65 着せ替え人形の日
ダンス漬けの一日を終え、エヴァが休養日の翌日。
着せ替え人形ってなによって思っていた私へ。
今すぐ逃げなさい。
「まあ! 素晴らしいですわ!」
「なんて艶めかしいメリハリあるお身体」
「これはスタイルを強調するマーメイドが」
「いいえスレンダータイプで大胆にスリットを」
「胸元を出し過ぎては下品になりますからシースルーで誤魔化して」
「まあ、健康的な背中! ホルターネックにして背中を強調しましょう!」
「それならクロス! クロスで胸元にも色気を残して!」
「やり過ぎると下品だと言っているでしょう!」
「このピンクゴールドの髪を結い上げるか流すかで印象がまた変わりますわ!」
「お色の候補は!? パートナーに合わせた青はどこに!?」
「ワァ…」
か細い声しか出なくなるから…。
正直、舐めてたわ。着せ替え人形。
朝食後、笑顔のエヴァと数人の侍女に衣装部屋に引きずり込まれた私。
仕立屋だという女性数人が居て、彼女たちに下着姿にされ全身を計られ、ありとあらゆるドレスとアクセサリーを身につけさせられた。
ドレスを着るのにそれなりに時間がかかるから全部着せられたわけじゃないけれど、それなりの数着せられたわ。
私は案山子になるしかなかった。他にできることもなかった。
一応聞かれたのよ。
「メイジーはどのようなドレスが好み?」
「動きやすいの」
「ダンスがあるから、確かにそうね」
「いざという時に蹴ったり投げたりしやすいドレスがいいわ」
「メイジー…」
「残念ながらそのようなドレスはございませんね…」
ないなら仕方がないわよね。
私が案山子になっている間、エヴァはデザインの相談でとても楽しそうだったわ。ピーター様の話をするのとはまた違った楽しそうな顔だった。
色は、形は、飾りは、どこで魅せるか。
「…楽しそうね…」
「あ、すみません。自分では似合わないので着られないタイプのドレスで…新鮮で、盛り上がってしまったわ」
「いいのよ…私にはわからないし」
本当にわからない。
マーメイドがスレンダーにスリットってなんの呪文?
「もう好きにして…」
「ありがとうございます!」
エヴァのそんな爽やかな笑顔初めて見たわ。
ちょっと、夜会一回分の一着を決めるのになんで普段着の話になってるの? お茶会に着ていくデザインとかいらないわよ? ちょっと!
普段着、夜会、夜着の三着分を三通り、合計九着デザイン案が持ち帰られた。
ねえ、なんで五着も増えてるの? ねえ!




