79 ドウイウイミ!?
「普通はあんな呪いを受けたら心が折れるだろうに…メイジーは本当に、反骨精神豊富でへこたれない」
「そりゃ二度と喰らいたくはないけど…次は呪われる前にぶっ飛ばすわ」
「次を想定するな」
モーリス煩い! 意気込みくらいさせなさいよ!
「だいたい、呪う奴が悪いのよ。呪う事情があったとしても呪う方が悪いの。だから呪う奴は呪った相手にぶん殴られる覚悟で臨まないと不誠実よ。私だってそうしているわ」
「お前そんな覚悟で呪おうとしてるのか?」
「当たり前じゃない。呪っていいのは、ぶん殴られる覚悟がある奴だけよ」
「何か違うのに説得力が違う」
「何が違うの?」
「意気込みは人それぞれだとして…メイジーは今回の呪いを送ってきた相手をぶん殴りたいってことでいいのかな」
軌道修正したスタンに力強く頷いて返す。当たり前よ。落とし前つけなさいよ。
…ところでアンタいつまで私の手を握っているつもりなの? もう布団を叩くつもりはないから、手を放していいのよ。
「すぐには難しいけど…整えておこう。そろそろ本気で懲りて貰わないとエヴァも辛い」
スタンの発言に、何故かモーリスがぎょっとした。
私は普通にスタンが言いそうなことだったから驚かなかったけど、何か含まれていたのかしら。
あと手、いつまで乗せとくつもり。なんか気になるんだけど。
「ありがとうメイジー。決心がついたよ」
「何に対してかよくわからないけど…どういたしまして?」
「メイジーは本能的なのに思慮深いのが面白い。火の粉は全て打ち返す姿勢が豪快で気持ちがいい。ずっと見ていたいな」
スタンの手が離れる。
気になっていたのに、それだけなのに、もの寂しさを感じてしまった。
「好きだな」
モーリスが後退って後頭部を壁にぶつけてしゃがみ込み、膝をチェストの角にぶつけて悶絶した。
そんな喧しい視認情報すら一瞬で頭から追い出される。
私は綺麗に微笑む男と視線を合わせ、息を吐くように応じた。
「…そう? ありがとう」
「うん、覚えておいて」
柔らかく微笑み、立ち上がる。
「話はここまでにしよう。メイジーの目的がぶれないなら、夜会に参加するためにも今は充分休まなきゃ」
私の背中を支えていたクッションをずらして、寝台に横たわらせる。顎の下までしっかり布団をかけられた。
「おやすみ」
一言囁いて、実にスマートに退室した。
悶絶していたモーリスが、信じられないと紫の目を見開きながらついていく。
パタン、扉の閉じる音。
私は横たわったまま天上を見上げ…。
「…んんっ!?」
遅れて脳に言葉の意味が浸透し、疑問から変な声が出た。
あいつ、今なんて言った!?
ドウイウイミ!?
休めといわれたが、ゆっくり休めるわけがなかった。
コロナりました。
2日程投稿お休みします。
いいところぉ。
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