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碧眼の神威使い ー奪われた幼馴染を救うため俺は魔人をぶった斬るー  作者: ARU/MERIA
第1章 騎士・魔法師育成学校入学編
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9話 ここに住むか?


 「そ、それじゃあ・・・お、お邪魔します」


 「おう!お邪魔してくれ!」


 俺はロミオをリビングまで案内し、椅子を用意した。


 「少し、座って待っててくれ、なんか適当に作るな」


 「あ、僕も手伝うよ……」


 「いいって、いいって、くつろいでてくれ」

 

 「う、……うん」


 そして俺は、上の制服を脱ぎ、料理用のエプロンを身にまとった。

 ちなみに、制服の下はシャツの上にベストを重ねて着ている。

 ベストは学校の規定にはないのだが、着心地がいい。

 まあ俺の趣味だな。

 ロミオは落ち着かないのか周りをキョロキョロと見渡していた。


 「ユーリ、この家、すごく広いね……」


 「そうだな、部屋もこのリビングの他に4つあるしな、まあ、少しボロいのが残念だけど」


 「い、いや、そんなことないよ! こんな都市部に一軒家……しかもこんなに広いなんて……その、家賃とか大丈夫なの?」


 「家賃なんてないぞ、買ったからな」


 そう、1週間前の入学試験の前日にこの家を購入した。

 俺とシルバーは今まで旅をしていたので、ある一定の場所に滞在することはなく、住居を構える必要もなかった。

 だが、俺がこの学校に入学するようになって、住居を構えようということになり、この中古物件を購入したのだった。

 当初の予定ではシルバーもこの家に住む予定だったのだが……

 家を買った当日しか、この家に入らず、それから1度もこの家に帰ってきていない。

 まあ、どうせ今も外で魔物を狩っているか、剣の鍛錬をしているんだろうが。

 長旅の影響で、外じゃないと、寝れなくなってしまったのだろうかあの人は……。

 せめて、ご飯だけでも食べに帰ってくればいいのに。

 そんなことを考えていると、ロミオは驚愕したように声を発した。


 「えええ!? か、買ったの!? ユ、ユーリ、君は貴族じゃないんだよね? ……こんな都市部に、中古にしても一軒家なんて……相当の金額がするんじゃ……」


 「いや、それが案外安くてな、確か7千万くらいだったな、いや~運がよかった」


 「な、7千万!? そんな大金、貴族にしても、僕たちの年で、持っている人は少ないと思うんだけど……ユーリ、君は一体……」


 「うーん、外の世界で魔物を狩っていたら、ちょうど魔物の被害を受けて困っていた村の村長なんかに、お礼金をもらったりすることがあってな。……俺たちは特にお金の使い道もなかったから、気が付いたらけっこう貯まっていたんだよな」


 食費や、その他生活するうえで必要最低限なものにしかお金を使っていなかったからな。

 一番の出費といえば、このロングソードの鍛冶代金くらいだ。

 あの店主、本当にぼったくってないんだろうな。


 「そ、そうなんだ……すごいね」


 「そういえば、ロミオはどこに住んでるんだ?」


 「え? 僕は学校の寮に住んでるよ……あまりいい所じゃないけどね」


 ロミオは苦笑いをこぼした。

 俺は朝の学校でのことを思い出し

 ふと気になったことを聞いてみた。


 「その寮ってのは、1人部屋なのか?」


 ロミオは少し俯き

 少しの間を置いて口を開いた。


 「2人部屋だよ……でも僕がいると、その……同室の人も……迷惑だろうから、……寝るとき以外は、違う所で過ごしてるんだ。 ははは……僕もユーリみたいに、自分の気持ちを堂々と言えたら……いいんだけどね」


 ロミオの気持ちを考えると、いたたまれなくなり

 ある提案をした。


 「ロミオさえよければ、ここに住まないか?」


 「……え?」


 ロミオは顔を上げた。


 「部屋も余ってるし、それに、俺なら気を使わなくてもいいだろ?」


 「え、だ、ダメだよ!……それは」


 「なんでだ? 別にいいじゃねえか、男同士なんだし、それに俺たちは、その……友達だろ?」


 俺は少し照れて、顔をそらしてしまった。


 「え……でも……ううっ……」


 ロミオは少し照れたようにまた下を向いた。

 少し、強引だっただろうか。

 だが、朝のことを考えると

 寮でのロミオの生活も想像できた。

 おそらく、ロミオは寮の部屋でさえ、自分の居場所はないのだろう

 だから寝るとき以外は他の場所で過ごしているんだ。

 そんなのはひどすぎる。

 俺の自分勝手な保護欲なのかもしれない

 だが俺は、ロミオを今の環境から少しでも救えるのなら

 救ってやりたいと思った。

 ロミオはしばらく考え込み……

 そしてー


 「ほんとに……いいの?……」


 「当たり前だろ! ロミオさえよければ俺は大歓迎だよ!」


 ロミオは赤くなった顔を両手で覆い隠した。


 「うん……ありがとう……」


 「それじゃあ、さっそく昼飯食べたら引っ越しだな」


 「……え? 今日から!? ギルドはいいの?」


 「ギルドは引っ越しが終わってからでも行けるだろ! それに、ギルドよりも、ロミオの引っ越しが最優先だ!」


 「ううっ……ありがとう……ユーリ」


 「おう!」


 そうして俺は昼飯を作った。

 ちなみに、今日の昼飯はビーフシチューとサラダだ。

 ビーフシチューは作る手間も楽な上に、作り置きもできるから、俺の中では定番だったりする。

 リビングにあるテーブルに料理を置き、俺とロミオはテーブルを挟んだ対面の椅子に腰かけて昼飯を食べた。


 「おいしい、……このシチューすごく、おいしいよ」


 「そうか、口にあってよかった」


 「すごいね、僕も屋敷では料理を作っていたけど、……これは本当に、すごくおいしい」


 「そ、そうか、よかった」


 ロミオがあまりにも絶賛してくれるので、少しこそばゆい。

 シルバー以外に俺の料理を振る舞うのは初めてだったので、ロミオの反応は少し気にはなっていたが、口にあったみたいでよかった。


 そして俺たちは昼飯を食べ終え、寮に向かった。

 寮の中には、寮生しか入れないらしく、俺は門の前で、半刻ほどロミオを待った。

 そして、ダンボール1箱くらいの荷物を持ってロミオは出てきた。


 「ごめんね、ユーリ、待たせちゃって……」


 「いや全然、……それよりか荷物はそれだけなのか?」


 「うん。着替えと、学校でいるものぐらいだからね」


 いくら寮で生活していたといっても、物が少なすぎるような気もするが。

 まあ、俺も人に言えたことではないし、深く聞かないでおこう。


 「そうか、じゃあ行くか」


 「うん」


 それから、俺たちは歩いて俺の家に向かった。


 「ロミオそろそろ交代するか? 重いだろ?」


 「あ、いや、これは大丈夫! 僕が自分で持つから!」


 ロミオはなぜか焦ったように荷物を体で覆い隠すようにしていた。


 「いいや、俺も手伝うよ、そもそも俺から言い出したことだしな」


 「い、いや、ほんとに大丈夫!……荷物もこれ1つだし、その、と、とにかく大丈夫だから!」

 

 「そうか、疲れたらいつでも言ってくれよ」


 普段おとなしいロミオがこれほど取り乱しているのを見て、少し驚いたが

 あの荷物にはよほど大事なものが入っているのだろう。

 余計なお節介はかえって迷惑だからな

 やめておこう。

 

 そうこうしている内に、俺の家に到着した。


 「お、お邪魔します」


 「さっきもお邪魔しただろ、というか今日からロミオの家でもあるんだし、気を使わなくていいよ」


 「う、うん」


 「それじゃあ、部屋は2階だから、こっちな」


 俺たちは2階へ上がった。

 俺の家の作りは、1階は、だだっ広いリビングとキッチン、それとお風呂とトイレがあり、階段を上った2階には4つの部屋があり、横一列に並んでいる。

 俺はその2階の端の部屋を寝室に使っている。


 「ロミオ、部屋はどこにする?」


 「えっと、その……余っている部屋でいいよ」


 「この部屋は俺が使っているから、……ここ以外の部屋だったら全部使ってないから、どこでもいいぞ」


 ロミオは少し間を開けて、照れたように下を向き、指を指した。


 「そ、それじゃあ……この部屋で」


 ちなみに俺の隣の部屋だ。


 「わかった、一応片づけはしてあるから、自由に使ってくれ」


 「うん……。 その、ユーリ……」


 一瞬の間を置いて、ロミオが続ける。


 「……ありがとう……」


 そういってロミオは、はにかんだような笑顔を見せた。


 「お、おう! それじゃあ、荷ほどきが終わったら教えてくれ、俺は下のリビングで待ってるから」


 「うん、わかった」


 だから、どうしてドキっとするんだよ。


 落ち着け俺よ。

 

 ロミオは男、ロミオは男、ロミオは男、ロミオはー


 こうして、だだっ広い俺の家に新しい住人が増えた。 

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