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3フェリオ様ファンクラブに勧誘されました


 翌日シルベスタはいつものように学園の一角でフェリオ様の登校を待った。

 そこにはフェリオ様親衛隊らしい令嬢方が20人ほどいた。

 シルベスタは控えめにすぐ後ろで一緒にフェリオ様を待つ。

 ひとりの令嬢がシルベスタに声をかけた。

 「あら、新顔ね。あなたもフェリオ様を?」

 彼女はナージャ・セレスカ侯爵令嬢だったはず。彼女は波打つ金色の髪が美しい見惚れるほどの女性で1学年上だったはず。

 「はい、入学してフェリオ様を拝見して一目で心を奪われたんです。あの…もしかしてセレスカ様はフェリオ様のファンクラブの?」

 「あなたファンクラブに入りたいの?」

 彼女がぐっと背筋を伸ばして威嚇するようにこちらを見据える。

 (うわっ、行けないことを言ってしまったのか?ど、どうしよう…)

 「…すみません。私のようなものがフェリオ様のファンクラブに入りたいなどと…」

 「あら、フェリオ様の魅力に心を奪われた方とご一緒出来るなんて光栄ですわ。私はファンクラブの会長をしているの。あなたも会員登録したいんでしょ?」

 「いいんですか?」

 「もちろんよ。素晴らしいフェリオ様を独占しないためにも、これは絶対に必要なクラブだと思ってるわ。後で申し込み用紙を持って行かせるから必要事項を書いてちょうだい。それから、規約はよく読んでね。フェリオ様への単独接触は禁止。もちろん勝手にプレゼントなんて論外よ」

 (あっ、と思ったが、そこはおくびにも出さず)

 「はい、もちろんです。でも、ルヴィオス公爵令嬢はフェリオ様と特に親しいのはいいんでしょうか?」

 「まあ、良くはないけれど、あの方はフェリオ様とは幼なじみで学園に入る前から仲が良いらしいの。あっ、でも、もう一人は日替わりで交代することに決まってるから…あなた」

 「シルベスタ・オリヴィエです」

 シルベスタはびしっと背筋を伸ばして直立不動体勢になった。


 「オリヴィエと言えばあの伯爵家ですの?」

 「はい、私は次女で学園に通うためこちらのタウンハウスで暮らしております」

 「そう。ご両親は?」

 「両親は領地で忙しくしておりまして、姉が結婚して入り婿を迎えましたのでますます忙しくて、こちらには侍女と執事とで」

 「そうなの。いえ、お噂はかねがねお聞きしているわ。王都にも宝石商や服飾店、それに今人気のカフェやレストランも経営されているとか」

 わが家が結構なお金持ちと分かったからなのか?彼女は柔らかな声色で色々聞いて来る。

 

 「はぁ、領地で取れる鉱石を有効活用しただけみたいです。それに王都にカフェやレストランを出すと言うのは私のアイディアで経営はまだ両親ですがある程度の融通は利きますので会員の方たちの会合など引き受けらると思いますが」

 「まあ…」

 セレスカ様は感極まったような声を上げた。

 「今日、シルベスタ。あなたのような方とご一緒出来たことはすごくラッキーでしたわ。実は今度の剣術大会が終わったらフェリオ様とファンクラブの皆さんとご一緒にバースデーパーティーを企画しているの。あなたの家のカフェかレストランを貸し切ることが出来ればとっても助かるんですけど…」

 セレスカ様は少し目を伏せられて両手をぎゅっと組んでそれは庇護欲をそそられる姿だ。

 女性らしい姿だったが、シルベスタの脳内にはフェリオ様と一緒にバースデーパーティーを楽しんでいる光景が浮かんでいた。

 (すてき!)

 「まあ、そんな計画が。もちろんお任せください。学園の方との交流会をすると言えば家族は喜んで貸し切りでも何でもしてくれると思います」

 「そう?助かるわ。では早速今後の予定を立てるためにも放課後集まりましょうか」

 「はい、では学園近くのカフェ<ロールロール>でいかがでしょうか?あっ、どうしてロールロールって言うかと言うとお店で出すロールケーキがそれはもう絶品なので…」

 セレスカ様の瞳がキラッと輝いた。周りにいた令嬢たちも一緒にごくりと唾を飲み込む音が聞こえたような…

 「まあ、私もずっと行ってみたいって思っていたのよ。そんなにロールケーキが絶品なんですの?今から放課後が楽しみですわ。ねぇ皆さま」

 「「「はい!セレスカ様!!」」」

 「でも、ここにいる全員は無理ですわよ。そうね。会長の私と他2人ほどご一緒してもよろしいかしら?オリヴィエ様」

 「セレスカ様、私の事はシルベスタと」

 「そう?では私の事はナージャと呼んで頂戴。皆さま今日から新しい仲間が出来ました。シルベスタ・オリヴィエ伯爵令嬢よ。よろしくね」

 「新しくフェリオ様のファンクラブに入りましたシルベスタ・オリヴィエと申します。どうぞよろしくお願いします」

 シルベスタはそこにいた令嬢たちに挨拶をした。

 令嬢たちが拍手で迎えてくれた。


 そこにフェリオ様が通りかかった。

 「「「おはようございます。フェリオ様!」」」

 令嬢がフェリオ様に一斉に挨拶をする。

 フェリオ様はいつもの恒例とばかりにしれっと「おはようみんな。今日も早くからありがとう」さらりと挨拶をした。

 今日も朝から美しい金色の髪がさらさら風になびいてその場にいた令嬢たちからうっとりしたため息がこぼれた。


 「あっ、もしやそこにいるのはシルベスタ・オリヴィエ嬢か?」

 (えっ?いきなり名指し呼び。どうして?)と思いながらも返事をする。

 「はい、そうですが」

 「君に話がある。すこしいいか」

 シルベスタはフェリオ様についてくるよう言われてすごすご後をついて行った。

 20人の令嬢たちの鋭い視線に痛いほど背中を突きさされながら…







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