表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊の帝国  作者: 東海鯰少佐
11/19

開戦前夜

米国 ホワイトハウス前


 


「バイデンデン政権と議会は!! 速やかにジャパンに合衆国軍派遣を決定しろー!!」


「これ以上ハゲの好きにさせるなー!!」


「腰抜けのホワイトハウスと議会は何をしている!! 同盟国を見捨てるなー!!」


「ウクライナとジャパンに兵を送れ!!」


 


ロシアによる日本侵攻を受け、アメリカ国内では反ロシア感情が高まっていた。先のウクライナ侵攻を受け元々高まっていたこと、更にバイデンデン政権が有効な対応が出来ていないことに退役軍人を中心とする勢力が猛抗議。更にそこに前大統領のドナルド・スペード氏が援護。


 


「私が大統領であったならば、ロシアは既に滅んでいただろう。だがバイデンデンは腰抜けだ。それこそロシアと内通しているかもしれない。だからこそプーチンチンの指示で私を亡き者にしようと家宅捜索を行い、難癖をつけて逮捕しようとしている。我々はホワイトハウスを目指すのだ!!」


 


ドナルド・スペード氏の支持者がこれを受けてホワイトハウスへ殺到。中へ入れまいとする警察と支持者が衝突し大混乱。この様子は全世界に報道され、混乱する合衆国としてその醜態をさらすことになる。


 


「バイデンデン大統領はロシアとの和平をウクライナとジャップに働きかけろー!!」


「戦争をして私腹を肥やそうとするペンタゴンとドナルド・スペードに負けるなー!!」


「戦争反対ー!!」


 


一方で反スペード派やバイデンデン政権支持者がロシアとの戦争に反対し、経済制裁解除を主張し50の州から成る合衆国は分裂の兆しを見せ始めていた。


 


 


在米ロシア大使館前


 


「これでも食らえこのハゲども!!」


 


同じころ在米ロシア大使館前では同じくロシアによる日本侵攻に抗議するデモ集会が行われていた。そんな中、一部のデモ隊がプロジェクターを用意。ロシア大使館をスクリーンに見立てて日本の国旗でライトアップするという鬼畜の所業に打って出る等割と好き勝手なことをやっていた。


 


 


在アイルランドロシア大使館門前


 


「ブラボー!!」


「いええええええい!!」


 


かつてウクライナ侵攻を受け抗議するデモ隊のトラックによって門を破壊されたアイルランドのロシア大使館。今回の日本侵攻へのデモでもトラックに突っ込まれ折角修理した門が再び大破。


 


「出てけ侵略者共!!」


 


更に一部のデモ隊が爆竹を中へ投げ入れる等過激化。しかも見張っている警察が全く咎めない上に政府が、


 


「ロシアが日本やウクライナに侵略しなければ起こらなかったことだ。我が国は貴方と違って民衆の意見によって政治が行われる成熟した民主主義国家である。民衆の民意を我々が弾圧することは出来ない。嫌ならアイルランドから出て行けばよいだけの話。彼らは大使が本国へ帰れるように人道回廊を構築し、お目覚めの目覚ましを鳴らしたに過ぎないのだ。」


 


と半ば公認。無論ロシア大使館は抗議したが完璧にスルーされ先の米国と比較するように全世界に報道。ブリカスと殴り合ってきた奴らは違う、アイリッシュジョークの神髄と言われるようになる。


 


 


日本国 北海道 札幌駅前


 


「戦争するなら今すぐ退陣!!」


「独裁の若葉響を引きずりおろせ!!」


「憲法違反を許すな!!」


「ロシアとは今すぐ停戦!!」


「憲法違反の自衛隊は今すぐ解散!!」


「軍事費は全額教育費に変換!!」


「戦争するなら殺される方がまし!!」


「憲法九条の精神で今すぐ降伏!!」


 


等の侵攻されている当事者日本では左翼勢力が若葉政権に猛抗議。更に許可されていない公道を占拠し、北海道警に余計な負担をかけさせるなどロシアの侵略を手助け。全世界に米国と同じように醜態をさらす結果となる。一方で若葉総理は防衛省からテレビ番組に出演。近いうちにロシアによる大規模侵攻がある可能性があるとし、いつJアラートが鳴ってもおかしくないとして、全国民に警戒を呼び掛けた。しかし、左翼勢力にはその想いが届くことはなく国会では野党側が松葉官房長官に対する問責決議案を提出することで正式に合意。どこまで行っても左翼は左翼であった。


 


 


日本国 市ヶ谷 防衛省


 


「どこまで行っても左翼は左翼か。松葉さん、例の策を実行します。関係者に周知を。」


「本当にやるのかい?」


「こうでもしないとあらゆる手を使って奴らは妨害してくる。先手を打たないと闘わずして負けるよ。」


「先手を打つ。そう言えば総理は防衛相時代に護衛艦隊の英国派遣、航空自衛隊戦闘機部隊の入間・横田後退、総理になってからは関係閣僚の派遣。常に先手を打ってきてたね。」


「ああ。だからこそやる。」


「それじゃあ、行って来るよ。」


「頼みますよ松葉さん。」


 


退室した官房長官と入れ替わりで外務省の官僚が入って来る。


 


「総理! カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに派遣した閣僚達からの報告書が届いております。」


「うむ、では拝見するとしよう。」


 


官僚から報告書を受け取った総理は内容に目を通す。


 


「中々好感触だな。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはイギリスの従属国。宗主国の英国が受け入れれば自ずと彼らも賛同するだろうな。」


「左様ですな。」


「それで、姉さんからはまだ報告はないのか?」


「それにつきましては此方を。」


「どれどれ・・・はははは、これは一本取られたな。僕からの案に北欧の二か国を加え、七か国体制でスタートしたい、更に名称案も示してくるとはな。それも受け入れればこれら以外の国々にも根回しをすると来たか。」


「如何するので?」


「ここは英国の顔を立てるべきだろう。何なら提案国は英国とし、我が国はそれに招待されたという形にしよう。早急に返答せよ。君達は文章を作るのは得意だろう。無礼のないようにな。」


「かしこまりました。」


 


外務省の官僚と入れ替わりに防衛相が入室する。


 


「おお、シルバー。ロシアに動きがあったのか?」


「ああ。諜報部や米英からの機密情報だ。ロシアは明日8時15分に北海道・青森に大規模な軍事攻撃を行うとのことだ。」


「8時15分・・・明らかに狙った数字だな。そんなことはまあいい。明日の0時には上がれる航空隊は全て離陸し、松島や仙台空港に退避する。それと、作戦を煮詰めるときに決まった給油機や空中管制機は百里に到着したな?」


「それは問題ない。また松島や百里の防空体制を強化。JRには自衛隊の物資輸送を最優先とし、明日は始発から全列車を運休にするとの確約も得ている。また札幌市交通局からは駅をシェルターとして開放するとも。」


「そこまで手を回してくれたか。核シェルターがない以上は地下鉄の駅を使う他ないからな。それとアメリカはどうだ? やはり動かないか?」


「横田の司令官から本国から回答が来ない故動けないとのことだ。だが。」


「だが?」


「一部の兵士が米軍を装備品ごと脱走・・・除隊し、義勇兵として参戦したいとの申し出が相次いでいるとのことだ。その中には第七艦隊も含まれていると・・・」


「何?! 第七艦隊が?! まさか丸ごととは言わないよな!?」


「そのまさかだ。何なら横田の司令官自ら除隊して日本と共に闘わせて欲しいと言ってきてる。」


「そうか。どうやら彼らも腹を決めたんだな。核戦争を回避しようとロシアに譲歩しようとして同盟国を見捨てようとする本国に完全に見切りをつけた、ということか。」


「だが、扱いをどうする? 自衛隊に編入するのか?」


「・・・・・・・・。」


 


暫し思案する総理。


 


(まさか在日米軍が丸ごと本国を見捨てるとは思っても見なかったんだ。戦力不足や弾薬不足にあえぐ我が国としては一騎当千の兵であるアメリカ軍が味方に付くことは非常にありがたい。だが、本国の命令を無視した、シビリアンコントロールから完全に逸脱した行動。この戦争に勝利出来たとしても、戦後に米国との関係が悪化するのは避けられない。ただでさえ英国との間で交渉を進めているのだ。当初の想定以上に関係が悪化することになろう。それに核兵器を搭載した原子力潜水艦は実質的に使えないだろう。あくまで発射ボタンを握っているのは大統領だしな。物理的には使えてもリスクが大きすぎる。だが、ここで彼らの熱意を見捨ててしまえば我が国の国民が多数殺される。回避できたのにそれを取らなかったのでは僕は西田以上の無能として後世に名を遺すことになろう。しかし、姉さんにお願いして駐米大使宛に送ったアレがここで効力を発揮するとは。となればあの人も一枚噛んでいるとみるべきか・・・)


 


「自衛隊には編入しない。指揮系統や言語が異なる以上、受け入れに時間がかかろう。」


「じゃあ日本単独で戦うって言うのかよ!?」


「彼らは一時的に日本に派遣されている英国軍の指揮下に入れる。同じ英語圏の国家同士の方が気持ち的に楽だろう。その後については追々考える。横田の司令官、そして英国軍の日本派遣軍司令官、更に英国本国に伝えよ。」


「おお!!」


「そして第七艦隊も北海道へ向け出撃させる。日英連合艦隊はこれより北海道を目指す!!」


 


 


米国 ペンタゴン


 


「国防長官、よろしいのでしょうか? ジャパンの部隊が勝手に動いていますが?」


「ああ。これも決断出来ない大統領が負うべき責任だ。ここでジャパンを見捨てることは合衆国の完全なる崩壊を意味する。ここで彼らを動かすことで完全な崩壊は回避出来る。崩壊そのものは避けられないが。」


「・・・・国防長官、あまり意味がよく分からないのですが。」


「分からなくていい。今は水面下で動いているのだからな。そんなことよりも彼らへの情報提供を欠かすなよ!!」


 


様々な思惑が渦巻きながら日露両国は開戦の日を迎えようとしていた。


 


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ