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38 観葉植物=呪いの材料


「僕は一応、研究員をしていてね。だから庭にも薬草が植えられている。呪いの研究で使えるように、うちで育てているんだ」


 そう言ってスタンが視線で示したのは、部屋の隅に置かれた大きな花瓶や観葉植物。

 …よく見たら、それも呪いに活用できる薬草の類いだった。特に鉢植えの多肉植物に咲く小さな花は採取が難しいって言われている奴じゃない?


 初級編の【採取難関植物一覧】にあったから知ってる。


 そんなものを応接室に置くなんて…どんな客が来ることを想定しているのよ。うっかり持って行かれたらどうするつもり?


 そう、うっかり。


「…呪いに使えそうなものばかりと思ったら呪いに使う為の庭だったのね」

「はは、呪いの研究に使う為、ね。私怨での使用は勿論認められていない。だからメイジーが持ち出した場合は速やかに没収だね」

「チィ…ッ」


 思惑がばれているわ。


「強めの舌打ちやめろ」


 モーリス煩い。


 でも、研究員か。しかも呪いの研究員。

 …だからチャンル学園の木の枝を使用する呪いの種類に詳しかったのかしら。

 安宿で語った呪いの内容、初級編の本には載っていなかったから、かなりコアな部類だったと思う。普通は知らないレベルの呪いよ。


「で、ロドニーは下っ端だから。先輩達にこき使われて、研究に必要な薬草を採取しによくうちに来るんだ」

「言い方が酷い」


 笑顔のスタンとしょげた顔のロドニー。

 相変わらず耽美な表情に、危機感を抱く。


「ちょっとスタン。こんなエヴァに会わせちゃいけないタイプの男の出入りを許しているって言うの? あなたそれでもエヴァの兄?」

「内容が酷い」

「勿論兄だとも。エヴァが学園に登校している、確実に遭遇しない時間帯じゃないと出入りは許可していないよ」

「なんだ、ちゃんと対処していたのね」

「私が何をしたというのですか」

「鏡見て」

「シンプルに酷い」


 ロドニーは肩を落としてしょんぼりした。

 …流石に色々言い過ぎたかしら。セクハラの代償とはいえ蹴飛ばしちゃったし。色々言い過ぎたかしら。

 ちょっと考えて、取り敢えず暴力の件を謝罪することにした。


「さっきは蹴ってごめんなさい。あちこち触るし顔を近づけてくるから変態かと思ったの」

「酷い」

「勝手にあちこち触ってきた男が何言ってるのよ」


 転び掛けたところを助けられたまでは良いけどそこから先はアウトよ。スマートに離れれば何事もなくお礼を言ったのにこの野郎。

 どさくさに紛れてあちこち触るような男は万死に値するわ。

 異論? あんのかこら。



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