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26 ここまで全部受け売り


 いるのよ、本当に左程趣味じゃなくても【人の物だから】ってだけで欲しがる迷惑な奴!


 意外と近く、近所に居たのよ。

 物欲激しいビビアン十三歳。新品より誰かが大事にしているものを執拗に欲しがる困ったちゃんが。


 私の台詞に、エヴァは衝撃を受けた顔をした。背後に稲妻走る。


「そんな、そんな方が…いらっしゃるというのですか!?」

「いるわ」


 余程の不細工じゃない限り狙われる。特に、恵まれている人間が持っているものを欲しがる傾向があった。

 近所のビビアンはそうだった。他者から奪い取ることで、自分がその人よりすごいと優越感に浸るような困った子だったから…ぶん殴って返却させたわ。

 ビビアンが泣き喚いて一時期私が悪者になったけど、ビビアンの被害に遭った子達が一生懸命誤解を解いてくれたから世の中捨てたモノじゃないわ。


 でも困ったちゃんはどこにでも居るのよ。


 私の力強い断言に、エヴァはオロオロしだす。

 エヴァは可愛いし、可憐だし、言うことなしの深窓のご令嬢だけど、だからこそ意地悪なお嬢様に嫌がらせをされそうなのよね。なんて言うのかしら。うさぎ? リス? 小動物系だから、肉食系のお嬢様の餌食になりそう。

 肉食系は、狩りに全力を尽くすからえげつない手も使うと思うの。だからエヴァは不測の事態に備えて、しっかりピーター様と気持ちの確認を怠らずラブラブイチャイチャすべきよ。


 交際は誤魔化せても、好意の行き先は案外誤魔化せないものよって靴屋のミリー二十八歳が言っていたわ。どうしても爪先がそっちを向くんですって。靴屋らしい言葉よね。


「わ、わたくしはどうすれば」

「常にお互いの気持ちを尊重し、伝え続けて信じ合うしかないわ」


 どうしたってすれ違ったり誤解があったり意図して不和を生み出されたりするから、信じあえる関係を築くのが大切だって近所の泣き黒子が魅力的なアニー、八十六歳が言っていたわ。

 邪魔者がいなくても、障害物がなくても好きってだけで不安がつきまとうんですって。だからどんなときでも信じ合える関係が大切らしいわ。


 ここまで全部、受け売りよ!


「気持ちを伝え合う…」

「そのための料理よ」

「繋がるのですね…!」

「ええ、好きな女が自分のために努力する、そんな姿が嫌いな男は特殊性癖よ!」

「そこまで言い切るほど…!?」


 貴族令嬢として刺繍は模範解答でしかない気がするのよね。嬉しいだろうけど予想できるというか。刺激が足りないわ。


 だからこそ、料理よ!



田舎町の住人達

・欲しがりビビアン 十三歳

~他人の持ち物は宝石の輝き~


・靴屋のミリー 二十八歳

~好ましい人に爪先が向くの~


・泣き黒子が魅力的アニー 八十六歳

~人間関係は積み重ねの信頼~



『宣伝』

プティルブックス様より

事故チューだったのに!

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