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Thousands of Tales After : Rise of the Assassin  作者: うっかりメイ
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第三話:誇りを胸に─その一

 翌日、村長の宅で老夫婦に朝食までごちそうになり、ふたりは廃墟を通ってきた道を戻る。遺物は昨日の分を含めて二個しかなく、依頼者の司祭への報告は探索者が集まる遺跡の教会についてが主なものとなりそうだ。他に収穫といえるのは帰りに遭遇したシザーコックを彼の助言通りに倒すことができたことだろうか。文明通りへたどり着くころには、ジギオンとの約束通り陽が沈む直前となっていた。

「おお、シーラ殿、ジャック殿。お久しぶりでございます。ご無事なようでなによりです」

「ジギオンさん、まだ昨日別れたばかりですよ。でもその様子だと調査は終わったのでしょうか?」

「ははは、そうでしたな。しかし調査はもう少しかかりそうですな。そのことについても夕飯をいただきながらお話ししましょう」

 その日は遺跡から少し離れたポイントで野営を始めた。周りにも疎らに探索者の集団が焚火を起こしていた。盗賊の襲撃については少し気楽に構えられる。

「それで、おふたりは何かしら収穫はありましたかな」

「今回はからっきしだね」

 夕飯の後、自然と情報交換の話が始まる。今回はシーラの探索者としての練習の一環という名目だったため、その目標は達成できたとだけジャックは付け加えた。他方、ジギオンの調査の方はどうか。

「まだこれからです。教会としては遺物も立派な研究対象なのでなくなるのは避けたいのですが、発掘自体が大変となると頭を抱えるばかりです」

「探し物は探索者に任せてほしい。化物との戦いは戦士団の皆さんのほうが手慣れたものだと思うので」

 さりげない営業トークを繰り広げつつ、彼がニヤつきながらバーンの方を見ると、

「フン、そうだな。こちらの方が装備も訓練も行き届いている。実際に戦闘も起きたが、ひとりも欠けることなく調査を続行できた。ま、平民にできて我らにできぬことではないだろう」

 どうやらまんざらでもないようだ。

「シーラ殿。昨日お会いした時に仰っていた司祭についてお伺いしてもよろしいですかな」

 ジギオンが思い出したように彼女に尋ねる。彼にとっては”間違った”考えを持っている司祭のことだ。

「はい、何でもお聞きください」

「では遠慮なく。その方のお名前は?」

「ヒポリタスと名乗っていました」

「……」

 彼は眉間に皺をよせ、その名前を記憶から引っ張り出そうと努力していたが、やがて諦めてしまった。

「初めて聞く名前です。もしよければどこの地区の教会か教えていただけますか」

 クライアントが常在しているのはハビリオス地区の二階建ての教会。ちょうどその地区にバーンの実家があるらしく、小さいころの思い出や近くの酒場の主人と喧嘩したことなどでひとしきり盛り上がった。だが、その名称を聞いた司祭の眉間の皺が深くなったのをシーラは見逃さなかった。

 会話が徐々に少なくなっていく中、ジギオンに呼ばれた。眠りにつく前の散歩に誘われたのだ。横を見ると、ジャックはとっくの昔に眠っていた。焚火から少し離れた場所で彼は口を開く。彼を手にかけるとしたら今だろう。しかしクライアントの司祭についても興味があった。フードを被って顔を見せようとしない彼に不信感があったことも一因だ。最終的な判断は彼の話を聞いてからでいいだろう。目の前の男は彼女との距離を半分詰め、声量を抑えて話し始める。

「ヒポリタスという名前に心当たりはありませんが、その教会については心当たりがあります。その司祭の名前はレイキール・カイザスで間違いないでしょう。デュルガウム神教会は司教様の下に運営を行っておりますが、彼の方針から逸脱する者がラネクメネス司祭を筆頭に増えてきていることが問題となっております。本来であればそれを手引きしている者を調査しなければなりませんが、内偵行動など門外漢の我々にはどうしても手に余る。専門の機関の設立を急いでいるのですが、後手に回ってしまっているのが現状です」

 肌がぴりつくのを感じた。彼はこちらの正体を看破したとは思えない。しかし少なくともただの探索者だとは信じていないようだ。

「ジギオン様、一体何の話でしょうか?」

 それでもよくわかっていないふりをしなければならない。目の前の男を手にかける機会が訪れた一方、このような足元ほどしか見えない暗闇では誰が聞いているのかわからないのも事実。それをくみ取ったらしく、彼は顔を近づけて囁く。

「明後日タナメクス地区のパブに日没後お越しください。“マイティボアの鼻”亭というところです」

「件の司祭に関係することでしょうか」

「はい、以前よりわかっていたことですが、彼の活動は怪しい点が多い。貴族からの寄進が減少し始めた昨年から複数の貴族と密にやり取りをしています。ここでは詳しく話せませんが、彼には用心した方がいいでしょう」

 彼はそこまで言うと身体を離し、通常の声量に戻す。

「申し訳ございません。私の早とちりだったようです。さしもの私でもごく最近加わった司祭の名前はわかりませんでした。信徒を導く使命を果たしているようで何よりです」

 この部分だけ聞けばシーラが依頼者についてうまく誤魔化したと思わせることができるだろう。彼が司教から直々に調査を依頼された理由がわかる気がした。


 翌日、朝の涼しい時間から出発したおかげか、夕方にはコルストヴァに到着することができた。ジギオン司祭にお礼を言いつつ分かれ、ふたりは都市の南にある探索者互助会館に戻ってきていた。いくつかの封書を手にして戻ってきた彼に彼女は切り出す。

「今回はありがとね」

 彼は笑いながら肩をすくめる。

「なんだよ改まって。こちとら仕事で嬢ちゃんについて行っただけだ」

「そうだけどそうじゃないわ。私、もう少しこの仕事を続ければ父さんのこと理解できると思う。だからやっぱり探索者になるのはもうちょっと先になるかも」

 彼は少しの間口を開けていたが、やがて思い出したように先ほどより大きな笑い声をあげる。

「なんだ、一昨日のこと真面目に聞いてくれてたのかよ。俺が言うのもなんだけど、探索者なんてロクな仕事じゃねえぜ? 嬢ちゃんは今やりたいことに全力で打ち込みな。それに今回感謝するのは俺の方だ。アンタに話せたおかげで肩の荷が降りたんだ。親父さんのことはご愁傷様だけどよ……」

 やや言葉につまり、彼は照れ隠しのようにシーラの頭を乱暴に撫でる。

「ちょ、何すんの」

「ごめん、言葉が出てこなくてさ。近いうちにエルの顔でも見に行くから後で場所教えてくれ」

「うん、もちろん。そうだ、頼み忘れたことがあってさ「

「おいおい、またどこかに連れ回すのか? 勘弁してくれ」

「そんなんじゃないわよ。依頼料の支払いもするから日没くらいに家に行くね」

 ふたりは別れた。陽はすっかり傾き、時間はあまりないないようだ。

ようやく第三話にはいりました。

この辺りは主人公の言動を保たせるのに必死でした。

(正直な話、いまだに違和感がある)

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