17話 心の友よ
その後―
俺たちは生徒会室を後にし、エミリとメリーが待つ中庭に戻った。
そして二人に、生徒会室であったことを話した。
するとメリーから
「それでは作戦を立てないといけませんね! 早速今日の放課後、私とユーリ様そしてロミオさんの‘‘`三人‘‘で作戦会議をいたしましょう」
とメリーはにこやかな笑顔で、ある言葉を強調してそう言った。
それを聞いたエミリは、メリーに抗議していたが・・・
エミリは、クラス対抗戦で敵同士ということをメリーに前面に出されてしまい
エミリは「ぐぬぬ」と声を漏らしながらも、反論できなかった。
だが確かに
これに関しては、俺もメリーと同意見だった。
エミリとカイがいる2―Aと、クラス対抗戦でぶつかる可能性がある以上、いくら同じパーティーだとしても、エミリにこちらの手の内を晒すわけにはいかない。
それに俺も・・・一つだけ懸念がある。
その懸念に対しても、一度ロミオたちと話し合っておきたい。
そして、賑やかな昼休みが終わり、午後の講義を受け終え
あっという間に放課後になった。
―放課後―
放課後になり、俺はメリーに
どうせ作戦を立てるのなら、実際に作戦通りに動けるように特訓もしようという話を持ち掛けた。
もちろんメリーは反対することなく「わかりました」と了承してくれた。
そして俺は、作戦会議兼特訓にマクルドも誘ったのだが・・・
「誰がてめえと一緒に特訓なんかするかよ! 勝手にやってろ」
と、バッサリ断られてしまった。
同じクラスの代表同士、もう少し仲良くしてもらいたいところなんだが・・・
まあ仕方ない。
ロミオと俺の二人だけで、何とかするしかないな。
などと考えながら、俺たちは教官室へ訓練場の鍵を借りに向かった。
訓練場というのは、剣術訓練場と魔法訓練場の二つあるらしく
以前エミリと会った場所は、前者の剣術訓練場だ。
そしてそのどちらの使用にも教官の許可が必要であり、その鍵も教官室で保管されているらしい。
と、ロミオから教わった。
そして俺たちは、訓練場使用の許可を取り、教官から鍵を借りていたところ
たまたまエミリとバッタリあい
俺たちは‘‘4人‘‘で魔法訓練場へ向かっていた。
そして―
「エミリさん、なぜ私たちについてきているのでしょうか? 私がお昼休みに言ったことが理解できなかったのでしょうか?」
「フンッ! 私はただ、たまたま同じ方向の剣術訓練場に向かっているだけだ。 そうたまたまな!」
というように、棟と棟を繋ぐ渡り廊下で、エミリとメリーは言い争っていた。
昼休みにも感じたことだが
この二人相性悪すぎる。
もう少し仲良くできないものだろうか。
「そうですか、そうですか。 それは気づかず、どうもすみませんでした。 それではどうぞ、お先にいってください」
メリーはそう言って両手を前に出し、さあさあと言わんばかりにエミリに道を譲る。
「ぐぬぬ貴様・・・」
エミリは悔しそうな表情を向けた後
「ゴ、ゴホンッ!」と咳ばらいをし
表情を戻して続ける。
「わ、私はユーリと話があるのだ。 同じパーティーメンバーとして、将来を見据えた大事な話がな」
そう言ってエミリは、俺の右腕を掴み、体を近づけた。
それと同時に、俺の右腕にはプニッとした柔らかな何かが当たり
瞬間的に背筋が伸びる。
俺は動揺しつつ、エミリにつかさず口を開いた。
「お、おいエミリ・・・ち、近くないか? もう少し、離れてくれるとありがたいんだが」
俺がそう言うと、エミリは羞恥で顔を赤くしながらも
「今更、何を言っているのだ? 昨夜はもっと身を寄せ合っていたではないか」
「だ、だからそれは、お前が寝ぼけて俺の布団に入ってきただけで―」
俺がそこまで言うと、エミリは「それともお前は・・・」と―
「私に近づかれるのは・・・迷惑か?」
と続けた。
上目遣いで、そしてどことなく可愛らしい表情で。
いつもクールで凛としているエミリとのギャップが激しく
不覚にも俺は、少しドキッとしてしまった。
エミリ、それは反則だろ・・・
俺は顔を熱くしながらも、エミリに抵抗する。
「べ、別に迷惑ってほどでもないんだが・・・そ、その! あ、当たってるんだよ! お前は自覚してねえかもしれないが!」
俺は大声でそう言うと
「・・・そんなわけないだろ・・・」
と、エミリは小さな声で呟いた。
「え?」
よく聞き取れず、俺は聞き返すと
「何度も言わせるな・・・バカ」
と暴言が返ってきた。
「バカって・・・シンプルに暴言じゃねえか・・・」
普段言われない単語を言われ、軽くショックを受けたんだが・・・
「バカなのだから仕方ないだろう」
「まさかの追撃・・・」
俺は軽く落ち込んでいると
エミリは俺の腕を引っ張り、顔を赤くしながら続ける。
「嫌じゃないんだ・・・お前になら・・・どこに触れられても」
「な・・・」
俺がそう声を漏らした瞬間
エミリとは反対方向に、俺の左腕は勢いよく引っ張られた。
そして同時に、右腕同様柔らかな感触に包まれる。
俺はハッと慌てて視線を移すと、メリーがエミリと同じように俺の腕を掴んでいた。
「ちょっとエミリさん、こんな人目があるところでユー君にベタベタ、ベタベタと・・・うらやましい・・・じゃなくて、恥ずかしくはないのでしょうか?」
と、メリーはより力を込め、自身に引き寄せる。
「そういう貴様も、ユーリにベタベタ近づいているではないか! 王女ともあろう人間が、人に説教する前にまず自分からということも知らないのか?」
「ええ、もちろん心得ていますよ? ですがまず、その汚らしい手をユー君から剥がすことが、今私がとるべき第一優先事項ですので!」
「何だと貴様、どの手が汚らわしいだって?」
そして、エミリとメリーはどんどんヒートアップし
俺はまるで、綱引きの綱のように、左右に引っ張られた。
「い、イタタタ、お、おい! 頼むから、引っ張らないでくれ! う、腕が、もげる―」
俺は必死にそう言うも
燃え上がっている二人には、俺の声は全く届いていないようだった。
そして周囲に目をやると、こちらを見ている生徒たちが、何やらヒソヒソと話をしていた。
・・・いや、なんとなく話している内容はわかるので
考えないでおこう。
これ以上自分を追い込みたくねえ。
ほんと、誰でもいいから助けてくれ・・・
と俺は心の中で助けを求めていると
ピキキ!!!
っと、両腕が凍えるような冷気を感じた。
それと同時に、二人の動きがピタッと止まった。
そして―
「二人とも・・・ユーリが困っているからそのへんに・・・それにかなり注目も集めちゃってるから・・・」
と、ロミオが俺たちの前に立ち、両手を前に出してそう言っていた。
俺は左右を確認すると
俺の腕とエミリ、そしてメリーの腕を大きな氷で凍らせ、動きを止めていた。
俺を気遣い、魔法を使ってまでロミオが止めてくれたのか。
だが、動きを止めるためとは言え、かなり氷が大きい。
なんなら、俺の体半分くらい氷で覆われていて、かなり冷たい。
だがそれでも―
「ありがとうロミオ・・・ありがとう・・・心の友よ・・・」
心から俺を気遣ってくれていたのは、この場ではロミオだけだった。
俺は感極まり、水を流しながらロミオに感謝の言葉を述べていた。




