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16 ドウイウコトナノ!


 …なんで私、まだここにいるのかしら。

 私はにこにこ笑顔のお嬢様ことエヴァとお茶をしながら、庭園に咲き誇る花々を見ていた。

 何の花か知らないけど、いろんな種類が喧嘩せず一緒にいるって素晴らしいわね。所々に置かれた小人の置物とか物語性があって可愛いわ。多分童話のワンシーンを表現しているのよね。何の童話かさっぱりだけど。だって学がないから。簡単な文字しか読めないわ。


 …そうじゃなくて、本当になんで私、まだここにいるのかしら。

 この、スタンとエヴァ兄妹の住む、お城みたいなお屋敷に。


「ドウイウコトナノ!」


 朝起きてたくさんの人に介護され、違うわお世話されて身嗜みを整えられた。あれよあれよと着飾られ、ぽかんとしているうちにお嬢様、エヴァと朝の挨拶をして、彼女は授業があるからと席を立つ。

 帰ったらたくさんお話してくださいと頬を染めながら可愛らしい笑顔で離席したエヴァを見送り、残された私はやっと現実に追いついて叫びを上げる。


「何が?」


 実は一緒に朝食をとっていたスタンが微笑みながら首を傾げた。

 何がじゃないわよ!


「犯罪者を妹に紹介する神経どうなってるのよ!」


 本当にどういう神経しているの。


「犯罪者? 誰のこと?」

「私のことよ!」

「胸を張るな」


 こっちも実はずっといた。モーリスが相変わらず呆れたように呟く。だから正直に話しているのになんで呆れるのよ。

 憤慨する私を楽しげに眺めながら、スタンが言った。


「へえ、何をしたの?」

「え」


 何って…。


「禁じられた呪いの材料を取りに…学園へ不法侵入…」

「そうだね。でも何も持って帰っていないよね」

「の、呪いをしようと」

「未遂だね」

「ふ、不法侵入…」

「証拠は?」

「しょうこ!?」


 え、貴方たち証拠があって私のところに来たわけじゃないの!?


 狼狽える私を楽しそうに観察するスタンは、一枚のハンカチを取り出した。見覚えのある、私がお嬢様…エヴァに渡したハンカチ。そう、ゴワゴワの安っぽいハンカチ。


「妹が、お礼を言いたいからハンカチの持ち主を探して欲しいと僕に言ったんだ。僕は妹のお願いを叶えるため、善き魔女に依頼して【探し人の呪い】を掛けて貰った」


 さらっと善き魔女に依頼したって言ったけど、流石お貴族様。魔女への依頼は高額。そんなあっさり依頼する物じゃないわ。でもってそれって騎士団所属の魔女が犯人捜しに使う呪いじゃない?


「結果、辿り着いたのが君だった。それだけだよ」

「それだけだよ?」


 それだけじゃないでしょ? いろいろ思うところがあったから確認していたでしょう!?


「それだけだよ。ハンカチの持ち主が君だというだけで、君が学園に不法侵入した犯人かなんてわからない」

「ハンカチを受け取った場所を考えたらわかるでしょ!?」

「でも君、エヴァ以外には会っていないんだろう?」

「だからなに!?」

「エヴァが君を不法侵入者だと訴えない限り、君が不法侵入した事実は隠蔽されるんだ」

「…おかしくない!?」


 確かに目撃者が訴えなければ表沙汰にはならない。だが何故隠蔽する必要があるのか。


「だって君、何もしていないし。敢えて言うなら妹の恋愛相談に乗って乙女の恋を叶えたくらいかな」


 感謝している相手を訴えるわけがないだろ?


「だから君は、何もしていない。知られたとしても侵入罪で厳重注意くらいかな」


 自白したとしても、これといった実害が出ていないので厳重注意で終わる。


「な、な、な、ならなんで…同行願うって」

「何回も言っているだろ? 妹が君に会いたがっていたんだ」


 ややこしい!

 この男、わざとややこしい言い方したに違いないわ!


「さ、詐欺師…!」

「はは、僕は嘘をついていないよ」

「詐欺師ィ…! お前みたいなやつはいつか呪ってやるから…!」


 直接殴れないからには、この怒りを呪いに乗せてやる…!


「だからそれ犯罪だって」


 モーリスうるさい!



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