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獣化

作者: 口羽龍

 ここはとある片田舎。田園地帯が広がっていて、その中に近代的な住宅地がある。その住宅地の裏には、小高い丘がある。そこの開発はなぜか進んでいない。昔からここには都市伝説があり、ここに立ち入った人は人間ではなくなると言われている。


 夏休みのある日、次郎じろうはいつものようにテレビゲームをしていた。宿題は午前中にやって、午後はテレビゲームで遊ぶのが日常だ。


「次郎、遊ぼうぜー」


 突然、外から声が聞こえた。翔太しょうたさとるひろしだ。今日は朝から友達とかくれんぼをする予定だった。


「うん」


 次郎はテレビゲームを切り、玄関に向かった。そこには3人が待っていた。


「次郎、今日はかくれんぼするんだったよね」

「うん」


 次郎は嬉しそうな表情を見せた。今日は同じ住宅地の子供たちと初めてのかくれんぼだ。


「行こうぜ!」

「うん」


 4人はこの近くの丘でかくれんぼをすることにした。その丘は丸い形をしていて、周りの人からは忌み嫌われていた。


 4人は丘に向かった。この丘の言い伝えを知らずに。そして、この後次郎がとんでもないことになると知らずに。


 4人は丘のてっぺんに着いた。丘からは4人の住む住宅地が見える。その向こうには田園地帯が広がる。とてもいい眺めだ。4人はその眺めに感動していた。


「ここで始めようぜ」


 翔太の提案に、3人はうなずいた。


「じゃんけんポン!」


 最初に抜けたのは、悟だ。


「じゃんけんポン!」


 次に抜けたのは、次郎だ。


「じゃんけんポン!」


 最後に抜けたのは、翔太だ。博が木で目を隠すと、3人はそれぞれの場所に逃げていった。


「もういいかい?」

「まぁだだよ」


 次郎は隠れ場所を探していた。この辺りは全く開発されていないようで、雑木林が広がっている。


 雑木林の中を歩いていると、次郎はある洞窟を見つけた。その洞窟は素掘りで、何の装飾もない。


「もういいかい?」

「もういいよ」


 次郎の声で、博は3人を探し始めた。絶対に3人とも見つけてやる!


「どこだここは?」


 次郎は辺りを見渡した。この洞窟は何だろう。この丘の事は両親から全く聞いたことがない。この洞窟の事も、ここに何があるのかも。


 と、次郎は何かに気付いた。洞窟の奥で声が聞こえる。


「奥で何か声が聞こえる」


 次郎が奥に行くと、何らかの儀式が行われていた。そこにいるのは獣人で、彼らの前には様々な装飾をした獣人がいる。


「何が行われているんだろう」


 その時、後ろから誰かが声をかけ、捕まえた。彼も獣人だ。彼らの仲間のようだ。


「ちょ、ちょっと待って、何だよ!」


 次郎はじたばたしたが、動けない。


「お前をオオカミにしてやる!」


 えっ、オオカミ? そんなのやだ。人間でいたい!


「そ、そんな、嫌だ!」


 次郎は前にいた獣人に捕まえられた。次郎は暴れたが、逃げることはできない。


「さぁ、ここに寝るんだ!」


 次郎は素早く祭壇に寝かされた。祭壇の前の獣人は祈りを捧げている。


「や、やめろー!」


 次郎は抵抗した。だが、程なくして、鎖で両手両足を縛られた。


 獣人は呪文を唱えた。すると、次郎の体に何かが起こった。体が熱い。光を帯びている。一体何だろう。次郎は汗をかき始めた。


「な、何だ!?」


 次郎は頭を横にして、腕を見た。腕から灰色の毛が生えてくる。手がオオカミのようになっていく。首を上げると、足もオオカミのようになっていく。更に、ズボンが破れ、尻からは尻尾が生えている。


「ワオーン!」


 次郎は叫んだ。だが、声までもオオカミになっている。次郎は驚いた。信じられない。これは夢だ。早く夢から覚めろ!


「次郎! 次郎!」


 突然、誰かの声が聞こえた。鬼の博だ。次郎は呆然としていた。何が起こったんだろう。今さっきの部屋は何だったんだろう。


「こ、ここは?」


 次郎は辺りを見渡した。3人がいる。ここは洞窟の入口だ。


「洞窟の入口だよ」

「見つけて、外に引き出しても暴れてたんだよ」


 見つけて捕まえた鬼の博はその時の事を話した。次郎は驚いた。一体あの光景は何だったんだろう。


「そんな・・・」

「どうしたの?」


 博は信じられない表情だ。博はその洞窟の事を知らなかった。


「変な人に捕まって、オオカミにされる夢を見たんだ」


 洞窟で起こった事を、次郎は話した。3人は信じられないような表情で聞いていた。


「ふーん」


 突然、翔太は次郎の腕を見て驚いた。次郎の腕から灰色の毛が生えている。まるで獣のようだ。


「見て! 腕が!」

「えっ!?」


 次郎は驚き、腕を見た。次郎は驚いた。まるで獣のように毛が生えている。あの夢は夢だろうか? それとも現実だろうか?


「毛が生えてる」


 それを見て、3人は呆然となった。一体次郎の体に何があったんだろう。


「何だろう」

「わからない」


 結局そのまま、4人は住宅地に戻った。次郎は下を向いていた。こんな姿になってしまった自分を見て、両親はどう思うだろう。


 次郎は家に帰ってきた。次郎は下を向いていた。こうなってしまった自分を見たら、どう思うだろうか? ショックを受けるんじゃないかな?


「ただいま」


 次郎は震えていた。家に入るのが怖い。こんな灰色の毛が生えた腕を見たら、びっくりするんじゃないのかな?


「おかえり。次郎、って、その腕、どうしたの?」


 扉を開けた母は驚いた。次郎の腕がまるで獣のようになっている。やはりびっくりしてしまったか。次郎はますます落ち込んだ。


「みんなでかくれんぼしてたら、こうなってしまった」


 それを聞いて、母は丘の方を向いた。まさか、あの丘でかくれんぼをしていたのでは?


 母は次郎の下半身を見て驚いた。なんと、次郎の尻から尻尾が生えている。次郎は尻尾を振っている。


「えっ、お母さん、どうしたの?」

「し、尻尾が!」


 次郎は驚き、尻を見た。デニムの短パンが破れて、そこから尻尾が出ている。夢から覚めた時にはなかったのに。帰る途中に生えてしまったのかな?


「な、何よこれ?」


 母は信じられなかった。どうしてうちの子がこんなことになったのか?


「どうしてこうなったの?」

「なんだか変な洞窟に入ったら、オオカミにされてしまったんだけど、夢だったんだ」


 次郎はうつむきつつ、何があったのか話した。あの丘に入ったらこんなことになるなんて。行かなきゃよかった。


「まさか、呪われた?」

「えっ!?」


 次郎は驚いた。呪われるなんて。次郎は信じられなかった。


「そこには昔から犬神さんがいて、ある洞窟に入った人は日に日にオオカミになっていくんだよ」


 母はあの丘の昔話を知っていた。あの丘に行ってはならない。あの丘の洞窟に入ると、日に日にオオカミになっていき、人間ではなくなる。


「まさか、あの洞窟は・・・」


 次郎はあの洞窟で起こった出来事を思い出していた。祭壇の前にいた獣人は犬神だろうか? あとどれぐらい人間でいられるだろう。あとどれぐらいこの家で暮らせるだろう。そう思うと、ますます落ち込んでしまった。

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