22話 クラス対抗戦① 開幕
「えっと・・・誰だ?」
俺がそう問いかけると
「な、何だって!? 君はこの僕のことを知らないというのかい? そんな!! オー・マイ―」
ゲホッ!
と、血を吐きながらその男は床に手をついた。
「だ、大丈夫か?」
決して頭のことを言っているのではなく
身を案じ、心配してそう言ったのだが
「今のは効いたよ・・・さすが、僕が認めた男だ」
と、血でよごれた口元を拭き、立ち上がりながらそう言った。
こいつ・・・俺の言葉がまるで届いていない。
効いたって・・・
俺は何もしていないんだが。
俺は思わず、隣のロミオに小声で話しかけた。
「ロミオ、こいつは一体何なんだ」
ロミオも小声で答える。
「えっと、この人は1-Aのメルシー・ホワイト君だよ。 確かマクルド君に続いて学年二位の成績でこの学校に入学したとか」
「そうなのか」
メルシー?
なんとも不思議な名前だ。
俺はメルシーに視線を移す。
メルシーの髪は鮮やかな金髪で、その爽やかな表情とよく合っている。
身長は俺と同じくらいで、スマートな体系をしており、身なりもきちんと整えられている。
そして奴の周りは、まるで光の粒が飛んでいるかのように、どこかキラキラと光輝いている印象だ。
爽やかというか・・・お坊ちゃんというか・・・
どう表現すればよいのかわからない。
そんなメルシーは、片目を覆うように顔に手を当て、口を開いた。
「リギル・ダルウィン上級生との決闘・・・見させてもらったよ。 とても素晴らしかった」
すると次に、メルシーはこちらに指を差して、声を上げた。
「ユーリ君! 君はこの僕が認めた最高のライバルだ! もし、今日のクラス対抗戦で、君とぶつかるようなことがあれば、僕は君のライバル、そして君の高き壁として、僕は君の前に立ちはだかると宣言しておくよ!」
そう言って、メルシーはキラッと爽やかな笑顔を向けた。
「あ、ああ・・・」
俺は若干引きつつも、メルシーに返答する。
メルシーは「フッ」と笑い
「それではユーリ君、クラス対抗戦で」
そう言って、メルシーはこちらにウインクを飛ばし、去っていった。
「な、何だったんだ・・・」
「さ、さあ・・・」
俺とロミオの表情は、今までにないほど引きつっていた。
そして数分後―
全クラスの代表が集まり、みなが学年、クラスの順に並んだ。
そして―
「それでは、トーナメントの抽選を行います。 1―Aから順に、箱の中に入っている番号を引きに来てください」
教官の声で、1―A代表のメルシーは、周囲をキラキラと輝かせながら中央に置かれている箱まで歩き、箱の中に手をつっこんだ。
そして―
『①』
と、書かれた丸いボールを取り出し、生徒、そして教官の順に見せた。
そして教官は、大きな紙に書かれているトーナメント表の、番号が振られている下に1-Aと記入した。
なるほど・・・
こういった流れで、対戦カードを決めていくのか。
これだと対戦相手もランダムで、誰も意図的に相手を選ぶことは出来ないな。
と、そう考えていると、あっという間に俺たち1―Eの番になった。
代表として俺が、中央に置かれている箱の番号を引きに前に出る。
そして箱の中に手を入れ、適当にボールを取った。
そして
『②』
と書かれたボールを引いた。
生徒と教官に見せ、俺はつかさずトーナメント表を見つめた。
そして―
『①1―A ― ②1―E』
と書かれた文字が見えた。
・・・ってことは、俺たちの対戦相手は・・・
俺はある人物に視線を移す。
すると向こうも、こちらにキラキラとした視線を向けていた。
一戦目はあいつとか・・・
なんかやりずれえ・・・
って、いやいや!
相手が誰だろうと関係ない!
目の前の敵を全員ぶっ倒して
俺はアランと勝負するんだ!
と、俺は気合を入れなおし、並んでいた場所に戻った。
そして―
全クラスの抽選が終了し、トーナメント表が完成した。
「こ、これは・・・」
完成したトーナメント表を見て、俺は驚愕した。
それもそのはず
なぜなら―
「みなが順調に勝ち進めば・・・三回戦目でエミリのいる2-Aと・・・」
「もし・・・それを超えられたら・・・」
「準決勝では・・・アランのいる3-A・・・」
俺とロミオは互いに声に出し、状況を再確認した。
こ、これは・・・
「さ、最高じゃねえか!」
俺は大声を上げた。
三回戦まで勝ち進めば、エミリやカイと勝負ができる。
そして、それを勝てば
アラン率いる、騎士生徒会メンバーと!
さらに良いのが
アランが最も警戒していた3-Bの番号は㉜で
俺たちとは別ブロックということだ。
つまり、俺とアランが準決勝でぶつかるまでに
お互いのどちらかが3-Bと当たることは絶対にない。
邪魔者は・・・いない!
よし!
俺は隣のロミオへ顔を合わせ、声を上げた。
「絶対に勝ち進んで、アランたちと勝負するぞ!」
「うん!」
俺たちは「オー!」と、天高く拳を掲げた。
*エミリ*
闘技場 AM―9:30
トーナメントの抽選を終え、全校生徒はここ、闘技場に足を運んでいた。
というのも、クラス対抗戦は校内イベントなので、闘技場で行われる。
そして、学生同士で行われるイベントなので、決闘同様に
剣は真剣ではなく模造刀、そして魔法の使用は、相手を死に至らしめない威力
という条件が適応される。
もしこれらを破ったクラスは、有無を言わさず失格となるので
みながこの条件下で、クラス対抗戦を行う必要がある。
と、一通り説明しておく。
が、今は説明している場合ではない。
まもなく、第一試合目が始まろうとしている。
私は観客席に座り、祈るように両手を重ねていた。
なぜ私が、観客席にいるかというと・・・
私たち代表には、代表専用の席があるわけではなく
自身の試合になるまで、全校生徒同様に観客席で待機することになる。
私のクラスは4試合目なので、3試合目が始まるくらいまでは、ここでゆっくりと観戦することが出来るのだ。
いや、たとえ私の試合が、次の2試合目だったとしても
この試合を見逃すわけにはいかない。
だって一試合目には
ユーリとロミオが出場するから!
な、なぜだろうか・・・
私はあまり、こういった場で緊張することはないのだが・・・
自身でもわかるくらい
とても緊張している。
そして・・・心配もしている。
ユーリに限って、一回戦敗退・・・
ということないとは思うが・・・
・・・不安だ。
ユーリ、ロミオ、二人とも頑張れ!
絶対に勝つんだ!!!
私は心の中でエールを送っていると―
「今年もかなり、遮へい物があるな」
と、隣の席に座っているカイが口を開いた。
私は闘技場内を見回し、口を開いた。
「そのようだな」
通常、闘技場内に遮へい物などありはしないのだが
クラス対抗戦では、より実戦をイメージしたものにするため
様々な大きさの瓦礫や土壁が、あちこちに設置されている。
視界が悪い洞窟の中、遮へい物が多い山の中など、実戦は場所を選ばない。
ありとあらゆる場所で戦う可能性があるため、私たち騎士や魔法師には、即座にそれらの環境に対応して戦う、適応力が必要になってくる。
この遮へい物は、そういった適応力の強化という目的も担っているのだろう。
―イベントであって遊びではない―
教官がみな口をそろえて言っていることだが
・・・確かにそのようだ。
「始まるな」
闘技場の中央に、審判であるレイラ教官が現れた。
次に左右から両クラスの代表が場内へ入場する。
そして、闘技場を半分に割るように
左側にユーリたち1―E
右側に1―Aと、それぞれ代表の三名が向かい立った。
レイラ教官は両クラスを見ながら、試合の注意事項を説明する。
そして―
「それではクラス対抗戦、第1試合目・・・はじめ!」
レイラ教官が試合開始の合図を放った。
その合図とともに、1―Aの生徒が口を開いた。
「さあ、ユーリ君! 君の全力を見せてく―」
と、そこまで言った瞬間
ダンッ!!!
と、ものすごい速さで、その生徒の横を何かが通りすぎた。
そして―
「悪いな、言い終える前にとっちまってよ」
「な―」
数十メートルの距離をあけ、向かい合っていたはずのユーリが
なぜか1―Aの生徒の後方に立っていた。
そして、ユーリのその手は、青と赤の二つの腕章を握っており
それを確認したレイラ教官は
「勝者、1―E!」
と、そう宣言した。
前代未聞とはこのこと・・・
なんと、クラス対抗戦第一試合目は
わずか1秒にも満たない速さで、勝負がついた。




