34話 クラス対抗戦⑬ 告白
*エミリ*
ザシュ――――――――ッ!!!
ユーリが放った剣撃の衝撃で
アラン会長は場内の壁へ向け、一直線に吹き飛んだ。
だが
シュン―
壁にぶつかるスレスレのところで、会長は姿を消した。
そして、場内の中央に
シュン―
再び姿を現した。
アラン会長は、痺れているのか
両手を小さく震わせていた。
「まさか本当に・・・僕のテレポートが・・・」
いつも爽やかな表情をしているアラン会長は、
珍しく驚いたような表情で、そう呟いていた。
そして―
「よっしゃあ! 対応できたぞ!!!」
ユーリは嬉しそうに、そう大声を上げた。
「す、すごい・・・すごいよユーリ!」
ロミオも同じように声を上げる。
そして、周りの観客席からも
「お、おいマジかよ・・・アラン会長のテレポートが破られたぞ」
「それだけじゃねえ・・・アラン会長のあんな姿、俺は初めて見たぜ」
「ユーリとか言ったか? あの一年、ほんと何者なんだよ!」
「いやぁあん、、、アラン会長負けないで!」
などと、あちこちで様々な声が飛び交う。
まさか本当に、
あのアラン会長の無敵のテレポートを打ち破るとは・・・
ユーリ、
お前は一体どこまで
私の想像を超えていくのだ。
私は場内へ視線を戻す。
アラン会長は
手に持っていた模造刀を腰に戻し
ユーリに向かって口を開いた。
「ユーリ君。 ほんとうに見事としか言いようがないよ。 まさか本当に、君の言ったとおりになるなんてね・・・」
アラン会長はフーッと一呼吸置くと
「よければ、君がどうやって僕のテレポートに反応し、対応したのか僕に聞かせてくれないかい?」
そう続けた。
アラン会長の言葉で、ざわついていた観客席は
一瞬で静かになった。
そして―
「ああ、いいぜ」
ユーリはそう言って続ける。
「俺は、てめえがテレポートを使う際、ある二つのことに気づいた! この2つのことに気づけたからこそ、俺はてめえのテレポートに対応することが出来た!」
ユーリは二本の指を立ててそう口にした。
「ある、二つのこと・・・?」
私は思わず声を漏らす。
「君が気づいた、その二つのことというのは、一体何だい?」
アランがそう問いかける。
「それは―」とユーリが続ける。
「てめえがテレポートを使い姿を現す瞬間、その空間にわずかに生じる、‘‘空間の歪み‘‘、そしてその歪みとともに生じる、‘‘微々たる魔力‘‘。 この二つだ!」
ユーリは声を上げてそう言った。
「な、何だと・・・」
私は驚愕し、声が漏れた。
空間の歪み・・・だと?
そ、そんな、
まるで目に見えないものを
ユーリは肌で感じとり
テレポートに対応したというのか?
しかも・・・
あのわずかな
ごく一瞬の間に・・・
アラン会長は、考えるように顎に手を当て
「空間の歪みと・・・微々たる魔力・・・ねえ・・・」
そう呟いた。
アラン会長は
とても信じがたいものを
必死に頭で理解しようとしているように見えた。
だが、無理もないことだ。
空間の歪みと、微々たる魔力に反応し
テレポートに対応したなどと・・・
私だって信じがたい。
だが、
ユーリは決して嘘をつくような奴ではない。
それについては確固たる自信がある。
おそらく、全て本当のことなのだ。
ユーリは本当に
それら二つを感じ取り、
アラン会長のテレポートを打ち破った。
だが、そうこう考えていると―
「ちょっとそこのあんた! あんまりふざけたことを抜かしてんじゃあないわよ!」
と、観客席から大きな声が発せられた。
場内にいるユーリや、観客席の生徒たちも
何だ、何だと、声が発せられた方へみなが視線を移す。
そして、その視線の先には―
「ユリネ魔法師生徒会長!」
観客席の誰かが、そう声をあげた。
ユリネ会長は
片方の手でユーリを指さし
もう片方は腰に当て
堂々とした態度でその場に立っていた。
そして、ユリネ会長は続ける。
「わずかな空間の歪みに気づいたですって? アランのテレポートに対応できたからって、適当なことをぬかしてんじゃあないわよ!」
ユーリは、ユリネ会長に視線を向け
「いや、適当なことなんて俺は―」
「黙りなさい!!!」
ユリネ会長はユーリの言葉を切るように
上からかぶせてそう強く言った。
ユーリは、一体何なんだ、といったような表情をしていた。
そして―
「たしかに、あんたが言っているもう一つの・・・微々たる魔力・・・これについては、私も認めてあげるわ。 なんせこの私にも、それは肌で感じたことがあるから」
「あ、ああ・・・」
「だけど! あんたが言っているもう一つの、空間の歪みだなんてもの、そんなもの私は決して信じないわ!」
「まあ、別にどう思われようが構わねえんだが・・・どうして、そこまで頑なに信じねえんだ?」
ユーリがそうユリネ会長に問いかける。
すると、ユリネ会長は胸に手を当てながら口を開いた。
「だってこの私、魔法師生徒会長であるこの私が! 今の今まで、そんなもの微塵も感じたことがないからよ! この二年間、アランの近くでテレポートを幾度と見てきた・・・いいえ、アランのテレポートを、一度たりとも見逃さなかったこの私が言うのだから間違いないわ! あんたの言う空間の歪みなんてものは、存在するはずがないのよ!」
「そ、そうか・・・」
ユーリは少し引きながら、そう口にした。
どうやらユリネ会長は、自分の目で見たもの以外信じないタイプのようだ。
ユーリは、自分がどう思われてもかまわないというタイプなので
ユリネ会長の言葉を軽く流しているようだ。
そして―
「理解できたかしら? 自分が一体どれだけ適当なことをぬかしていたのか。 まあでも、今であればまだ許してあげるわ」
ユーリは不思議そうな表情を向ける。
「許す?」
「ええ」
「ええと・・・何が?」
「あんたが言ったくだらない妄言のことよ」
「・・・」
「その場で謝罪しなさい! 適当なことを言って申し訳ありませんでしたと、この私に! そうすれば、あなたが口にした妄言のこと、この私が許してあげる!」
ユリネ会長は、その綺麗な顔に反して
まるで悪役のようなセリフを吐いていた。
・・・おそらく、
ここにいる全員が
どうしてユーリが、ユリネ会長に謝罪しなければいけないのかと
疑問に思っているだろうが・・・
誰もそのような疑問を口に出したり
ましてやツッコミをいれる者などいなかった。
この人以外は―
「ユリネ会長」
「どうかしたのかしらミア」
ユリネ会長の隣に座っているミア副会長が
いつもの無表情、淡々とした口調でユリネ会長に話しかけた。
「いや、言っていいものかわからないのですが・・・」
「言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」
ユリネ会長は腕を組み、堂々とした態度でそう言った。
「そうですか、では言わせていただきます」
「ええ」
ミア副会長は、一呼吸分の間をおいて続ける。
「ユリネ会長の先程の発言・・・アラン会長への『公開告白』なのではないかと思われるのですが・・・」
ミア副会長は淡々とした口調で、そのような言葉を口にした。
「なッ・・・!」
ユリネ会長はハッとしたような表情を向けると同時に
まるでゆで上がったタコのように、顔を真っ赤に染めあげる。
「ちょ、ちょっと、ミア! あなた、一体何を言っているのかしら!?」
「何って、今申し上げた通りですが」
「そ、そういうことを言っているのではなくて!」
「はー・・・」
「はー・・・じゃないのよ!」
「いえ、今のは別にため息では―」
「そんなことわかってるわよ!」
そう言うと、ユリネ会長は少し下を向き、声を落として話す。
「だ、だから私が言いたいのは・・・ど、どど、どうして、今の私の発言が、そ、その・・・こ、告白になるというのかしら!? だ、だって私は、ひ、一言も、アランのことを、その・・・す、好き・・・なんて、言ってなどいないのだけれど!?」
ユリネ会長は先程とは打って変わり
とても動揺した様子でそう口にしていた。
だが、そんな会長のことなどお構いなしと言わんばかりに
ミア副会長がいつもの調子で続ける。
「ユリネ会長、一体何を言っているのですか?」
「そうよね!? 私そんなこと一言も言って・・・ん? ミア今なんて―」
「私が言った『告白』というのは、ユリネ会長が日ごろから、アラン会長をストーキングしているということを自らの口で申し上げたと、そういう意味だったのですが・・・」
ユリネ会長はハッとした表情を向けた。
「ユリネ会長・・・まさか」
ミア副会長がジト目でそう言うと―
「い、いやいや! いやいやいやいや! も、もちろんわかっていたわよそんなこと!? そっち、そっちの告白ね! いや間違いなく確実に! 理解していたわ!」
「その言い分ですと、やはりストーキングの方は自ら認めると?」
「ええ、もちろん・・・・・・って、ちがああああああああああああうッ!」
ユリネ会長は大声を上げた。
そして―
「ちょ、ちょっとアラン! わ、私は別に、あんたのストーキングなんて、今の今まで一度だってしたことなんてないんだからね! か、勘違いしないでよね!」
ユリネ会長は、顔を赤くしながら
取り繕うように、アラン会長に指をさしてそう言った。
「ユリネ会長、今の時代、ツンデレは流行らないかと―」
「あーもうッ! さっきからうるさいわよミア! あんたは黙ってなさい!」
ユリネ会長は、ミア副会長の両頬をつねってそう口にした。
「・・・ひゃい・・・」
・・・なんというか、
とても騒がしい人たちだ。
私の中のユリネ会長のイメージが
今日一日でだいぶ変わってしまった。
場内にいるユーリとロミオは、一体何だったんだと
そう言っているかのような表情を向けていた。
だが、アラン会長は
そのような外野の声など、全く耳に入っていないようで
先程と同様に、真剣な表情で考え込んでいた。
そして
今まで考え込んでいたアラン会長が
顔をあげ、ユーリに向かって口を開いた。




