その27 JKは戻る
「それって、絶対に結婚しなきゃいけないってこと?」
「結婚しなきゃいけないというか、自動的に結婚ということになるね。私の故郷は、帰る時に一人じゃないといけないんだ。誰かを連れて帰る時は、結婚するときなんだよ」
「ナニその糞みたいな風習!」
「誰も連れて行ってはいけないんだよ。閉鎖的な故郷でね。そこに誰かを連れてくると言うのは、すなわち身内にするか、死あるのみ」
「こっわ!」
そうなると圧倒的に話が変わってくる。一緒に故郷へ飛ぶのはリスクしかない。やはりいちかばちか、自分だけどこかに飛ばしてもらった方がいいのか。
山川空は決意する。
「よし、私だけ飛ばしてください!」
「ふむ。どこへ?」
「えーっと、私が居た世界へ!」
「そこがどこかわからないが、君がそこをイメージしてくれたまえ。そこに飛びますように、と私が祈る!」
「はい!」
「祈るよ!?」
「はい!」
「いいね?」
「はい!」
「いくよ?」
「はい!」
「いっちゃうよ?」
「早く!」
「やあ!」
ほんの一瞬、目の前がチカっとした気がした。
「ここは……」
自分の部屋だった。日本の、山川空の住んでいた家の、山川空の部屋だったのだ。
「戻った! 戻ったああああ!」
しかし、色々問題はある。どのタイミングに戻ったのだろうか。自分が異世界へぶっ飛んだすぐ後? それとも異世界で過ごした時間は過ぎてる? わからなかった。
そして、気づく。
「っていうか、ポセイドン号は?」
ポセイドン号を異世界に置いてきてしまった。
「いっかーん!」
山川空は、ポセイドン号を取りに異世界へどうにか戻ろうと、もう一度家を飛び出した。
「あれ? あんたもうキャンプから帰って来たの?」
母からのそんな言葉を背中で聞きながら。




