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その11 JKは脱獄系を思い出す

「さーて、と」


 プリズンブレイクへの道。かなり果てしない道のり。ただのJKに可能な所業ではない。

 が、山川空は異世界に来たJKであり、それはもうただのJKレベルをはるかに凌駕している。

 とりあえず、山川空は脳みそを絞り出して、知識としての脱獄を検索する。


「アメリカドラマでやってたなあ。脱獄のやつ。お母さんが観てたなあ。あと、あれだ。お父さんがDVDで見てたやつがあったぞ。えーっと、なんか、アルトラカラズ? みたいな」


 10分ほど頑張ってみるが、そもそも自分自身が脱獄モノのカルチャーに触れてなかったということに辿り着く。

 両親が観ていたやつを、なぜ一緒に観ていなかったのかと、過去の自分に往復ビンタをくらわしてやりたい気持ちになりつつ、山川空はこれ以上思い出しても無駄だと割り切り、なんとなくベタに脱獄を考えてみた。

 物理的に脱出。

 地面に穴を掘る的な。圧倒的フィジカル勝負はどうだろうか。


「なんか、土的なあれじゃないんだよねえ。全体的に」


 牢屋の中は、石や土で構成されてる部分がない。圧倒的金属感に覆われているのだ。

 鍵穴をガチャガチャする作戦はどうだろうか。


「鍵を開ける時、なんかピってしてたんだよなあ」


 この世界に指紋認証的なテクノロジーがあるかどうかは知らないが、なんらかのマジカルな要素を使っているのかピっと開けていた。

 つまり鍵穴的なものはないのだ。この牢屋には。

 一筋のフレッシュな汗が、山川空の額を流れ落ちる。


「うわ、詰んでるってやつ?」


 というか、そもそもなんで自分が牢屋にぶち込まれているのかもわかってないのに脱獄を考えること自体が間違てるのでは?

 圧倒的な法令違反を犯したのでは? どこかで。

 山川空は、真面目な子であった。


「勇気を出すしかないかあ。おーい! 看守さーん!」


 ドタバタとやってきて、また殺すぞ! と言われるのかと思いきや……

 待てども看守はやってこない。


「あれ? おーい! 看守さーん!」


 勇気を絞り出して看守に自分のおかれてる状況を説明してもらとう思ったのだが、呼んでも来ない以上どうしようもない。


「むむむむむ、これはいよいよピンチだぞ」


 こんな時に、相棒のポセイドン号があれば……原チャリに何ができるわけでもないが、心の支えにはなってくれるのになと山川空は今はどこにあるかもわからない相棒を思う。

 無事だといいけど……。


 コツン……コツン……


「ん?」


 コツン……コツン……


 何か、音がする。耳を澄ますと小石が壁に当たってるような……


「おーい、おーい」

「!?」


 明らかに呼びかける声も聞こえる。

 だが、どこから聞こえてくるのかわからない。隣から、というわけでもなく、いやそもそも隣の牢屋には誰も入っていなかった。

 食堂に行く方向とは逆の牢屋は調べてないのでわからないが……ただそっちの方角から聞こえてくる感じではない。


「えーと、聞こえてますがー……」

「……」


 山川空は勇気を出して返事をしてみたが、スルーされる。

 既読スルーを気にしないタイプの山川空も、監獄スルーはこたえるものがあった。


「あのー、もしもーし」

「……お前、新入りか?」

「!!」


 意思の疎通ができた!

 それだけで驚くほどに嬉しくなる。監獄とは恐ろしいものだ。


「はい! なんでここに入れられてるのかは、わからないけど」

「そりゃそうだろ。誰だってわからない。ここはそういうとこだ」


 ただただ、わからないということだけがわかった。


「あの、あなたはどこにいるんですか? 隣の牢屋ですか?」

「違う違う。っていうかお前の声聞き取りにくいんだよ。便器に向かってしゃべってくれ」

「便器に!?」

「ここの便器は前いたやつが改造してくれててな、こうやってやり取りできるようになってんだよ」

「ほえええ!」


 山川空は、便器にかぶりついて……若干、嫌な気持ちにもなりつつ、初めての監獄仲間と出会うのであった。


「俺の名前はヨシュアだ。よろしくな」

「山川空です!」

 

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