27話 クラス対抗戦⑥ 完敗
*エミリ*
ゴオオオオオオンッ!!!
ユーリが放った技の衝撃が私まで届く。
「くッ―」
私は腰に力を入れ、飛ばされぬように踏みとどまる。
そうしている最中―
ダンッ!
と、物凄い速さで、カイが後方の壁まで
一直線に、一瞬で吹き飛ばされた。
「カイ!」
ダアアアアアアアアン!
カイは場内の壁にうちつけられ
ガッ、ガタン
っと、ゆっくりと地に座った。
「く・・・くく・・・」
カイは座ったまま、真っ二つになった模造刀と鞘を
自身の体の前でクロスさせるように構えていた。
あの構えはおそらく
ユーリの技を防ぐために、構えたもの。
つまり、ユーリの技をまともには食らってはいない。
それなのに、この威力・・・
古流剣術・・・
なんとおそろしく強力なんだ。
「エミリ・・・今だ・・・」
そう言ってカイは、気を失うように目を閉じた。
私はその言葉で、ハッと我に返った。
そうだ。
今はそのようなことを考えている場合ではない。
ユーリが技をだした。
おそらくユーリの模造刀は、リギルの時と同様に
粉々に砕けているはずだ!
私はサッとユーリへ視線を移した。
やはり・・・
刀身がボロボロと崩れている。
剣がなければ、古流剣術は使えない。
今のユーリであれば
勝てる!
普段の私であれば、剣を失った相手に攻撃など絶対にしない。
騎士の道に反するから。
だがこれはチーム戦・・・勝負の世界!
すまないがユーリ
ここで決めさせてもらう!!!
私は剣を構え、地面を蹴ろうとすると―
「な、なに・・・」
ど、どうしてか・・・
足が動かない!
するとユーリは、ニシシとこちらに笑みを向けた。
「一体、どうなって―」
私は自身の足に視線を移した。
すると―
「な、なんだと・・・」
私は驚愕した。
私の両足には、とても見覚えのある魔法を施されていた。
そして―
「よかった、何とかうまくいって」
その声で、私は後方へ視線を移した。
そこには片膝をつき
両手を地面につけているロミオの姿があった。
「ロ、ロミオ・・・いつの間に」
ロミオの手から私に向け、地面を這うように氷が覆っていた。
そして、私の両足は
膝のあたりまで氷で覆われており
完全に身動きを封じられていた。
「さすがロミオ! 作戦通りだな!」
ユーリがそう言うと
「二人になかなか近づけなくて、一時はどうなるかと思ったんだけど・・・ほんとうまくいってよかった」
と、ロミオはホッとしたような表情を向けていた。
そういうことか。
これは作戦・・・
ユーリは初めから
たった一人で、私とカイの相手をし、私たちの注意を引くつもりだった。
そして、私たちの注意が完全にユーリのみに向けられるその瞬間まで
ロミオは私たちに気づかれぬよう
近くで息を潜め、隠れていた。
自身の魔法で、確実に私たちの身動きを封じる為に。
つまり、二人にとっては
古流剣術を出すことさえも、全て想定内。
私とカイは、ユーリに技を出させ、武器を無力化することだけを考えていた。
ユーリが技を出した時、どちらかがそれをかわすことが出来れば
かわした方が、武器を持たないユーリに攻撃する。
そのように作戦通り、進めていたはずが・・・
実際には向こうの作戦に、私たちはまんまと乗せられていた。
・・・そうか・・・
状況を頭で整理し、理解が追いつくと
私は自然と「フフッ」と、笑みがこぼれた。
そして―
「ユーリ、ロミオ・・・完敗だ。 私の負けだ」
私は顔を上げ、笑顔でそう言うと
ユーリは握り拳をつくり
「よっしゃあ!」
と声を上げた。
*ユーリ*
「ロミオ、あとの一人はどうなった?」
俺がそう問いかけると
「それなら、マクルド君が―」
そう言って、ロミオが視線を移した。
ロミオの視線の先に目を向けると
かなり離れた位置にマクルドの姿が見えた。
そしてマクルドは、白目をむいて気絶している男子生徒を肩に担いでおり
その反対の手には、その生徒から切り離したであろう腕章を握りしめていた。
マクルドは俺たちの視線に気づくと
チッと舌打ちをしながら視線を外し
腕章を握りしめている拳をこちらにぐっと出した。
それを確認した俺は、ロミオと視線を合わせた。
「ってことは・・・」
「僕たちの・・・」
「勝ちだあああああああああああ!!!」
俺は喜びを抑えられず、両手を上げた。
そして、それを教官が確認すると
「勝者、1―E!」
と、声高々にそう宣言した。




