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82 糠に釘



「公爵については探り続けるとして、まずは魔女を処理しなくちゃ」


 元凶もだが、嬉々と呪ってくる魔女の存在は厄介でしかない。


「他の魔女は自重して、仕事を選んでくれているけれど、あの魔女は厄介だ。後ろ盾を得て遠慮もない」

「そもそもあの女、危険を冒してまでなんでかの方に手を貸しているんだ。それこそ弱みでも握られているのか?」

「良識ある魔女は魔女狩りを恐れて余計なことはしないけれど、あの魔女は好奇心の塊だからね。元凶からの依頼にかこつけて、危険な呪いの効果が知りたくて呪っているかも」

「うっかり死人が出そうな呪いをお試し感覚でやるか?」


 理解できないとモーリスが呆れた声音で言うが、スタンはゆっくり頷いた。


「やるよ」

「やるでしょうね」


 ロドニーも同意した。

「塔」に所属する二人の言葉に、モーリスは理解できないと眉間に皺を寄せる。

 常識的で、大変よろしい。

 スタンは微笑みながら手にした書類…ブローチの経路を記した書類をテーブルに置いた。


「呪いは繰り返せば繰り返すほど効果が強くなるけれど…呪えば呪うほど、術者にも影響が返って来る。理性的な思考ができなくなったり、暴力的になったり、常人から逸脱していく。あの魔女は躊躇いとか、理性的なブレーキが壊れてしまっているようだ」

「どっかの猪女みたいにか?」

「あちらは多分昔からの性格だね」


 どういう意味だと二人の脳裏でメイジーが憤慨したが、この場に当人はいないのでどんぶらこと思考の海へと流された。想像上の(イマジナリー)メイジーは憤慨したまま消えていく。


「で、問題のブローチは手元に残ってるわけだが、これは物証にできるのか?」

「半々かな。これは、あの魔女が作ったもので間違いない。だけど魔女は請われて呪いをかけただけで、仕事をしただけ。厳重注意は可能だけど、これが魔女の商売だ。脅しをかけることはできても、従わなければ意味はない」

「贈り主は?」

「相変わらず、証拠隠滅やねつ造がお上手だ。今回のことを公にすれば、本人ではなく可愛いエヴァの恋人に火の粉がかかるようになっているね」


 ご丁寧に、彼がエヴァにプレゼントを用意している店を経由して宝石を購入している。少し細工するだけで、問題のブローチを購入したのは彼だと関連付いてしまう。

 彼が、ピーターがエヴァに贈り物を用意している情報はスタンも得ていた。それは秘密の恋人が狙われないよう付けている影からの情報で、探ろうと思えばスタン以外もピーターの行動は把握できる。

 そう、今回のように。


「愛の奇跡を熱望しながら、若者の愛を利用するなんて悪質だな」


 エヴァに呪いを送るのは、彼女が疎ましいからではない。

 それが彼女のためになると、本気で信じている愚か者がいるのだ。


 愚かな考えを助長しているのは、呪いのプロたる魔女との繋がりもある。

 魔女に釘は刺せるだろう。しかし刺さった釘をものともしない女だ。

 穏便に無力化したかったが、温情をかけたのが間違いだった。


「彼らにはそろそろ『懲りて』貰わないと」


 柔らかな微笑みを浮かべる美貌の青年の目は冷たい。

 キラキラ輝く青空は、まるで寒空の様に冷え冷えと澄んでいた。



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