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崩壊の帝国  作者: 東海鯰少佐
13/19

青森県沖での戦い

202X年 8月9日 日本海


 


「艦長、時間です。」


「うむ。いよいよアメリカの犬に制裁を下す時が来た。我が大統領、ウラディミール・プーチンチンは決断された。本艦はこれより巡航ミサイルにて三沢を攻撃する!!」


 


 


日本国 青森県 三沢基地 地下司令部


 


「敵の巡航ミサイルが接近しています!!」


「そんなことは分かっている。迎撃ミサイルを撃ち上げろ!!」


 


日米の共同使用基地である三沢基地では日米の対空ミサイル部隊が次々に迎撃ミサイルを撃ちあげた。米軍は本国の指示や許可が出ていない為に越権行為であるものの、自身の身を守るためには認められると判断して防衛戦に参加していた。しかし、全てを撃ち落とすことは叶わず、格納庫や滑走路に次々に着弾。一部が弾薬庫に直撃し誘爆。更に滑走路や格納庫に駐機していた戦闘機や民間の旅客機が被弾。三沢基地は一時的に基地としての機能を失ったが、事前に退避命令が出ていたことから人的被害は最小限に抑えられた。しかし、ウクライナでは民間インフラにも攻撃を行ったロシアのことである。三沢基地を狙った一部のミサイルが民間人居住地に着弾。市民にも多数の死傷者が発生した。その中には在日米軍の家族も含まれており、参戦を決断しないホワイトハウスに対して憎悪の念が在日米軍全体に蔓延していくことになる。


 


 


日本国 北海道 札幌駅


 


「せんそー反対!!」


「「「「「「「「「「「「せんそー反対!!」」」」」」」」」」」」


「勝手に戦争決めるな!!」


「「「「「「「「「「「「勝手に戦争決めるな!!」」」」」」」」」」」」


「戦争するなら今すぐヤメロ!!」


「「「「「「「「「「「「戦争するなら今すぐヤメロ!!」」」」」」」」」」」」


「戦争するなら今すぐ退陣!!」


「「「「「「「「「「「「戦争するなら今すぐ退陣!!」」」」」」」」」」」」


 


ロシアによって一方的に戦争状態に突入した日本ではこの日も相も変わらず左翼勢力は政府へのデモを行っていた。日本政府からは何時全国でJアラートが鳴ってもおかしくないとし、北海道と青森、東京には緊急事態宣言を発令。不要不急の外出を絶対に控える様に求め、必要最低限の業種以外の出社を控えさせるように緊急命令を出していた。また、ロシアが日本へミサイル攻撃を行う数時間前、


 


 


日本国 東京都 国会議事堂


 


「これより、採決に移ります!! 自衛隊の防衛出動に賛成の方の規律を求めます!!」


 


若葉政権は今の野党では何を話しても妨害工作しかしないと判断。見切りをつける形で朝の5時に国会を緊急招集。徹底的な秘匿により、自由国民党、公正党、浪速維新の会、国民党、政参党、NHKを粉砕玉砕大喝采する党等防衛出動に賛成する党だけによる採決を行った。無論結果は全会一致で自衛隊の防衛出動を衆議院で可決。参議院でも同様に可決し、これにより自衛隊は法的に問題なく動けることが確定することになった。可決された後、朝7時のニュース速報で知った野党四党は採決は無効であると主張したものの、賛成した各党は相手にせず、国会は閉会することに決定。これにより若葉総理は国会に縛られることなく思う存分作戦を行うことが出来るようになった。


 


 


日本国 東京都 市ヶ谷 防衛省


 


「取り敢えず国会でのいちゃもんは防げるな。さて、松島から航空隊を北海道へ向け進軍させるんだ。空中給油機を戦闘機の護衛で待機させ、途中で給油を行い一時的に喪失する北海道の制空権を確保。奴らのミサイル攻撃の後に行われる大規模侵攻を止めさせる。」


 


これを受け松島基地に進出していたKC-767が離陸。これに松島基地所属のF2戦闘機が護衛で、千歳から撤退したF15-Jが北海道の制空権奪還の為に離陸。一方、米空軍所属のF16は離陸していた機体を除き、大多数は三沢基地で待機しており、現在ロシアの大規模攻撃が確定的になったことを受けて上げれる機体を可能な限り上げる手配を進めているところであった。


 


 


日本国 北海道 札幌駅


 


「せんそー反対!!」


「「「「「「「「「「「「せんそー反対!!」」」」」」」」」」」」


「若葉響は卑劣な独裁者!!」


「「「「「「「「「「「「若葉響は卑劣な独裁者!!」」」」」」」」」」」」


「戦争する若葉は今すぐヤメロ!!」


「「「「「「「「「「「「戦争する若葉は今すぐヤメロ!!」」」」」」」」」」」」


「戦争する若葉は今すぐ退陣!!」


「「「「「「「「「「「「戦争する若葉は今すぐ退陣!!」」」


「んにゃ? なんだありゃ?」


 


戦争中にも関わらず退陣を要求する左翼勢力の頭上にロシアからの死の贈り物が届こうとしていた。一斉にJアラートが北海道・青森にて鳴り響き、市民たちは恐怖の渦中に引き込まれることになる。


 


「み、ミサイルだ!!」


「キャー!!」


 


大統領の命令に従い、8時15分に、一部は若干早くに発射してしまう些細なミスもあったものの、ロシアの先制攻撃は日本海に展開している原子力潜水艦や稚内・根室・樺太・国後島に展開している地上軍によって発射された多数の巡航ミサイルによって行われた。宇宙航空自衛隊の千歳、三沢。海上自衛隊の大湊、八戸、それに加えて日米のレーダーサイトが攻撃され、一部が京都の経ヶ岬へも発射され迎撃ミサイルが撃ち落とした物を除き次々と着弾。またロシアは日本人の戦意を削ぐために民間インフラへも攻撃を実施。北海道の中心であるJR札幌駅や小樽市の石狩湾新港火力発電所、道南の中心JR函館駅等にもミサイル攻撃を実施。多数の民間人の死傷者が発生。また発電所が攻撃されたことで北海道全体がブラックアウト。暑い八月に電気がなくなった北海道では電力不足によって多数の戦争関連の死者が発生することになる。


 


 


ロシア連邦 モスクワ クレムリン


 


「作戦の第一段階である日本へのミサイル攻撃は成功。千歳、三沢は機能を停止し、北海道の制空権を確保致しました。しかし、松島から航空隊が接近しているとの情報があり、本州の制空権確保は厳しいとのことです。」


 


クレムリンでは日本侵攻の途中経過を国防相であるショイゲから受けていた。


 


「そうか。ではショイゲ君、大間原発、六ヶ所村再処理工場への空挺降下作戦は中止するように。その部隊を北海道の空挺降下作戦に振り向けろ。」


「かしこまりました。」


「そう言えば、海軍は青函トンネルを破壊すると意気込んでいると聞いたが?」


「黒海ではモスクワを沈められており、ロシア軍における影響力が低下していますからね。挽回したいのでしょうね。」


「パトソール殿のおっしゃる通りです。私としては無謀だとして中止を要求したのですが・・・。」


「好きにさせてやりたまえ。成功すれば君の手柄、失敗すれば独断行動として関係者を私が粛清しよう。」


「ははっ。」


「では、作戦の第二段階へ移行する。稚内の空挺師団を急ぎ降下させよ。日本の航空戦力が舞い戻る前に都市を抑えてしまうのだ。」


 


 


日本海 青森県沖 ロシア太平洋艦隊旗艦ヴァリャーク


 


「いよいよ我々海軍の汚名返上の機会がやって参りましたな、艦長。」


「ああ。黒海の連中のせいで我々水上艦乗りはどこに行っても馬鹿にされる。見た目は強いが中身は張りぼてのロシア軍の恥さらしとな。だが、それも今日で終わりだ。本艦隊はまもなく津軽海峡へ差し掛かる。青森県側の青函トンネル関連施設にミサイル攻撃と艦砲射撃を加え、ヘリで特殊部隊を送り、青函トンネルを水没させる。そうすれば北海道と本州を完全に分断することが出来、北海道は孤立する。既に先の先制攻撃で大湊の艦隊は全滅したとのことだ。そして八戸には灰燼に帰す被害を与え、三沢は沈黙。我々の攻撃成功の後に潜水艦隊で津軽海峡を完全に封鎖する。副長、どうかね?」


「実に素晴らしい作戦であります!!」


「そうであろう! さあ、まもなく宴の時だ! 事前の祝杯と行こうではないか!! 士官下士官問わず全ての乗組員にウォッカを配る! 体を温めておくのだ!!」


「流石艦長!! 一生ついていきますぞ!!」


 


完全に慢心しているロシア太平洋艦隊であったが、一方で彼らの頭上へ復讐心に燃える航空機が迫りつつあった。


 


 


日本海 青森県沖 アメリカ空軍


 


「司令部からは松島へ向かえとの指示だが、俺達の基地が攻撃され、同胞を一方的に殺されたっていうのにおめおめと生きて帰れるかよ!!」


「戦争を未然に防ぐ。ジャパンを守ることがUSAの国民を守ることになる。それを果たせなかった俺達に生きて帰るなんて未来はねえ!! 行くぞ!! 相棒!!」


 


太平洋での訓練飛行の為に離陸していた三沢基地所属のF16戦闘機二機は帰還の為に三沢へと向かっていたがその道中でロシアによる三沢基地攻撃の知らせを受けた。基地からは空自の松島へ向かえと指示を受けていたが、彼らの眼下に移ったのは攻撃を受け穴の空いた滑走路や無残に破壊された格納庫や空港ターミナル、駐機したまま大破した民間機、そして基地を外れて市街地に着弾して炎を上げる民間人居住区であった。


 


「それに、俺の家族を殺した、ロシアのヤロウが悪いんだよ!! よくも民間人を! 俺の妻を!! 息子を!!」


 


この兵士は眼下に映った燃え盛る民間人居住区で無残にも崩れ落ちた自身の住宅のあるエリアを見てしまった。本当に自分の家族が亡くなったかは分からないものの、状況的に亡くなったと判断して良いものだった。


 


「あれか?!」


 


必死に大海の中で敵を探していた彼らは津軽海峡を目指すロシア太平洋艦隊を視認。


 


「巡洋艦1、駆逐艦3、か。それなりの艦隊だな!!」


「狙いはどこだが知らねえが、進路は津軽海峡。なら俺達の敵に決まってんだろうが!!」


 


最初から生きて帰ることを想定していない彼らは手持ちの武装だけでロシア太平洋艦隊に特攻を仕掛けることに決定。搭載していた武装は空対空ミサイルや機関砲のみであったが、後に続く者達の先駆者となる為、何より守りたいものを守れなかったことへの悔しさが彼らを突き動かしていた。


 


「狙うはあのでかぶつだ!!」


「行くぞ!!」


 


二機のF16は挟み込むように巡洋艦ヴァリャークへ突撃。空対空ミサイルを発射。本来航空機に向けて発射するミサイルであるが、半ばやけくそで使用。まっすぐ飛翔したミサイルの内1発が艦橋を直撃。ヴァリャークの司令部要員はウォッカに酔ったまま亡くなることとなり、指揮系統が大混乱。そしてそれに続くように前部主砲と煙突に向けて機関砲をばらまきながら特攻。まさか米軍機が攻撃してくるとは思わなかった護衛の駆逐艦は対応が遅れ、迎撃の暇がなく、肝心の巡洋艦は乗員が酔っ払っており迎撃の火器に電源すら入れていないと言う有様であった。


 


「アメリカ合衆国、バンザーイ!!」


「ジャパンと合衆国に栄光あれー!!」


 


残された機関砲の銃弾と航空燃料が引火し、ヴァリャークでは大規模な火災が発生。更に前部主砲の弾薬が誘爆し更に火の勢いが強まり、駆逐艦隊はヴァリャークの放棄を決定。旗艦であったヴァリャークを自沈させようとするも、乗員が酔っ払っており対応が出来ず、ミサイル攻撃で艦橋要員が全滅しており、やむなく生き残りの乗員を救出して撤退。その後、仙台空港を離陸して日本海の哨戒活動を行っていた八戸基地所属のP3-Cに発見され、舞鶴から北上中の護衛艦隊と第二管区海上保安部に通報。酒田、秋田海上保安部から巡視船・巡視艇が出動し、海自の哨戒機部隊や空自の戦闘機部隊の護衛の元で消火活動を実施。その後大湊から酒田港に退避させていた「しらぬい」、「まきなみ」に曳航され酒田港に入港。ロシアの巡洋艦を日本は鹵獲することになった。


 


 


「鹵獲ならぬ露獲ねえ。シルバー、あれどうするの? 酒田じゃ整備とか無理じゃん。舞鶴に持って行かないと。」


「まさか、あえて我々に鹵獲させることで戦力低下を狙った作戦・・・・なのか? まあ、事前に大湊の最新鋭艦の「しらぬい」やそれなりに新しい「まきなみ」を退避させていたのと、代わりに旧式の「あぶくま」、「とね」を停泊させていたから戦力低下は最低限に抑えられたが。」


「あぶくま型はもう使い物にならないおんぼろ艦だし、これを機に廃艦にしてもがみ型で置き換えちゃえば良いよ。むしろもがみ型増備の予算の理由付けに出来るし、事前に人員は退艦させてたから人的損失は皆無だし。まあ、退避させていた「しらぬい」と「まきなみ」も整備が必要だから整備がてら鹵獲した艦を曳航して舞鶴に向かって貰うよ。護衛には「せんだい」と厚木の哨戒機、小松の15を付けるよ。まあ、仕方ないね。」


「響、お前は悪魔か何かか? こうしている間にも国民に死者は出てんだぞ?」


「シルバー、これは戦争だよ。感情を殺さないと戦争なんて出来やしないよ。どうなったとしても僕の政治生命は終わりなんだ。なら、出来る最善の手を打って終わらせようじゃないか。その為に英国と手を組む用意を進めている。今頃各国で条文の検討を行っている頃かな? まあ、姉さんには頑張って貰わないと。」


「ところで何で松葉官房長官はいないんだ? 立川か?」


「そうだよ。この防衛省だって攻撃されてもおかしくないし、立川には災害関連の為の施設があるしね。僕に何かがあれば松葉さんが総理だし、それに。」


「?」


「敢えて僕と距離を置かせているんだ。」


「はあ・・・。」


「総理!! 大変です!!」


「どうやらおしゃべりは終わりみたいだね。」


 


(続く)



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