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Thousands of Tales After : Rise of the Assassin  作者: うっかりメイ
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第五話:The Rise of Assasin ─その一

 コルス大聖堂の回廊にて、殺気立った司祭に率いられた一団が夜の帰路を急いでいた。

「マヒルセン。建築士との契約書を即刻破棄しなさい。そしていますぐ契約をし直してきなさい。予算は三分の一に抑え、後で改築できるようにしなさい」

 先頭を歩く年老いた司祭が頭の中で素早く勘定を済ませる。それに対して呼ばれた方は困惑気味に応答する。

「ラネクメネス様。今は真夜中です。先方はお休みになっているかと」

 横を歩く若い司祭を彼はにらみつけ、頭をはたく。

「四の五のいわずにさっさとしなさい! 夜中だろうと叩き起こして言うことを聞かせるのです!」

 ややヒステリック気味に怒鳴り、彼を突き飛ばす。続いて個人所有の財産の隠し場所を変更したり、自身の管理している教会にある奢侈品をまだ講堂にいる賛同者の教会に避難させるよう周囲の司祭に指示を出していく。

(金に溺れた豚が)

 レイキールは心底その男のことを軽蔑している。ラネクメネスという司祭は信仰の探求のために信者から施しをもらうのではなく、贅沢をするために信仰者のふりをしているにすぎない。本当にコルストヴァの市民のことを考えているわけではなく、単純にお金を持っている貴族から支持を受ける今の状況が一番彼にとって都合がいいから神教による都市の支配状態を推進している。おそらくアポタイトやマハザールといった他の異端相手でも躊躇なく手を組むだろう。

(それは自分も同じようなものか)

 道端で野垂れ死にする運命だった自分を救ってくれた人がたまたま神教徒だった。それだけの理由で自分はデュルガウムへの信仰に真実を見出している。彼と自分で求めるものが違うのは些細なきっかけだろうか。同じように貴族の家に生まれ、何不自由なく贅沢に暮らしていれば自分も富への執着を持っていたのだろうか。真の信仰への渇望はなかっただろうか。フードの下で鼻をならす。そのようなことは考えるだけ無駄なことだ。

「レイキール、お前は貴族との交渉を完遂させることに集中なさい」

「承知いたしました」

 ゲルハルトを引きずり下ろした後はお前の番だ。心の中で目の前の男への嫌悪感を募らせながらも畏まった様子を見せる。この際こいつを切り捨てて司教に乗り換えた方が賢明かもしれない。もしくはこうなる前に彼が作った勢力をまるごといただいた方がよいかもしれない。ほんの僅かでも視界に入れたくないため、レイキールは男から視線を逸らし自身の教会へ急ぐ。自分はまだ若い。教団内の政治に巻き込まれ仕方なく言われた通りのことをしたといえば許してもらえるだろう。それよりも今の自分は護衛もおらず、丸裸だ。つまり刺客に襲われれば無傷では済まないだろう。散々痛めつけた小娘が再度来ても返り討ちにする自信はあるが、鉢合わせしないことが最善だ。司教から尖塔街へ来るようずっと前に手紙をもらったが、今は何よりもコルストヴァからの脱出が優先だ。

 周囲より背の高い礼拝堂の建物に入る。中は静寂が支配しており、誰もいないことは明白だ。正面に見える祭壇には蝋燭が灯されており、デュルガウム神の立像がそびえている。彼は身の毛もよだつ俗物に触れて薄汚れた心を浄化するために背の低い蝋燭を選び、他から火をもらう。その前で膝をつき、静かに頭を垂れる。

「主よ。わが道を祝福したまえ」

 祈りの言葉を紡ぐごとに今日の出来事が薄れて行く。今から司教に寝返ろうか。いや、彼らは異端との統合を進めようとしている。それは全く我慢ならないことだ。それならばコルストヴァ内外の貴族の反乱に乗じて教会を乗っ取る方が確実だ。そしてそれを先導するのは当然、私自身であるべき。レイキールは肩を震わせる。ラネクメネスは体のいい操り人形に過ぎない。彼らとの交渉を続けたのはこの司祭であり、指示を飛ばすだけのうるさい上司ではない。内乱の際は尖塔街を占拠するために少ないながらも手勢を預けてくれる約束をとりつけている。そのついでにあの醜い俗物を始末するのだ。

「主よ。切り開かれた未来に感謝します」

 そのとき、後ろで扉が開き、月の光と冷たい夜風が吹き込んでくる。

 振り返った先に見えた来客は死の気配を身に纏っている。彼、いや彼女は見覚えのある羽根飾り付きの帽子を被っていた。

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