33話 クラス対抗戦⑫ テレポート
*ユーリ*
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
場内に土煙が舞いあがり、視界が塞がる。
俺はつかさず―
タタッ
ロミオを片腕で抱え
ダッ!
地面を蹴り、飛ぶようにその場から移動した。
「ユ、ユーリ!?」
タッ、タッ!
ある程度、距離を取ると
抱えていたロミオを下ろす。
「ロミオ、俺の後ろに!」
「う、うん」
ロミオを背に
俺は片方の手で‘‘模造刀‘‘を腰から抜き、構える。
「ユーリ、一体どうなったの? アラン会長は」
「・・・手ごたえがなかった」
「え? それって・・・」
もう片方の手で握っていた
‘‘模造刀の鞘‘‘が
雷轟一閃流に耐えられず、ボロボロと崩れ落ちる。
塵となり、崩れ落ちていく鞘を強く握りながら、口を開いた。
「かすめはしたが・・・当たってねえ」
「そ、そんな・・・」
くっ、
土煙のせいで、辺りが見えない。
アランは一体、どこにいやがる。
俺は思い出したように―
「ロミオ、腕章は!」
そう問いかけた。
ロミオは
パサッ、パサッ
と、左腕を触り確認する。
「大丈夫・・・取られてないよ!」
ロミオからそう返答が返ってきた。
「そうか、よかった!」
俺は再び、前を向き構える。
そして
サーッ
と、土煙が風に流れ
塞がっていた視界が開けた。
そして、
やはりその場所に、アランの姿はなかった。
「やれやれ、今のは本当に危なかったよ」
俺は瞬時に、アランの声の方に振り返る。
アランは、試合が始まる前の
元の場所に立っていた。
「やっぱり・・・ピンピンしてるじゃねえか」
やはりテレポートで、かわされていたか。
くっ・・・
こっちは鞘を犠牲にしたってのに。
すると
「いいや、そうでもないよ」
そういってアランは右腕を前に出した。
「あれは・・・」
アランの右腕の制服の袖が
肘から前腕部にかけて、黒く焼け焦げ、ボロボロになっていた。
そしてわずかに、流血している。
なるほど、
何かをかすめたような感覚はあれか。
「正直、あとコンマ1秒でも遅れていれば、僕は君に敗北していただろう・・・」
そう言うとアランは左手を右腕に近づけ―
「治癒魔法 —ヒール―」
そう唱えた。
するとアランの右腕は光に包まれ
あっという間に
血が止まり、傷が塞がりはじめた。
アランはヒールをかけながら続ける。
「僕はユリネのように完璧には治癒できないからね。 この程度ですんでよかった」
アランはヒールをかけ終えると、右手の握力を確認するように
二、三度、拳をグーパーと握った。
そして、アランはこちらに視線を移す。
「ユーリ君、やはり君はあなどれない。 まさか試合開始早々、君が僕に向かってきたのは、僕の行動を先読みしたうえでの‘‘フェイク‘‘だったなんてね」
そう口にした。
俺はアランに答えるように口を開く。
「俺たちの試合を見ていたお前なら、ロミオの氷結魔法の脅威を懸念し、まず先にロミオに攻撃してくることは予想していた。 だから俺たちは、それを逆手にとり、てめえに仕掛けた。 試合開始と同時に俺が蹴りこんだのも、お前がロミオを狙いやすくするための作戦だ」
まあ、失敗に終わっちまったがな。
「く、来るとわかってはいても、反応できなかった・・・」
後ろのロミオはトホホと少し落ち込んだように、そう口にした。
まあ、今の一撃で倒させてくれるほど
そんなやわな奴じゃないってことは
わかっていたさ。
俺はグググと、模造刀を強く握った。
「そうか・・・フフッ・・・そうか、そうか」
アランは笑みをこぼしながらそう言った。
「何がおかしい?」
俺がそう問いかけると
「いや、すまない」と、アランが続ける。
「僕にとってとても嬉しい情報だったもので、つい笑みがこぼれてしまった。 申し訳ない」
と、アランが謝罪した。
何?
一体、何を言っているんだ?
「嬉しい情報だと? 何のことを言っているんだ?」
俺がそう問いかけると
アランはさわやかな表情で口を開く。
「君の言いぶりだと、やはり先程の行動は、僕の行動を先読みし、それに合わせて動いただけのこと。 もし君たちの予想が外れていれば、君の剣は、僕の右手をかすめることすらなかったというわけだ」
「・・・」
「つまり、何が言いたいかというと」と、アランは続ける。
「君は僕のテレポートに反応し、対応したわけではないということだ」
アランはそう言った。
「ユーリ・・・」
「先程は少し動揺してしまった。 もしかすると、君が僕のテレポートに対応したのではないかと一瞬考えたからね。 だが、それは杞憂だったようだ。 まあそもそも、今の今まで、僕のテレポートに対応できた者など、誰一人としていないんだけどね」
アランは堂々とした口調でそう言った。
「そ、そんな・・・今まで一人も・・・」
ロミオは声を震わせながらそう呟いた。
なるほど、
アランの言いたいことはよく理解できた。
それに、アランが自身のテレポートに
絶対的な自信があるということも・・・
・・・だが!
「やってみねえと、わからねえぞ!」
俺はニシシと笑顔でそう言い返した。
「ユ、ユーリ・・・」
ロミオは不安そうに呟く。
「ロミオ、大丈夫だ! 俺を信じろ!」
俺は強くそう口にした。
アランは数秒間を置くと
「これは驚いた。 僕のテレポートを目の当たりにして、そのように言ってきたのは君が初めてだ」
「そうか・・・だったら!」
俺はアランに指をさし、大声で続ける。
「てめえのテレポートを攻略する、記念すべき第一号にも俺がなってやるぜ!」
アランは面食らったように数秒間を開けると
「フフッ・・・ユーリ君、やはり君はおもしろい」
アランは笑みをこぼしながらそう言った。
そして
「そこまで言うのなら、ぜひやってみるといい。 ただし・・・」
そう言ってアランは構えた。
くるか、
テレポート!
そして―
「手加減はしない!」
アランはそう言うと
ダンッ!
地面を強く蹴った。
サッ・・・
俺は瞬時に眼を閉じ
全神経を
俺の間合いに集中させる。
テレポート・・・
初めてアランと会った時、
俺はあいつに間合いを許した。
その時からすでに、テレポートの脅威はこの身で十分理解している。
瞬時に消え、瞬時に姿を現す。
目で追うことはまず不可能。
とても恐ろしく、強力な魔法だ。
・・・だが、
‘‘完璧ではない‘‘
いやそもそも、完璧な魔法なんてものは
この世に存在しないのだろうが
そういうことではなく・・・
テレポートにも
‘‘攻略法はある‘‘
実際に俺は、何度かアランのテレポートを間近で見て体感した。
そのおかげで俺は、
あることに気づき、この身で感じることが出来た。
アランはテレポートを使い
シュン―
姿を消した。
さあこい。
絶対に・・・
捉えてみせる!!!
そして―
!!!
コンマ1秒の世界
俺の間合いに、あるものを感じた!
俺は瞬間に眼を開け、そのあるものに向け模造刀を全力で振った。
「そこだあぁああああッ!!!」
ブンッ!!!
すると、剣を振った先に
タイミングを合わせたようにアランが姿を現した。
アランは自身に向けられた剣撃に気づき
「なに―」
間一髪のところで
サッと、自身の模造刀を鞘ごと出し、両手で俺の剣撃を防ぐ。
ガキンッ!!!
だが―
「うおぉおおおおおおおおおおおおッ!!!」
俺は声を上げ―
ガンッ!!!
「ぐッ―」
俺は全力で模造刀を振りぬき
アランもろとも場内の壁まで吹き飛ばした。




