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15 同行願おうか(二回目)


「…そこまで貴方に話す、義理が無いわ」


 私は持ち上げていた椅子を床に置いて、腰に手を当てて仁王立ちした。顎を引いて胸を張る。


「ばれたら仕方がないから、抵抗はしないわ。騎士団に突き出すなら突き出しなさい」

「なんでこいつこんなに堂々としているんだ」

「一々煩いわねむっつり男」

「むっつりじゃない!」


 どうでもいいわよそんなこと。

 私はじっと、座っているのにこちらを見下ろし続けていたスタンを睨んだ。彼は優雅に足を組んだまま、私を見ている。

 相変わらず愉快そうに微笑むから、その顔に拳を叩き込みたくなる。


「そうだね…じゃあご同行願おうか」


 そう言って立ち上がり、私に手を差し出した。

 抵抗しないとは言ったけれど、おてて繋いで連行されるつもりはないわ。私は腰に手を当てたまま、つんとそっぽを向いた。スタンは気にした素振りもなく…むしろ楽しそうに、差し伸べた手を私の背中に当てて扉に誘導した。


 安宿から出て見上げた空は真っ暗で、すっかり夜も更けている。王都は街灯が明るくて星空が田舎ほど綺麗に見えない。代わりに強く輝く月が、夜空にぽつんと浮かんで見えた。

 促されるまま馬車に乗って、このまま警備団の詰め所もしくは騎士団の本部に連れて行かれるのかと思えば。


 城みたいな建物に連れて来られた。

 は?


 丁寧に洗われて綺麗なドレスを着せられた。

 はぁ?


 それでそのままぽいっと、綺麗な女の子の前に放り投げられた。

 はあ!?


 そこにいたのは萌葱色のドレスを着た、宵闇の髪のお嬢様。


 四日前、学園内で出会った…あの時泣いていたお嬢様。

 …スタンの妹だという、お嬢様。


「こんばんは。わたくし…エヴァと申します」


 白磁の肌を桃色に染めながら、照れたようにスカートの裾を摘まんでお辞儀をしたお嬢様。宵闇の髪を揺らし、星々をぎゅっと濃縮した輝く目をしたお嬢様…こと、エヴァ。

 安宿から比較できないほど大きなお屋敷に連れて来られ、洗われ着飾られ放り投げられた先に待っていた少女に、私はぽかんと口を開けたまま思わずスタンを見た。エヴァの後ろで優雅にお茶している男を見た。スタンは笑顔だった。何笑ってるのよ。


「言っただろう、僕の妹が会いたがっているって」


 嘘でしょこいつ本当にそれだけのために私を探していたっての!?

 どう調べても怪しい人間を家族が会いたがっているからって連れ帰るんじゃないわよ!!

 そこは通報しなさいよー!!


「まあ、今日は顔合わせだけ。遅い時間だからまた明日ゆっくり話そう」

「そうですね。お忙しい中わざわざ申し訳ありません。精一杯おもてなしさせて頂きますわ」

「待って私どういう立場でここにいるの?」


 和やかに兄妹の会話を進めないで欲しい。混乱したまま、私は滑らかな布の感触に戦いていた。自分の肌すら今までに無いほど滑らか。こわ。

 私の疑問に、ことりとエヴァの首が傾げられる。あ、似てないと思っていたけどその首を傾げる動作、兄とそっくりよ。


「どういう…わたくしの、お客様ですわ」


 私の素性を妹にどう説明したのよ!?

 優雅なティータイムを続行する男を睨め付けるが、彼は意に介さず優雅に紅茶を一杯しっかり飲みきった。

 その後、時間も時間だからと客室に案内され、ふっかふかの寝台に突っ込まれた。

 ふっかふかだった。

 嘘でしょこれが布団? 雲に包まれているかと思った。

 寝ていられるかと思ったのに、布団に包まれた瞬間、爆睡しちゃったわ。



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プティルブックス様より

事故チューだったのに!

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