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27 庶民の料理


「難しい料理が出来なくたって良いのよ。持ち歩き可能でお弁当に手頃に入れられる一品が作れれば。まずは一品作って食べさせて、相手の反応を見て続けるか決めれば良いわ!」

「…わ、わかりました! わたくし頑張りますわ!」


 拳を胸の前で握って力強く宣言する。頬は真っ赤で、ふすふす鼻息が荒い。

 やる気十分なエヴァに頷いて、今の今まで背景に徹していた料理人達に使って良い食材を聞く。


 会話からなんとなく事情を把握したらしい彼らは、恐る恐る食料貯蔵庫を開けてくれた。

 厨房にある貯蔵庫は二つ。大きなモノと小さなモノ。大きい方がメインで、小さい方は賄いなどに使用するちょっとお貴族様にお出しするには厳しい食材が入っているらしい。


「でん…こほん。お嬢様のためなら何をお使いになっても構いませんが…何をお作りするおつもりで?」

「そうね、エヴァは初心者だし、楽しく簡単にできる料理が良いわ」

「マッシュポテトなど簡単にできますが」

「芋…いいえ、狙うは…」


 私はガッと小さい方の貯蔵庫を開けた。勢いが良すぎたのか近くにいた料理人が飛び上がって驚く。

 気にせず中身を確認して…狙いの品を見つけて、引っ張り出した。


「肉よ! 肉団子を作るわ!」


 取り出したのは、挽肉。

 あるならこっちだと思ったのよ!


「にくだんご…ですか??」


 エヴァはきょとんとしているが、料理人達が慌てだした。


「お待ちください。挽肉は庶民の食材です。それを使った料理をお出しするわけには…」

「これはお肉ですか? 私の知っているお肉と違います」

「お貴族様って本当に挽肉食べないのね」


 フォークテイル王国では、貴族は分厚いステーキ肉を好んで食すと言われている。

 権威の象徴なのか、客をもてなす時は分厚いステーキが必ず出てくるとか。パンも厚切りで、ボリュームがあればあるほど喜ばれるとか。


 反して庶民は薄切りだ。薄くスライスしたパンで野菜や肉を挟んで分厚いサンドイッチにして、少しでも贅沢に見せるのがトレンド。肉だって薄切りが主流で、骨に残った肉をそげ落としてできた挽肉は余り肉と呼ばれ、お貴族様は存在すら知らない。


 庶民には一般的なお肉なんだけどね。肉団子好きよ。


 因みに大量の挽肉で作るハンバーグは庶民の間で肉の王様と呼ばれているわ。


「エヴァ、これもお肉よ。これをこねて丸めて揚げると美味しいの」

「こねてまるめてあげる…? お料理のお話ですよね?」

「お料理のお話よ」


 バラの状態でソースに混ぜたり野菜と炒めたりもするけど、丸めた方がお肉食べているって気持ちになるから好きよ。それと他国では油って高いみたいだけど、我が国では原料の油菜がたくさんさいているからそこまで高くないのよね。庶民でも手が出せる値段よ。

 料理人達は困っていたけれど、仕方がないわ。

 私が教えられるのは庶民料理だけだもの!


 だって、庶民だから!


 それに、まずは苦手意識を無くすためにも楽しく料理すべきだと思うの。これなら左程包丁も使わないし、難しくないでしょ。

 揚げ物は危険? そこだけ手を貸せば問題ないじゃない!


 ピーター様に贈る料理は、また相談して決めれば良いわ。まず挑戦よ。

 まあ、エヴァが庶民の料理なんて…って言うなら私は引き下がるしかないけど。


「どうする? 作る?」

「…作り、ます!」


 よしきた!

 庶民の料理教室はじめるわよ!




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プティルブックス様より

事故チューだったのに!

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