身体を売る……パパ活……純真なJKは……
うちの学校で身体を売っている子がいるって聞いた。
「身体を売る」ってどう言う事だろう?
私は「身体を売る」と言う事が何か分からないのでZさんに訊いてみた。Zさんは厳しいけど面倒見が良くって、クラスでは「樒さん」とか「おかあさん」って呼ばれている。
「ねえ、Zさん。身体を売るってどう言う事ぉ?」
「あんたみたいな純真な子はそんな事知らなくていいよ。
そのまんま純真でいてよ」
「そんな事言わずに教えてよ。ねえ、ねえってば〜」
Zさんは困った様な表情をし、仕方がないかと言った感じで息を吐いた。
「本当に知りたいの?」
「うん」
「怖い話しになるよ」
え?
「身体を売るってのはね、腎臓とか心臓を売るの。
目の角膜だと一つ十万。腎臓は300万。肺だと600万。心臓は3000万だったかな」
ええええ!? 心臓? それって死んじゃうじゃん!
「何年か前に実話を元にした映画があったけど、それまであまりいいものを食べさせてくれなかったのに、ある日から美味しいものが出てくるの。
その子の心臓が売れる事になったから、それまで健康を害さない様に…ね」
嘘でしょ? 嘘だよね?
「実話を元にしたって言ったよね。
あんたは身体を売っちゃダメよ」
うん、絶対売らない!
「美味しいものを食べさせてあげるって言われても、ついていっちゃダメだよ。来年から東京で一人暮らしするんでしょう? 気をつけないとダメだよ?」
うん、気をつける。おかあさん、ありがとう。
「もう一つ聞いていい?」
「なあに?」
「パパ活って、なに?」
Zさんは『もう、この子は…』といった感じで息を吐く。
「パパ活ってのはね、パパを喰い物にする事だよ」
「え? お父さん食べちゃうの?」
「豚を揚げたらトンカツ。鳥を揚げたらチキンカツ。じゃあ、お父さんを揚げたら?」
え? はわわわ……!
「低温でじっくり中まで火を通し、高温で表面をカラッと。
油を切ったらザクっザクっと食べやすい大きさに切って、付け合わせのキャベツと一緒にお皿に盛り付ける。
あとは豚カツソースをかける。お好みで胡麻とかカラシをつけてパックン」
そんな…お父さん死んじゃうじゃん!
「そうだよ。むしゃぶれるだけむしゃぶり尽くしたら、次のパパを探す。それがパパ活。
あんた、お父さんの事好き?
なら、パパ活なんてやっちゃダメだよ?」
うん、絶対しない!!
あたしはZさんにお礼を言って別れた。
その帰り、パパ活をやっていると噂の二人が話しているところに出会した。
「昨日オヤジと喧嘩しちゃって。思わず『臭えんだよ、テメエは』って言っちゃった」
「まあ、確かに臭いよな」
それはあたしも少しそう思う。
「でもよ、臭いモンって美味しいよな」
「違いない」
え? そう言えば餃子とか焼肉とか、ニンニクの効いた臭いヤツって確かに美味しい。
そう言えばあの「臭いモンって美味しい」って言ってた子の家、この前離婚してお父さんがいなくなったって言ってなかったっけ。
もしかしたら……
臭くなったお父さんって、いったいどんな味なのかな……
ラスト以外はほぼ実話。
「こんな世間知らずのアホが本当にいるの?」
→いるんです
作中に出てくるのは「闇の子供たち」です。
臓器売買の闇を描いた社会派の小説です。