初恋の行方
取引先の受付で出会った貴女は、仕事熱心な姿が一際美しく見えた。それから貴女に会うために何かと口実を見つけては、取引会社に足を運ぶようになった。
貴女との距離が縮まったころ。意を決して食事に誘い、そのままの勢いで告白すると貴女は、優しいだけが取り柄の自分のことを好きだと言ってくれた。
何度か逢瀬を重ねる中、貴女のお父さんには結婚を反対されました。格好悪いので秘密にしていたけれど、彼女が家を出てからもお父さんに彼女の勘当を取り消してもらうためにも、結婚を認めてもらうためにも何度も頭を下げに行った。
お家の方が呆れかえるくらい頭を下げに通う日々。彼女のお父さんは持病が悪化して亡くなった。結局仲直りはできないまま。
手紙を握りしめたまま泣く彼女の背中を支えながら、心の中で彼女を守ると誓った。
世界一美しい花嫁をもらった結婚式。
これ以上の言葉は思い付かない。
娘が産まれた頃。貴女は娘の母として一段と美しくなった。しかし、この幸せは過剰だったようで、娘のおしめが取れるより先に自分の命が尽きた。
「どうして迎えに来てくれなかったんですか?」
大好きな懐かしい声がする。その声の持ち主は、「破ったら地獄の果てまで恨む」と脅した約束をすっかり棚にあげている。
「すみません。でも、待っていましたよ」
振り返ると、触れる距離に微笑む貴女がいた。
「貴女は本当に、綺麗ですね」
「今日はあなたに会う為に綺麗にしましたから」