いつも通りの国連安全保障理事会
8/8 国連安全保障理事会
ロシアによる稚内・根室侵略、総理搭乗のヘリ撃墜・首相官邸襲撃・地下鉄での毒ガス散布等を受けて緊急開催が決まった国連安全保障理事会。当初は8/7までに開催予定であったが、米露電話会談や日本国内の米軍基地からの報告のとりまとめ等があり、今日の開催となった。
「直ちにロシアは稚内・根室から軍を引き上げ、東京での一連の軍事行動も含めた行為によって生じた我が国の損失に対し、真摯に謝罪すると共に、賠償を求めます。」
ロシアの軍事行動を非難する提案の提出国であり、被害国である日本の国連大使「真砂光」は強い口調でロシア側に行動を求めた。
「我が国ロシアが一連の行動を行った事実は存在しない。全て我が国の品位を貶めたいが為のネオナチによる謀略である。ネオナチのウクライナ現政権を支持するがあまりに自身までネオナチとなってしまったことに気付けない日本に対し、深く残念な思いである。」
ロシア側の国連大使バシリー・ネベンシアは日本側の要求の一切を一蹴。それどころか日本をネオナチと事実錯誤も甚だしい発言を行った。
「むしろ日本に軍を派遣している英国こそが侵略者であり、我が国のせいだとすることで日本を植民地支配しようとしている。英国が帝国主義に回帰している証拠である。日本の同盟国米国は軍を出動させておらず、これこそがロシアが関わっていないという揺るぎのない証拠である。」
それどころか英国を帝国主義の侵略者だと罵倒した。これには流石の三枚舌も激怒した。
「我が国はニッポンと基本的価値観を共有し、友好国にある島国である!! ロシアの言う帝国主義の侵略者だという発言こそ根拠のないものである! 厳重に抗議し、即時撤回を求める!!」
英国のウッドワート国連大使が猛烈に反論。これを遮るように中国の国連大使が発言する。
「我が国としては極東地域が不安定化することは全く望まないアル。中国から見て日本とロシアは重要な国家アル。その二か国がいがみ合うのは好ましくないアルよ。両国だけでは話し合いにはならないアル。我が国は両国の仲介をする用意があるアルよ。冷静な対応を関係国に求めるアル。」
中国の張軍国連大使はどの口で言うとんねんという発言をかましながら両国に対話を促した。一方、米国は・・・
「我々USAは日本の主権内におけるロシアによる一連の軍事行動を最も強い言葉で非難する。軍事行動ではなく、話し合いでの解決を希求する。」
世界の警察はどこへと言わんばかりの弱腰であった。その後白旗野郎が発言したのだが、米英に同調する発言であったため目立つことはなかった。
「ロシアによる日本での軍事行動を非難し、即時撤退を求める決議に賛成の国々の挙手を求めます!」
採決では常任理事国では米国、英国、仏国は賛成。中国は棄権し、ロシアは反対。また拒否権をロシアがお約束通り行使したため安保理はいつも通りの機能不全に終わった。
「これでは安保理は何の意味がないじゃないの!!」
国連総会で日本の国連大使は唇を噛んだ。
「今頃私の故郷北海道は戦場となり、いつ日本という国がなくなるかも分からないのに私はこのニューヨークという安全地帯にいる・・・」
「大使・・・」
真砂国連大使に諸々の資料を提供する為に参加していた駐米大使の檜扇共平は悔しがる彼女に言葉をかけることが出来なかった。否、かける言葉がなかったのだ。
「・・・・檜扇大使、本当に米軍は・・・米国は安保条約を発動しないんですか?」
「・・・・そうだよ。昨日オースティン国防長官と会談したんだけど・・・それがホワイトハウスの総意だそうだよ。」
「さっきの安保理での弱腰態度はその現れですか?」
「だけど、ロシアがこれで終わるわけがない。おそらくロシアはまだ米国から得る物をまだ得てない。それを得るために行動を過激化させる。」
「そうなれば・・・沢山の日本人が死にます・・・よね?」
「間違いない。」
「なのに私達は安全地帯にいる。いるにも関わらず何の力になれていない。」
「真砂大使、自分を追い詰め過ぎですよ。鳴、ちょっと真砂大使を連れて外へ。少し頭をクールダウンさせてあげて。」
「は、はい!!」
泣きながら駐米大使の秘書に連れられ退室する国連大使を見送った彼は演説する他国の国連大使を見つめる。
「しかし、ウクライナ戦線を打破する為に我が国を窓口にしやがるとは・・・どうやら今回のロシアは相当優秀な参謀がいるみたいだな。しかし、安保条約が紙切れになった以上、どうなることやら。一応外務省からの指示は国防長官に伝えたけど、これもう分かんねえな。」
その後の国連総会では西側諸国にウクライナが非難決議に賛成。中国やインドは棄権、ロシア・ベラルーシ・北朝鮮・エリトリア等が反対した。
「もしかすると、今回のロシアの侵略は日本を普通の国にして、米国を解体するかもしれないな。その代わり、犠牲はデカすぎるが・・・。」
そう独り言を呟くと彼も退室し、日本大使館へと戻った。そして一連の出来事を本国に報告するのである。その時に野党が内閣不信任決議案や防衛相に対する問責決議案を提出し、この日の国会は完全に空転したことを知らされ怒りのあまり電話の受話器をテレビに投げつけ両方破壊したのだが、完全に揉み消されるのであった。
米国 ホワイトハウス
「大統領!! 何度も同じことは言わせないでください!! ジャパンを守らなければ合衆国は完全に瓦解してしまいます!! 既に世論ではロシアとの戦争はやむなしとする意見が増えてきております!! それも無視できないほどです!! ウクライナと違いジャパンは同盟国なのです!! ジャパンがあってこそのコリアであり、タイワンなのです!!」
「既に各機関からの知らせでは明日にもロシア軍が大規模な軍事作戦を行う可能性が高いと報告が入っております!! オースティン国防長官の言うようにジャパンは我が国の革新的利益を担う同盟国です。絶対に守らなくては!!」
「貴様らはどうしても核戦争がしたいのか!! したいなら勝手に独立でもなんでもしてからやれ! とにかく私はロシアとの戦争は支持しない!! 明日にも再度電話会談を行い、話し合いで決着させる!!」
「「なりませんぞ!!」」
一方のホワイトハウスでは大統領と国務長官・国防長官の押し問答が繰り返され、日露への回答が先送りとなっていた。
ロシア連邦 モスクワ クレムリン
「パトソール君、アメリカはなかなか回答を寄越さないな。」
「おそらく揉めに揉めているのでしょうね。であらば、奴らの現実をみて貰わなくてはなりませんね。とてつもなく強い目覚めを。」
そう言うと彼は一枚の書類を取り出し、大統領に署名を求めた。
「・・・・やれやれ、君は本当に恐ろしい奴だよ。」
「閣下には遠く及びませんよ。では、作戦を発動致します。」
「ああ。これでウクライナは我々の物となる。多大な犠牲は払うがな。」
「これも、愚かにもNATOを選んだウクライナ国民が負うべき責任でしょう。閣下が負い目を感じる必要はありません。もし追うのでしたら私パトソールが負います故。」
(続く)