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1一目ぼれ


 シルベスタ・オリヴィエ伯爵令嬢は学園で一目惚れをした。

 学園に入学して初めての登校日。少し遅れて迷った。

 そこにお伽話にでも出てくるような王子が現れた。

 彼はシルベスタの手を取り優しく学園を案内してくれて颯爽と去って行った。

 シルベスタは恋に落ちた!

 彼の名はフェリオ・マーカス侯爵令息。目を奪われるような美しい金髪はさらさらと零れ落ちる一筋の砂金のような煌めきで、その瞳は吸い込まれそうなほどの翡翠色だった。

 彼はひとつ上の学年で婚約者はまだいない。それもあってか彼はいつもたくさんの令嬢から誘いを受けていた。

 シルベスタは同じクラスの友人クリスタ公爵令嬢とリオナ侯爵令嬢に彼の事を聞いた。

 ふたりとは伯爵家が経営する運送業関係のパーティーで知り合い仲良くなった。

 今では家族ぐるみでの付き合いをしている。

 そんな彼女たちは高位貴族の付き合いがあって令息の事をよく知っている。

 その情報によると彼と特に仲の良いのはルヴィオス公爵家のクララ様とフリグール子爵家のピアーナ様で同級生のクララ様はフェリオ様にべったりらしい。

 ほかにも彼のファンクラブのようなものがあってフェリオ様をひとり占めしないという暗黙の了解があって会員には令嬢が何人もいるらしい。

 彼の周りにはいつも女性がいるのはそう言う事なのかと変に納得した。


 あれから1週間が過ぎた。

 今日も学生食堂で3人は楽しそうに食事をしている。

 シルベスタは翌日にはフェリオの登校時間を調べそれに合わせて登校するようにした。

 彼は経営学科なのでリオナのお兄様から経営学科の授業時間割を教えてもらってわざと彼が移動する場所で待ち伏せたりした。

 フェリオを見かけるたびに胸がときめき、声を掛けようにも足が一歩も動かないばかりか、フェリオからも見られることもなくいつも知らん顔をされた。

 たった一度声をかけてもらっただけなのだ。彼が覚えていなくてもそれは当然と言えば当然なのだが…

 一週間悶々とした日を過ごしシルベスタはいいことを思いつく。

 学生食堂でシルベスタは勇気を振り絞ってフェリオに近づいた。

 「あの…マーカス侯爵令息様これを」

 「君は誰?」

 「知らない子?」クララ様がシルベスタを見た。

 「ああ」

 フェリオは楽しそうな会話を邪魔されて気分を害したのかちらりと視線を向けただけですぐにクララ様の方に向かれた。

 「先日学園で迷っている時にご親切にして頂いたものです…シルベスタ・オリヴィエと申します」

 フェリオの眉が上がった。

 「ああ、あの時の…」やっとシルベスタの顔を見直す。

 「はい、困っているところをありがとうございました。これ、気持ちだけなんですが」

 細長い箱に入った包みを差し出す。

 「なに?」

 「…ペンです。男性にお礼をするなんて初めてで…あっ、もし気に入らなかったら捨ててもいただいてもいいですので…」

 フェリオはその場で包み紙を破った。箱から黒いペンを取り出してペン先をじっと見る。

 「これ、安物だよね。ピアーナ使うか?」

 「えっ?いいの。だって、せっかくお礼だって言ってるんだよ。フェリオそれは失礼じゃない。うふっ」

 言葉はていねいだが言っていることは蔑み。

 (でも、ペン先って金ですけど…)

 「ごめんなさい。フェリオ様。とにかくあの時はありがとうございました。では、失礼します」

 シルベスタはいたたまれなくなってその場から走り去ったがすぐに次は何を送ればいいか考えていた。

 (結構お値段したのに…フェリオ様って見る目ないのかな?ううん、ペンなんて趣味じゃなかったのね。もっと彼の喜びそうなものってなんなの?)

 







 

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