それはもっとご迷惑。ならば引き取りに伺うよう宅配人を差し向けますのでどうかお許しください」

 「いや、返すとは言ってないだろう」

 フェリオ様が気まずそうに髪をㇰシャリと掻き上げた。

 思わずめまいがする。(あまりにカッコよすぎる~)

 「では、どうすれば?」

 「あ、あれは父が気に入って‥」

 (なんだ。そう言う事。それならそうと言って…いるか。か、可愛い)

 少しもじもじとした態度にまた萌える。

 「そう言う事でしたらどうか好きになさって下さい」

 「ああ、そういう事なら。いや、父がきちんと話をして来いって言うから…でも、もうあんなプレゼントは困るからな。じゃあ、俺はこれで、君も早く行かないと授業が始まるぞ!」

 呼び出したのはそっちのくせに…もう勝手なんだから。そんなフェリオ様もすてきですけど)

 フェリオ様がさっさと歩いて遠ざかって行く。シルベスタはファンクラブに入ったので個人的なプレゼントは出来ないと思い出す。

 「フェリオ様、私、あなたのファンクラブに入ったのでもうプレゼントは出来ないと思いますので、どうぞご安心ください」

 「そうか。頑張れ!」

 彼は振り返ると顔にかかった前髪をサッとかき揚げそう言葉を残した。

 シルベスタは去って行くフェリオ様にまた萌えた。


 *~*~*


 その日の昼食の学生食堂ではフェリオ様の隣にいつものクララ様とナージャ様がいた。

 ナージャ様はいつになくはしゃいで彼にデザートのタルトを彼の口に運ぶと言う大役をやり遂げていた。

 うれしそうなフェリオ様の微笑みにナージャ様が彼の腕に絡みつく。

 それを遠巻きに見ていたファンクラブの令嬢たちの歓喜するため息がざわめきのように食堂内に広がったのは無理もない事だった。

 シルベスタはそばにいた令嬢に聞いた。

 「あの…フェリオ様と昼食を一緒に取るのは順番が決まってますの?」

 「まあ、大体ファンクラブの幹部がメインだけど、フェリオ様に気に入られれば下っ端でも隣に座ることは可能よ。先日はピアーナだったし…」

 「そう、でも目立つことはしちゃいけないんでしょ?」

 「ええ、でも、朝の出迎えの時や剣の練習の出待ちに差し入れとか、昼食のあのタルトも、あれは私が皆さんにって差し入れたんだけど」

 「あなた、名前は?」

 「ミーナ。私はバシル男爵家なの。だから彼の隣になんて夢のまた夢なんだけど」

 「そんな事ないわよ」

 彼女を慰めながらもシルベスタは自分もいつかあの場所にと思っていた。


 *~*~*


 その日の放課後、シルベスタはロールロールでナージャ様たちと会った。

 「早速だけど会員申し込みに記入お願い」

 「はい、よろしくお願いします」

 「ええ、シルベスタ。私はキャロリーナ・プエル。うちは伯爵でこちらはパメラ・ラウーナ侯爵令嬢よ。3人がフェリオ様ファンクラブの役員なの。どうぞよろしく」

 キャロリーナ様は気さくな感じでパメラ様は少し大人しい感じの令嬢だった。

 シルベスタの会員申し込み用紙の記入が終わると話はすぐに剣術大会の後のパーティーに話はなった。

 「レストランよりここのカフェ感じいいわ。それにこのロールケーキすごく美味しいし」

 ナージャ様は一口食べたロールケーキを絶賛した。


 「ええ、でもフェリオ様はどうかしら?こんな女の子が好むような場所でのパーティーより少し大人っぽいレストランの方がお好きなのでは?」

 おとなしめのパメラ様。言うときには言うタイプですか。

 「そ、そうね。私ったらつい自分の好みを…フェリオ様は大人だからパメラの言うようにレストランの方がいいわね。シルベスタ今度レストランに行くから都合を教えて」

 「はい、金曜日の夕方まだ時間の早いうちならよいのではないでしょうか?」

 「ええ、そうね。じゃあ金曜日の夕方、食事に伺うわ。皆さんもよろしいかしら?」

 「ええ、それからみんなからのプレゼントをどうするかも考えなきゃ。個人的はプレゼントを禁止している分ファンクラブからのプレゼントは期待も大きいはずだし…」キャロリーナさんが思案顔をする。


 「そうね。それも金曜日までに何か考えて。シルベスタあなたの店で扱ってるもので男性に送るプレゼントで何かいいものがないか調べてもらえる?」

 「はい、わかりました。あの…剣術大会の応援なんですけど」

 「ええ、もちろん席はファンクラブとして当然確保してあるわよ。あなたも会員になったんだから大丈夫よ」

 「ありがとうございます。それで応援グッズとかあるんですか?」

 「まあ、名前を書いたボードなどは考えてるわ」

 「でしたらフェリオ様の色を基調にした扇子やタオルはどうでしょう?うちの服飾店で扇子とかタオルには刺しゅうを入れることも可能ですので」

 「シルベスタ。あなたそれってみんなでお揃いの応援グッズをって事?」声を上げたのはパメラ様だった。

 「はい、彼の瞳のグリーンに金色の刺しゅうなどいかがでしょう?タオルを広げるとフェリオ様の文字が大きく描かれている。これで応援すればきっと彼も心強いお気持ちで勝負に挑めるのでは?」

 「「「シルベスタ。あなたそれ、名案よ!」」」

 シルベスタの金脈はとどまるところを知らなかった。










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