61 パートナー
視線をうろつかせながら言葉を探す私に、エヴァが困ったように微笑みながら呟いた。
困ったように眉を下げるエヴァは可愛い。
なんでかしらね、笑顔が可愛い子なのに下がり眉がもっと可愛いの。
「メイジーが納得しているのなら、わたくしが何を言うことでもないですが…」
私が困っていることを察して引いてくれるの、人間ができているわよね。私だったらキリキリ吐けって追及の手を強める気がするわ。
可愛くて人ができているって最高じゃない。
「でも本当に、大丈夫ですか? メイジーは社交に出たこともないのに、急に夜会だなんて」
社交がどういうものかも知らないわ。
知らないし、なんだったかしら。令嬢が夜会に出るには色々ルールがあるとか聞いたけれど、それら全てを払拭する最善手があるとかなんとか言っていたわ。
何はともあれ。
「よくわからないけど、夜会ではスタンが付き添ってくれるらしいからなんとかなるわ」
夜会のことなら任せろって言っていたし、発案者なんだから責任を持って公爵と私を引き合わせて貰うつもりよ。
何かあったときの責任はスタンが取るって言っていたし、それなら任せていいわよね。任せろって言うんだもの任せるわよ。
でもそう告げたら、エヴァがぎょっと目を剥いた。
「ええ!? お兄様が!?」
「え、うん」
「付き添うということは、パートナーで参加を…!?」
「パートナー? えっと、一緒に居るって言っていたけど、それってパートナー?」
ちなみにパートナーって何の?
なんかあるの?
「そ、そんな。お兄様が!? お、お兄様は他に何かメイジーにお話ししましたか!?」
「え、ほかって何。ほかって何よ?」
「な、何もご存じでないメイジーに…お、お兄様!?」
「エヴァ!?」
エヴァは大慌てで走…らないで、てこてこ可愛い歩幅でレッスンルームを出て行った。貴族令嬢はいかなる時でも慌てず騒がず取り乱さずって教養の教師が言っていた通り、大変取り乱していたけどぱっと見いつも通りのエヴァだったわ。
すごいわ。私だったら全力ダッシュよ。
何に取り乱していたのかわからないけど、原因がスタンならスタンが悪い。
でもエヴァが取り乱す理由が全然わからないわ。話題にしていたパートナーってそんなに大事なものなのかしら。
なんて頭を悩ませていたら、わりとすぐにエヴァが戻って来た。スタンとモーリスも一緒に。
なんなの?




