141 新しい生活
本日三話投稿予定。
結果として。
お母さんと公爵は離婚しなかった。
チィッ!!!(強めの舌打ち)
だけど同居もしなかった。今の別宅に居を構え、公爵は本邸で過ごす別居を要求した。会えるのは半年に一回。それ以外で会いたいときはメイジーの許可を取ることが条件だ。
愛しているのは本当だけど、許せない気持ちも残っている。近すぎると感情的になってしまうから、距離を置いてやり直そうとお母さんが提案したらしい。
足を奪われているのにその判断。私のお母さんってば聖母だったのかしら。
慰謝料ぶんどって離婚した方が第二の人生始まると思うのだけれど、お母さんは公爵とやり直すことを選択した。
私は隙あらばお母さんに会おうと画策する公爵の前でシャドウボクシングをして威嚇する役になった。
お母さんは荒治療でも接触回数を増やした方がいいと判断したようだけど、公爵は私の影を見た瞬間逃げ出すくらい私に怯えていたから、顔を合わせて会話出来るようになるまでそれこそ十年以上かかりそうな気がする。
というか失礼ね。
アンタがしたことに比べたら私なんか全然たいしたことしてないわよ。
でもって公爵家の跡取りとして養子になった義弟のピーター様とは、わりとすぐ顔を合わせることになった。
金髪の、ちょっとぽっちゃりした男性。穏やかそうで、緊張して背筋を伸ばす様子が純朴で誠実で初々しい。
「ピーターです。よろしくお願いします。お義姉様」
「そのまま育って」
「えっ?」
「そのまま育って」
「は、はい…?」
そのまま育って。
お母さんに家政教育を行うため公爵家の別邸に頻繁に顔を出すエヴァと、後継者教育のため公爵と本邸で行動を共にするピーター様では同じ敷地内でも顔を合わせることはない。
だけど頃合いを見計らい、義母と義姉と交流を図るという理由でピーター様は別邸に現われる。
そのときもじもじしているエヴァとピーター様のやりとりは両想いの恋人同士とは思えないほど初々しくて七転八倒するほど痒かった。
でもいい。そのまま育って。
そのまま育って。
詐欺師なスタンみたいには絶対ならないで欲しい。
あの後、私とスタンはお付き合い期間ということでお互い納得して終わった。
報せを聞いたお母さんは首を傾げ、エヴァは一瞬嬉しげな顔をした後、はらはらと心配そうな顔をした。
「アンタお付き合いの意味分かってる?」
「結婚相手を見極める期間のことでしょ?」
「…それくらいの心持ちでないといけませんね…」
お母さんは本当にわかっているのかしらと言う顔をして、エヴァは覚悟を決めた顔をしていた。
なんなの。
陛下を豚に変えた影響からスタンは忙しくなり、部下たちと協力し合いながらも寝る間を惜しんで働いている。公爵がいないのは痛手なのではと思ったけれど、宰相や官僚たちはまともらしく、忙しいのは引き継ぎの今だけでその内楽になるといっていた。
ちなみに一年後の引き継ぎが面倒くさいので、執務室に檻を設置してそこに豚を放り込み、書類を見せながら仕事をしているらしい。あれやこれやと陛下の執務をひっくり返しながら粗を探してはつついているとか。
豚は人の言葉を話せない。反論の一つもできない状態で仕事の粗を息子に笑顔で指摘される。それが一年続く。
改めて思うが、スタン、性格が悪い。
『宣伝』
プティルブックス「事故チューだったのに!」書籍・電子書籍 発売中!
エンジェライト文庫「虎の威を借る狐になって復讐がしたい」電子書籍 発売中!
よろしくお願いします!
本日三話投稿で完結予定。
12:10分投稿。




