その12 JKは仲間を増やしたい
「じゃあ、山川空。お前がいるその牢屋は俺の友達がいたところなんだが、何かメッセージ的なものは残されてないか?」
「え、メッセージ……? 多分、見当たらない、と思う……」
「ちょっと前から友達が返事しなくなったんだ。多分、ここから出れたのか、あるいは……」
「ううう……」
あるいは、の先が聞きたくなさ過ぎて困る。
死刑、的なやつだったらどうしよう。自分がそうなっても怖いし、友達が死刑になったヨシュアの気持ちになっても辛い。
「もう呼びかけるのも諦めてたんだが、今日お前の声が聞こえたもんだからよ。なんにせよ、あいつがどういう形でここを後にしたにせよ、なんらかのメッセージは残してると思うんだ。そういうやつだ」
「うーん……あるかなあ」
一応くまなく探索はしたつもりではあるが、何も発見はできていない。
「いいか、メッセージっても文字が書かれてるとは限らないぞ。なんか、怪しいところはないか?」
「怪しいところ……といっても、牢屋の中なんて初めてすぎて全部怪しいっちゃ怪しいし、どこも怪しくないっちゃ怪しくないんだよねえ」
「おいおい、しっかりしろい。早く出ないとロクなことになんねえぞ」
「早く出ないとってのは、その、脱獄しろってこと?」
「ああ」
やっぱり脱獄しかないのだ。
もう覚悟するしかない。山川空は、異世界の脱獄王となるべく覚悟を決めた。
「俺も出てえんだ。あいつと一緒に脱獄しようと約束してたんだが……」
「うん。じゃあ一緒に出よう!」
「おお。だが……お前はちょっと頼りない」
「ええ! 仲間になった瞬間にクビ!?」
「違う違う。俺たちだけじゃ厳しいってことだ。他にもっと仲間を集めたい」
「え、ここって他にも捕まってる人いるの?」
「そりゃそうだろ。やまほどいるぜ」
食堂からここまでの間に、他に捕まってる人はいなかった。
だとすると、この施設はとてつもなく広いのかもしれない。広ければ広いほど、監視の目が緩い気もするし、広ければ広いほど脱出経路が長くて難しい気もする。
「まだ入れられたばかりなら、運動場には来れねえか。なあに、もう少ししたら運動場に出れるさ。運動場の、端っこに木が生い茂ってる場所がある。俺はそこに毎日いるからよ。詳しくは、直接会ってからにしよう」
「わかった。仲間探し、だね!」
「ああ。仲間を集めて……といっても、仲間を集めるのが一番難しいんだけどな」
「頑張って、仲間集めようよ。早く出たい」
ふと、もしかするとマンドラゴラもここにいるのかも、と希望がもてる。
巨大ワニは……ちょっと難しいかもしれない。さすがにあのサイズは……。
「いいか? それまで、おとなしくしてろ。看守に目を付けられるんじゃねえぞ。この会話もバレたらまずい。一旦、運動場で会えるまで会話は抑えよう」
「わかった。じゃあ、またね」
「ああ」
山川空は、会話を終えると何事もなかったようにベッドで横になる。
ダラダラしてるように見えるが、心の中は燃え盛っていた。
絶対に、脱獄してやる!
ポセイドン号が欲しくてバイトしてた時と同じぐらいの情熱で燃える山川空は、興奮のまま、ぐっすりと寝た。
なかなか仲間を集まるところまでいかない