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その8 JKは時間を持て余す

「さて、暇だなあ」


 マンドラゴラたちが湖をザババババと突き進んでから、小一時間ほど経っている。

 スクワットをしっかりやった山川空は、ついでにもっとエクササイズするか……? と悩んだが、やめておくことにした。


「こういうのって、徐々にやっていかないとねー。初日にやりすぎて、三日で辞めちゃうパターンあるからなあ」


 山川空はこれまでも、ダンスだったり、スケボーだったりと色んなものに手をだそうとして、初日に頑張りすぎてそのあと燃えカスになっていくパターンを幾度も体験していた。

 湖は、巨大ワニがついさっきまでそこに居たとは思えないぐらい静寂で、のんびりとした時間が過ぎていく。

 足先だけ湖につけてチャプチャプさせながら、マンドラゴラたちが今どうなってるのか思いを馳せる。


「マンドラゴラが戦うって、あのサイズ感だったら可愛い戦いになりそうだなあ」


 ぬいぐるみが戦ってるかのようなファンシーなところを想像して、山川空はふふふ、と笑った。


 一方その頃。

 湖上では、人型になったマンドラゴラと淡水クラーケンが戦っていた。


「きしゃあああああああ!」


 そう叫ぶと、クラーケンの10本脚の先におぞましい顔が出現していく。


「呪い持ちかよ! めんどくせえなあ!」

「気を付けるワニよ! あれに噛まれたら、一生成仏できずに魂が宙を舞う呪いにかけられるでワニ!」

「合点承知だよ! ワニ公は下がってろ、体がでけえから的にされちまうぞ!」

「ワニ!」


 巨大なワニはスーっと距離を取る。

 力勝負じゃない、かすり傷でも致命傷を負ってしまう戦いには巨大さはただフリなだけだ。


「食らうイカよ」

「ああ、食らってやるよ。イカをな」


 10本の、いや、10体のおぞましい何かがマンドラゴラに向かって放たれる。

 水中から、あるいは真っすぐ、あるいは空中から、右から左から、あらゆる方向から呪いの吐息を漏らしながら近づく顔に、マンドラゴラはスゥゥと呼吸をして一気に吐き出す。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


 マンドラゴラの死の叫びで、ビリビリと動きを止めるクラーケン。

 ほんの一瞬。だが、その隙を見逃さない。


「おせえんだよ!」


 マンドラゴラが手にしている剣が一閃、また一閃と輝くたびに、おぞましい顔が砕けていく。

 まるでダンスかのように、くるくると回るマンドラゴラに巨大ワニは見とれてしまう。

 10本全て砕いた後は、クラーケンを真っ二つに叩き切るのみ。

 マンドラゴラが水上を駆け抜ける。


「水上が走れるイカか!?」

「バッキャロー。マンドラゴラは沈まねえ」


 クラーケンの眼前で水面を打つ。爆発したかのように水が飛び散り、クラーケンの視界が一瞬奪われる。

 しかし、切られた脚はもう復活しているのだ。呪いなどなくても、捕まえて圧死させてやる。

 クラーケンは10本の脚を水しぶきの向こうに解き放つ。

 だが、そこにマンドラゴラはいなかった。


「そ、そこにいたはずじゃなイカ!」

「こっちだよ」


 そこは、天。

 空高くから剣を立てて落ちてくるマンドラゴラ。


「はじき返すしかなイカ!」


 クラーケンはそれを10本脚で迎撃しようとするが……


「悪いな。とっくにかけてんだよ。切れ味を1000倍にするバフをな」


 マンドラゴラを阻止しようと迫りくる10本脚が、彼を捉えることはついになかった。


「これでフィニッシュだ」


 一方その頃、湖畔で山川空は貝殻を拾っていた。


「おおお、あるもんだなあ。貝殻。わ、これ綺麗だ。こういうの、集めるだけ集めて何年か経つとゴミになったりするんだよねえ」


 この湖には波があるので、波にうたれて砂で摩耗され、キラキラ光る貝殻や石がいっぱい落ちているのだ。


「なんか、紐とかあったかな。ネックレスでも作ってみるかね。貝殻のネックレス」


 ゴソゴソとリュックの中を探し、そういえば荒野にある岩に強靭なツタが茂っていたのを思い出し、山川空はポセイドン号を走らせてツタを取りに行く。

 すべては、貝殻のネックレスを作りたいがために。

薄いバトルが展開され始めた……

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