猫の日番外編
猫の日なので急いで書きました。
夜会前の隙間時間のお話。
「大変です! メイジーがまた私の代わりに呪われて…お猫様になってしまわれました!」
「わあご都合主義」
エヴァの細腕に抱っこされている一匹の猫。
ピンクゴールドの毛並みに臙脂色の目。まさしくメイジーを猫にしたような特徴。
「…猫? 山猫か?」
「山猫に似ているねぇ」
「フシャーッ!!」
興味本位で手を伸ばせば鋭い爪で引っかかれそうになる。
私に触るんじゃないわよ!!! と言葉が話せなくても怒鳴っているのが想像できる。
エヴァに大人しく抱かれているが、スタンとモーリスには牙を剥き出しにして威嚇している。
解釈一致。
スタンは一人で深く頷いた。
「呪いの詳細は?」
「時間が経過すれば解けるタイプだと説明書きが…」
「なんだその親切設計」
「教えてくれるなんて親切だね。どれくらいの時間が必要なのかは書いていないみたいだけど」
「ブミャー! ビミャー! シャァアアアアッ!!!」
「そうだね、親切にするなら最後まで親切にして欲しいね。中途半端は対処に困る」
「ミャゴー!!」
「心配しなくても今日中には戻るよ。姿を変える呪いは強烈だけど、長時間変える呪いはもっとねっちょり儀式が必要だ」
「お前なんで普通に会話してんの?」
なんとなくメイジーが訴えそうなことを予想して回答しているだけなので、実際メイジーがなんと言ったのか分からない。わからないがわかっていますよと言う顔で笑った。
「安心してメイジー。ロドニーを呼ぶほどのことじゃない」
「み…」
「あからさまにほっとしたんだが」
何度も世話になるのはいやなんだろうなぁ。
呪いを解くために撫で回されるのもいやなんだろう。
ここぞとばかりに触ってくるからね、あのセクハラ男。
「ねえメイジー、抱っこしてもいいかな」
「シャァッ!!」
「撫でるのも駄目?」
「シャーッ!」
「君を気持ちよくする自信はあるよ」
「ギャシャーッ!!」
「あ」
興奮したメイジーが目にも留まらぬ速さでスタンの手をたたき落とした。
「おいスタン大丈夫か」
護衛のモーリスが慌てて間に入ってくる。だけどスタンは心配ないと笑った。
「大丈夫、相手はメイジーだよ」
言って、叩かれた手を掲げる。引っかかれた痕のない、怪我一つない手を。
「噴火は早いのに思慮深い。爪を出して引っ掻かないで、たたき落としただけだったよ。肉球柔らかいね」
「ニィイイイイイイイ!!」
「表現しにくい音を出すな怖い」
「可愛いじゃないか」
憤慨したようにシターンシターンッと尻尾がエヴァのドレスを叩いている。ちょっと痛そうだが、お猫様と呼ぶだけあり、エヴァは猫が好きだ。尻尾の感触が嬉しそう。
スタンも猫は好きだが、あまり懐かれない。一度構うとしつこい所為だとエヴァに怒られたが、きっとメイジーに対してもそれが出てしまっているのだろう。
スタンは気に入ったらしつこい。
逃げていた猫が諦めて脱力するほど構い倒す。
メイジーは人語のわかる猫なのでしっかり対話を試みたが、メイジーなので没交渉だった。
しかしそれで諦めるスタンではなく。
猫パンチを食らいながら、しっかり抱っこすることに成功した。
ちなみに数時間後、ちゃんと元に戻ったメイジーは、エヴァに呪いを送り続ける相手に報復することを改めて誓った。
スタンはしつこい。
しつこい。




