63年ぶりに追加された誕生石――8月の場合は……またビミョウ?
なんでも63年ぶりに各月の誕生石が改訂というか追加されるようになったそうです。
いや詳しくは知らないんですが、N●Kがニュースでそう言っているから、たぶん間違いないとは思うんですよ。
で、自分の誕生月が8月ということもあり
「8月、どうなったかな~。」
なぞと、少々気になる。
いえ別に「ヨシ! 今度からはこの石か。一つ買うてみるか!」などと分不相応な大それたことを考えたのではなくてですね。
これまでの8月の誕生石って、ナンダコレハ?! みたいな所がありまして。
つうか、御存知ですか? 8月の誕生石。
本人が8月生まれか、あるいは8月生まれのベターハーフでもいない限り……興味ネエよなぁ!
けれど8月生まれかつ、新井素子御大(1960年8月8日生まれ)の『結婚物語』という実録エッセイ風ラブコメの中で『誰も知らないペリドット』という抱腹絶倒の章を読んだ記憶を持つ吾輩は、一応知っておったのだな。
ちなみに『結婚物語』の初出は1985~87年に雑誌「野生時代」で連載。(ただし僕が読んだのは文庫版)
勿体ぶってないで、とっとと正解を提示しよう。
8月の誕生石は元々は”べにしまめのう”なんである。
全平仮名では、どこをどう区切って読んだら良いのか判断に苦しむから漢字表記すると
『紅縞瑪瑙』
となる。
サードニクス(サードオニックス)ですな。
……まあ、こう書き直しても、ちょっとピンと来ない宝石だよね……。
瑪瑙つうたら、ほら、理科の実験で試料を潰す乳鉢にするヤツでしょう?
メノウの乳鉢、いまア●ゾンで価格見てみたら、小さいサイズだと4,000円くらいだね。うーむ。
ただし”紅”と”縞”が付いているから、と「+紅+縞」で調べてみても、15㎜サイズの判子が8,000円しないくらいだ。
指輪にするなら判子みたいにカタマリではなく、一つっかけしか用いないんだから、たぶん更に安いよな。
そりゃあカップラーメンや缶コーヒーに比べたら8,000円は高価と考えることも出来るが、「宝石の一種ですよ」と言われたら高くは思えん。
いや安い言うても6月の誕生石である真珠なんかは、JR大津駅の御土産物売り場でイケチョウガイの淡水真珠だと、小粒で形が歪んでいるヤツなんかはツブ1,000円以下で売っていたりする。
それでもね、「やっぱ真珠って、滑らかツヤツヤで良い色だよなぁ……」って思って見てしまう。
それに比べると瑪瑙って、なんだか――実用的用途の有用性を脇に置いておくと――宝石と言うには地味なのではなかろうか。
『結婚物語』ではヒロインの陽子さんも、石に貴賤は無いとしながらも、婚約指輪を買うのに少し悲しくなってしまう。
いや、その気持ち、分からんでもない。
ダイヤ・ルビー・サファイヤといった有名ドコロに比べて、見た目もネームバリューも地味なんだもの。
陽子さんの顔が、あまりにも寂しそうに見えたのか、売り場のお姉さんがそこで
「今では8月の誕生石として、こちらもお薦めしております!」
と”ペリドットを”見せてくれるわけだ。
陽子さん(と婚約者)はペリドットの透き通った輝きが気に入り、ただし購入前にもう一度検討するため、いったん話を持ち帰るのだが、家に帰り着くと今度はペリドットという固有名詞がどうしても思い出せない……。
ふむふむ。
今(2021年12月20日)検索サイトで”8月 誕生石”を検索してみると、紅縞瑪瑙よりペリドットが上に来るようですね。
『結婚物語』が書かれた1985年の頃より、2021年ころまでには誕生石としてのペリドットの認知度が格段に上がったわけやね。
今回が63年ぶりの新人加入ということならば、ペリドットが期待の大型ルーキーとして参入したのは遅くとも1958年。
途中、どう云った激動の時代の波に晒されたのかは知らないけれど、今やペリドットは紅縞瑪瑙と並び立つ――もしくは凌駕する――地位を得たというわけだ。
なろうで例えるなら、ペリドットが「恋愛ざまぁ」で、紅縞瑪瑙が「異世界転生」ですかね?
いや、ペリドットと紅縞瑪瑙のどちらとも、今でもダイヤモンドや鋼玉系に比べたら地味感が充実しているわけですけれど、そこは8月誕生石縛りという事で。
さてさて2021年以前の話はこれくらいに止めて、この先は21年(令和3年)新加入の8月誕生石の戦闘力を視てみようではないか。
4月 (ダイヤモンド)や5月 (エメラルド)、7月 (ルビー)に9月 (サファイア)なんぞの既存有力宝石を駆逐する強力石、来いッ!!
原子番号113のニホニウムとかだったら良いなぁ! (今の処、用途は不明だけど)
ん?
んん?
『スピネル』???
ナンダ・ソレハ……、と言うことでwikiを見に行く。
何が悲しゅうて海を見に行く、ではないけれど。
尖晶石という石らしいですよ……。
化学組成は MgAl2O4。マグネシウムとアルミから出来てるのか。
wikiでスピネルの歴史の部分を読むと
『長い間、ルビーとレッドスピネルは混同されていた。
イギリス王室の戴冠式用の王冠に飾られている「黒太子のルビー」は、ルビーではなくレッドスピネルである。』
と書いてある。
オオオ!
「黒太子のルビー」だってェ?!
これはもしや……ペリドットや紅縞瑪瑙以上の戦闘力を持つ隠れた大物、黒幕的な真のラスボスかぁ!
……しかし、その後まで目を通すと
『「ルビーと紛らわしい石」と云ったレッテルを貼られ、人気や知名度も常にルビーの後ろに位置するので、それほど高価にはならない。』
なのだと……。
うーん……ビミョウやなぁ。
けれども8月生まれの紳士淑女諸君。
時代は移ろい行くのだ。
落胆する必要は無い。
今後、何かの勢いで『紅縞瑪瑙』 『ペリドット』 『スピネル』が時代の寵児と成る日が来るやも知れん。何時の事だかは分からないにしても。
かのリチウムにしたところで、水爆製造が下火となった時には価値が暴落したが、リチウムイオン電池が開発されるや戦略物資として復権した。
『黒太子のルビー』の原料尖晶石にしても、今後各国で――用途が変わったりするなどして――復権しないと誰が断言出来よう。(元々スピネルの産出量は少ないらしいし。)
なろうだって、『異世界恋愛』や『異世界転生』を押さえ、『ホラー』や『推理』が花形となる時代が来るかも知れないのだ!
雌伏するとも諦めず、力を蓄え時代を待つべし!