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その16 JKは目覚める

「ポセイドン号!?」


 バルルルルルルルルル……


 この音は、どう考えてもポセイドン号のエンジン音だが、とはいえ何故こんなところで? 誰が運転を?

 山川空はまだ数日しか別れてないがやけに懐かしく聞こえるエンジン音に耳を澄ませる。

 

 バルルルルルルルルル……


 走っている。走り回っている。

 だが、エンジン音は聞こえるものの、ポセイドン号は姿を現さない。音から察するに、山川空のすぐ脇を走る瞬間もあるのだが、目には見えない。


「くそー。ポセイドーン! ここだよー!」


 ポセイドン号に声が聞こえるわけがない。聞こえたとしても反応できるわけがない。ポセイドン号は原付バイクだからだ。

 でも、ポセイドン号はここにいる。確実にここに来てくれている。

 少しだけ不安になるのは、幻聴が聞こえてるんじゃないか疑惑である。


「うーん……これ、もしかしてぶっ壊れ始めちゃってたりしないかな。私が。困る! それは困る!」


 ドタバタジタバタとあがくが、何も起こらない。

 ずっと聞こえるポセイドン号の走る音は、まるで山川空を探しているようで、すっと涙が流れてくる。


「ポセイドン号……、私はここだよ」


 疲れて声も出ない。

 だが、その声に、ポセイドン号がうなりを上げる。


 バルルルルル! バルルルルルルルルル! キュルルルルルルルルルルル!


 キュルル?

 なんだろう、横滑りしてるみたいなこの音は……。

 そう山川空が思った瞬間、クタァとした時計の一つが爆発音と共に粉々になる。


「ポセイドン号……!!」


 粉々になったそこに現れたのは……ポセイドン号ではなくて見知らぬ原付バイクだった。


「……え? な、なに!?」


 ポセイドン号とは全然違う原付バイク。

 そしてそれに乗っているたのは、全然知らないオジサンだった。


「誰!? ちょ、誰!? 思ってたのと違う! 誰!?」

「がいhgにうぇr@おじぇぎあrgんjdふぁいhpがwる!!!」

「ぎゃあ! ナニ言ってるのかさっぱりなんだけど!」

「ん、ん-ん-、あーあー、これでどうだ!」

「わかった! 言葉はわかった! わかったけど、誰!?」


 おじさんは上下パッツパツのジャージを身にまとい、たなびく虹色のマフラーと巨大アフロで髭モジャでガリガリだった。

 自分を指さし、こう叫ぶ。


「君を助けに来たぞ!」

「いや、だから誰!?」

「ここは危険だ。君をすぐに連れ出さなければ」

「それは嬉しいけど、誰!?」

「苦労したよ。まさか、時の狭間に閉じ込められているとはな」

「ここ時の狭間っていうんだ。すごい怖そう。もういいや、誰でも」


 ガリパツおじさんが指をパチンと慣らすと、さっきまで何かに挟まれて動けなかった山川空が急に自由になる。


「わ、わ、なになに?」

「君の体とこの空間はそもそもの術式が異なる。だから身動きが取れない。ブルーレイをDVDプレイヤーで観ようとしても、それは読み込めないだろう?」

「え、うん。え!? DVDとか知ってるの!?」

「そりゃそうさ。君と同じ、はぐれ者だからね」


 サムズアップするガリパツおじさんに、山川空もサムズアップを返した。

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