31話 クラス対抗戦⑩ 疑問
四か月あまり更新できず、ここまで読んでくれていた方々、本当に申し訳ありませんでした。
一度執筆期間が開いてしまうとなかなか思うようにかけず、今まで更新することが出来ませんでした。
またぼちぼち更新していくので、よろしければ引き続き読んでやってください。
ゴオオオオオオオオッ!!!
ベルガーが放った魔法は、地を削りながら
場内の土煙を巻き上げる。
そして、土煙を含んだ激しい風が
観客席にいる俺たちの方にまで吹き荒れた。
「わッ―」
俺は両腕で顔を覆い、吹き飛ばされぬよう体に力を入れた。
く・・・なんて風圧だ。
少しでも力を抜けば、吹き飛ばされそうだ。
「くッ・・・」
そして
激しい風圧に耐えること数秒―
シュウウウ・・・
ベルガーは魔法を解き
場内に吹き荒れていた激しい風がやんだ。
俺は両腕をゆっくりとおろし目を開けた。
「一体、どうなったんだ・・・」
場内に漂っている土煙が流れるのを待つこと数秒。
俺は、目の前の光景に驚愕した。
「な、なんだと・・・」
地面が・・・
えぐれている!
えぐれた地面の内側は
中心から外側に向けて、螺旋状を描くような跡が残っていた。
あそこに立ったことがある奴なら
みなが知っている事実。
闘技場の地面は、とても硬い。
あれほど硬化な地面を
あんなにもえぐるなんて・・・
と、それよりも―
「あんなのを食らって、相手は無事なのか」
俺はえぐれた地面と、その周囲を見回すが・・・
生徒の姿がない。
どこだ?
俺は視野を広げ、場内全体をキョロキョロと見回した。
そして―
「あ!」
見つけた。
なんと生徒は、闘技場の壁を背に横たわっており
白目をむいて気絶していた。
場内の中央で戦っていたはずが
ベルガーの魔法であそこまで吹き飛ばされたのか。
だが、それにしては・・・
「思ったよりもダメージがなさそうだな。 気絶してはいるが、よくあれだけで済んだものだ」
パッと見でしか判断できないが
生徒の体に大きな傷もなく、出血もみられない。
あれほどの魔法を食らったにしては
異常なほど軽傷だ。
などと考えていると
「おそらく、食らってはいないんじゃないかな」
ロミオがそう言った。
「食らっていない? 一体どういうことだ?」
俺がそう問いかけると、次にメリーがこちらに向き口を開いた。
「ベルガー副会長が放ったあの魔法 ―デルラ・トルネード― は、風撃魔法の中で最高位に位置づけされる超魔法なんです。 そのような魔法を扱う術者本人が、その威力を理解していないはずがありません」
メリーは場内へ視線を移し、続ける。
「おそらくベルガー副会長は、相手生徒に魔法をぶつけたのではなく、相手生徒に当たるギリギリのところに魔法を放ち、その風圧で相手生徒を壁際まで吹き飛ばしたのだと思います」
「なるほどな・・・だからあの程度の傷で済んだわけか」
・・・って、
サラッと聞き流しそうになったが、
風撃魔法の中で最高位の超魔法だと?
そんな恐ろしい魔法を
あのベルガーは扱えるってのか?
それに、風圧だけであそこまで飛ばすなんて・・・
などと考えていると―
タッ!
と、場内に教官が現れた。
そして教官は、平然と立っているベルガーと
気絶している相手生徒、双方を確認し
「勝者、3-A!」
と、そう宣言した。
教官の宣言と同時に
観客席からは大きな歓声が沸き上がった。
「すげえ! 本当に副会長たった一人で、あっという間に全員倒しやがった!」
「さすが騎士生徒会副会長! 圧倒的だぜ!」
圧倒的か。
確かに、連中の言うように
この勝負は、ベルガーの完勝だった。
まるで大人と子ども・・・
それほどまでに
ここにいる全員に、大きな力の差を見せつけた戦いだった。
だが、
勝てないことはない。
ベルガーの強力な魔法も、
テレポートを自在に操るアランも
俺とロミオなら
きっと・・・
などと考えていると
「?」
突如、俺の脳内にある疑問が浮かんだ。
そういえばアランの奴・・・
今まで何度か俺の前で
テレポートを使っていたが・・・
たった一度でも、魔法陣を展開していたか?
俺は顎に手を当て
今までのことを振り返る。
だが―
「やっぱり・・・展開してねえ!」
俺は思わず、声に出した。
どうして今まで気づかなかったんだ。
魔法は、いかなるものであっても
魔法陣を展開しないと発動することは出来ないはず。
なのに・・・
そう考えていると
「ユーリ様? どうかなさいましたか?」
と、メリーが少し心配そうな表情でそう言った。
「いや、少し考えごとを―」
と、俺はメリーに視線を移すと
「!!!」
ハッと、あることを思い出した。
そ、そういえば!
あの時も!
「メ、メリー!」
俺は思わずメリーの肩を掴み、声を上げた。
「は、はい!」
メリーは慌てた様子でそう言った。
「二週間前、お前が訓練場で見せてくれたあの透過魔法。 あれをもう一度ここで見せてくれないか?」
俺はメリーに必死にそう訴えた。
「え、えっと・・・」
メリーは少し間を置くと
「はい、そのようなことでよろしければ、いくらでも構いませんよ」
と、笑顔でそう言ってくれた。
「本当かメリー! ありがとう!」
「はい」
メリーはニッコリと笑顔を見せると
体をこちらに向け構えた。
そして―
「それでは、いきます」
そう口を開いた。
「一体、何をしようというのだ?」
エミリが不思議そうな表情でメリーを見つめる。
そうか、エミリはメリーの透過魔法を見るのは初めてだったな。
そして―
「せーのっ・・・!」
メリーは声に合わせ
パッ・・・
と、俺たちの目の前から姿を消した。
「な、なに!? 一体どうしたというのだ! あの女の姿が消えたぞ!」
エミリは不思議そうな声色で、俺たちに話す。
「エミリさん、これはメリーナの透過魔法だよ」
「透過魔法だと?」
「自身の姿を透明にして、まるで消えたように見せているんだとさ。 俺も初めて見たときはめちゃくちゃ驚いた」
エミリはメリーが消えた場所を数秒見つめると
「なるほど・・・目で捉えられないが、わずかにあの女の気配を感じる」
そう言った。
あのエミリも、メリーの透過魔法を見て驚いているようだ。
まあ、それはそれとして・・・
俺はフーと息を吐き、考える。
やっぱりそうだ。
メリーの魔法も、アランのテレポートと同じように
「魔法陣を展開していない」
俺は声を漏らした。
すると―
「ユーリ、メリーナの魔法を見たかった理由って・・・」
さすがロミオ。
ロミオは俺の疑問に気づいたようだ。
「ああ。 二週間前に一度見ただけだったから、確証はなかったんだが・・・確かメリーの透過魔法もアランのテレポート同様に、魔法陣を展開していなかったと思ってな」
「なるほど、そういうことでしたか」
と、メリーは透過魔法を解き、姿を現した。
メリーはニッコリと笑顔を見せる。
「実はこれには、ある仕掛けがあるんです」
「ある仕掛け?」
「はい。 魔法陣を展開せず、魔法を発動するある仕掛けです」
な、なに・・・
「それは一体、どんな仕掛けなんだ?」
「はい、それはですね・・・」
そう言ってメリーは、右手の甲を前に出した。
そして―
「な、なるほど! そういうことだったのか!」
なぜアランが、魔法陣を展開せずにテレポートを発動していたのか
メリーのおかげで理解することが出来た。
それと同時に
「ありがとうメリー! おかげでアランのテレポートの攻略の糸口が見えた!」
「はい。 ユーリ様のお役に立つことが出来て、私は幸せです」
メリーは笑顔でそう言った。
よし!
「ロミオ、次の試合、絶対に勝つぞ!」
「うん!」
「お二人とも、頑張ってください!」
「お前たちの勇姿、しかと見届けさせてもらうぞ!」
「ああ! 任せろ!」
俺たちはそう言って、みなで拳を合わせた。




