24話 クラス対抗戦③ エクスプロージョン
俺は、沸々と燃えたぎる心を落ち着かせるように大きく深呼吸をした。
そして―
第9試合、第10試合と、次々と試合が終わり・・・
一回戦の最終試合である
16試合目が始まろうとしていた。
3-B対3-E
アランが最も警戒していた、ストー会長の試合が始まる。
アランは、この学校一の火力の持ち主と言っていたが・・・
一体、どんな戦い方をするんだ。
俺はストー会長に視線を向け、試合開始の合図を待った。
そして―
「第16試合・・・はじめ!」
レイラ教官の声と同時に
ササッ!
と、3-Eの代表はみな、瓦礫や土壁に身を隠し、姿を消した。
そして場内には、ストー会長率いる3-Bの代表のみとなった。
俺はそれを見て、思わずロミオに声をかけた。
「お、おい、あっちのクラス隠れやがったぞ・・・まさか、試合を放棄したのか?」
「いや、それは違うんじゃないかな」
「・・・というと?」
俺はロミオに視線を移し、そう問いかけた。
「おそらく、あれが3-Eの作戦なんだと思うよ。 なんせ、相手はあのユリネ生徒会長だからね。 真っ向から勝負を挑んだところで、勝てる見込みが薄いってことは、3-Eの人たちが一番理解しているんじゃないかな。 だから正面からじゃなく、遮へい物に身を隠しながら戦って、ユリネ会長の隙をつこうっていう作戦なんだと思うよ」
「なるほどな・・・」
というか、真っ向から勝負を挑んでも勝てる見込みが薄いって・・・
あのストー会長は、アランだけでなく、他の代表たちにも警戒されてるんだな。
実際にあのストー会長が戦ったところを見たことがないので
みんながそこまで言う理由が俺にはわからないのだが。
まあ・・・この試合を見れば分かる話か。
俺は、場内で腕を組んで立っているストー会長に視線を戻した。
3-Eが身を隠し、数秒が経過した。
だが、3-Eの代表は姿を現すことなく、場内は静まり返っていた。
ストー会長は「はぁ~」と、大きなため息をつき
少しだるそうに右手を前に出した。
「ミア、結界魔法」
「はい」
そう言うと、ストー会長の右手に、赤い魔法陣が展開された。
そして―
「爆撃魔法 ―エクスプロージョン―」
ストー会長がそう呟くと
展開させて赤い魔法陣から、拳くらいの大きさの
小さな火炎玉が、相手の方へ向けて放たれた。
火炎玉が放たれたわずかな隙に
ザザッ!
と、ミアがストー会長の前に立った。
そして―
「結界魔法 ―バリア・キューブ―」
ミアがそう呟くと、3-Bの代表みなを囲むように
大きなブロック型の結界が瞬時に作られた。
そして、相手クラスが身を潜めている土壁に
ストー会長から放たれた火炎玉が接触した瞬間―
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!
と、耳を塞ぐような轟音と、場内で凄まじい爆発が起きた。
「!!!」
観客席にいる俺たちの方にまで、爆風が吹き、観客席は大きく揺れた。
「や、やりすぎだろおぉおおお!」
俺は爆風で飛ばされぬよう、腰に力を入れ踏みとどまる。
数秒して爆風がおさまり
俺は隣のロミオに声をかけた。
「ロミオ、大丈夫か?」
場内から巻き上げあれた土煙のせいで、周りがよく見えない。
隣のロミオの姿を確認するのが限界で、それ以上先は何も見えなかった。
「う、うん、大丈夫だよ」
「そうか、よかった」
「ユーリも大丈夫?」
「ああ、俺は平気だ」
だが、それにしてもこの威力・・・
場内にいる奴らは無事なのか?
特に相手クラス・・・
ま、まさか・・・
死んでないよな?
何にしても、巻き上げられた土煙のせいで、場内どころか何も見えない。
すると次の瞬間―
「風魔法 ―ツイスター―」
場内の方で、ストー会長の声が聞こえた。
そして
シュウウウウウ!!!
と、場内の方から、上へ向けて大きな突風が吹いた。
そして、辺りを漂っていた土煙は一瞬で上空へ流れ、あっという間に視界が開けた。
爆発したり、風が吹いたりと
次から次へと何なんだ一体。
などと考えながら俺は、場内へ視線を下げた。
そして―
「な・・・何だよ・・・これ・・・」
俺は驚愕した。
「場内が・・・更地になってやがる」
俺は思わず声を漏らした。
あれほど瓦礫や土壁と、遮へい物が接地されていた場内が
それは見事に綺麗な、まっ平な更地と化していた。
おいおい、嘘だろ。
あのストー会長・・・
さっきの爆発で、場内そのものを変えちまった。
こんなものを見せられてしまえば
アランが警戒していたのにも、納得せざるを得ない。
学校一の火力の持ち主にして
学校一の魔法使い。
これほどのものだったとは。
・・・って、いやいや!
今は関心している場合じゃねえ!
相手は本当に死んでないんだろうな。
俺は慌てて、3-Eの代表の方へ視線を移した。
すると、3-Eの代表三人は、みなが体をピクピクと震わせ
気絶したように地面に倒れていた。
えっと・・・
あの様子だと・・・死んではいないみたいだな。
とりあえず、よかった・・・のか?
そうしていると、3-E代表の腕についていた腕章は
ポロッと焼け切れ、地面に落ちた。
それを確認したレイラ教官は
「勝者、3―B!」
そう告げた。
そして
「当然の結果ね」
と、ストー会長は堂々とした態度でそう言った。
俺はストー会長に視線を移すと
ストー会長を含む、3-Bの代表はみな無傷だった。
おそらく、副会長のミアが使った結界魔法で、身を守ったんだろう。
同じ場内にいたレイラ教官は・・・
まあ・・・
心配するだけ無駄だろうな。
人間じゃねえもんなあの人・・・うん。
などと考えていると
レイラ教官は「はぁ~」と、大きなため息を吐いた。
「ユリネ、相手を死に至らしめてはいないと言っても・・・これはやりすぎだ」
頭をポリポリとかきながら、レイラ教官がそう言った。
「失礼ですがレイラ教官、私はこれでもだいぶ抑えたつもりなんですが」
ストー会長は堂々とした態度を崩さず、そう答えた。
す、すげえ・・・
レイラ教官の前であんな態度がとれるなんて・・・
不覚にも俺は、ほんの少しだけ
ストー会長に尊敬の念を抱いてしまった。
「お前にとってはそうなのだろうが・・・」
レイラ教官は更地と化した場内を見渡しながら続ける。
「教官が数人がかり作ったこれを・・・お前は」
レイラ教官は、少し覇気のこもったような表情をストー会長に向けた。
「うっ・・・で、でも! そもそも向こうがこそこそと隠れるからいけないのよ!」
ストー会長が声を上げてそう言うと
隣のミアが、無表情のまま淡々と口を開いた。
「えー、ユリネ会長がそれを言いますか。 普段、あれだけアラン会長の後をコソコソ、コソコソと付け回しているユリネ会長が―」
「ちょ、ちょっとミア! あんたは黙りなさい!」
そう言って、ストー会長はミアの口を両手で塞いだ。
「ひ・・・ひたい・・・です・・・ゆりえ・・・かいしょう・・・」
なんか前にも見たような光景だな。
あんまり覚えてはいないが・・・。
すると、見かねたレイラ教官がため息をつき、口を開いた。
「わかった。 ユリネ、次の試合からは場内を壊すなよ。 次に破壊した場合は・・・わかっているな?」
レイラ教官は、覇気のこもった声色でそう言った。
「わ、わかったわよ!」
ストー会長がそう言うと
「あ゛あ゛? わかったわよ・・・だと?」
と、レイラ教官は
それはもう恐ろしい形相で、握り拳をつくりながらそう言った。
あ、これやばいやつだ。
ストー会長逃げろ! 殺されるぞ!
と、そう念じていると
ストー会長の顔は瞬時に青ざめ、慌てて口を開いた。
「わ、わかりました! な、生意気な口をきいてすみませんでした! 次からの試合では絶対に場内を破壊しないと誓わせていただきます!」
と、頭を下げてそう言った。
それを見たレイラ教官は、握っていた拳を下げた。
「わかればいいんだ。 とりあえず、二回戦が始まる前にこの場内をもとに戻さなければならない。 教官総出で今から修復する。 ユリネ、お前も手伝ってくれるよな?」
「は、はい。 もちろんです」
と、ストー会長は冷や汗をダラダラとかきながらそう言っていた。




