その9 JKは湖を渡る
バルルルルルル……
ポセイドン号を走らせて、ツタを手に入れた山川空は湖畔に戻り貝殻のネックレスを作ろうとして……諦めた。小さい穴をあけないとネックレスになりようがないからである。
「ふいー。たこ焼きくるくるするやつとか落ちてないかなあ。ああいうので穴あけないと無理だ」
せっかくツタを取りにいったのになぁと、ツタを引っ張ったりしながら湖のほうを眺めていると……
ザバババババババ……
湖を割り、悠々と、巨大なワニに乗って、マンドラゴラが帰ってきた。
「退治したぜ、ほら乗れよ」
「送っていくワニよー」
「おおお!」
感嘆の声を上げる。
無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいし、しっかりと道が開けたことにも感謝している。
ザバババババババ……
南へ南へと向かう、マンドラゴラと山川空を乗せた巨大ワニ。
「だから結局バフ次第でどうにでもなるわけだ」
「ほえー」
マンドラゴラの、戦いの自慢話を聞きながら山川空はバフだのデバフだのって言葉を覚えながら空を眺めた。
太陽はさんさんと照っていて、ふと下を見れば湖の水面はキラキラと輝いている。
もう、はっきり言えば……ウトウトしていた。
「おい! 寝ようとしてるだろ!」
「いやいや、寝ようなんてまさかまさか」
「zzzみたいな感じなってるから! zzzって!」
「zzz」
「ほら! やっぱりなってるじゃねえか! せっかくの土産話なんだから、聞くのがスジってもんだろ!」
「もうすぐ着くワニよ~」
巨大ワニの背中は心地いい。日本にいたころは、父の車がそうだった。
山川空は父の車に乗ると、その揺れに負けていつもグッスリ眠っていた。助手席に座った時は父から、助手席の人間は起きてるのがマナーだと言われたが、そんなことは関係なかった。
揺れが心地よいのだから仕方ない。
そして山川空は……
「え? どこ?」
目が覚めると、監獄の中にいた。